優良物件男の本音。“キラキラ女子”は、結婚ターゲット外にする!?
医者を好み、医者と付き合い、結婚することを目指す。
そんな女性たちを、通称「ドクターラバー」と言う。
日系証券会社の一般職として働く野々村かすみ(28)も、そのひとり。
彼女たちはどんな風に医者と出会い、恋に落ち、そして生涯の伴侶として選ばれてゆくのだろうか?
医者とドクターラバーたちの恋模様は、一筋縄ではいかないようだ。
かすみは、慈恵医大の内科医・城之内(34)と初デートに行くが、病院からの呼び出しですぐにお開きになってしまう。一方、同期の里帆は、城之内の後輩・浅見(32)に誘いを断られる。

一夜を過ごしたかすみとタケル。それを聞いた里帆は…
「…嘘でしょ?」
里帆の開口一番のセリフは、それだった。
「タケルとかすみって…」
里帆は開いた口がふさがらないといった様子で、かすみを凝視している。
「どうするの?城之内さんのことは」
「どうするって…」
里帆の問いにかすみは答えることができず、言いよどんでしまう。
どうするかなんて、何も考えてなかった。
ただ、あの夜は、一緒にいたかった。
そんなかすみを見て、里帆は大きくため息をつく。
「かすみ。タケルのこと、人として好きなの?オスとして好きなの?」
「お、オスって…」
「確かにタケルは、魅力的よ。本能的に女を惹きつけるものがある」
でもね、と里帆は口調を少し強める。
「結婚したいなら、一緒にいて幸せになれる人を、ちゃんと選んだ方がいいよ」
黙るかすみに、里帆はさらにかぶせる。
「タケルは、いい奴だよ。だけど、恋愛でもいい男だとは限らない」
実は里帆は、嫉妬していた…?

タケルとの一夜の記憶が、よみがえる。
かすみは、ふわりと湯気の立つカモミールティーを、そっと口に運ぶ。
じんわりとした温かさが、体中に広がっていく。お風呂上りのティータイムはもう1年にもなる習慣だが、夏はクーラーで涼しくなった室温とのコントラストが、一層いい。
特に目的もなくラジオをつける。窓の外をぼんやりと眺めながら、今日の里帆との会話を思い出す。
―本当はちょっとだけ、かすみがうらやましいのよ。2人も惹かれる人がいて。
里帆はタケルについての話のあと、少しバツが悪そうに苦笑いしながら、つけ足した。
里帆は、再び浅見をご飯に誘ったものの、「彼女がいるので」とにべもなく断られたらしい。
―デートのチャンスも与えられずに、よ。かけ引きの“か”の字もないわよ。
ひどく憤慨していたが、あの様子だと来週にはケロッと立ち直って、次のお食事会に繰り出すことだろう。
―ねえ、かすみ。
さよならする間際、里帆が茶化すように言った言葉がよみがえる。
―12時過ぎて朝になって、魔法が解けたあとに、タケルがガラスの靴を持ってきてくれるなんてこと、ないんだからね。
―…うん、分かってる。
かすみは、あいまいにほほ笑みながら、心の中で自問自答していた。「本当に分かっているの?」と。
あの夜タケルは、今まで見せたことのないやわらかな笑顔で、そっと髪を撫でてくれた。好きとか、そういうことは何も言わずに。
そんな行動に、きっと期待してはいけない。でもどこかで意味を持たせたがっている自分が、いる。
彼の手の感触が思い出される。ふいにのどが熱くなってきたような気がして、思わずため息で熱を吐きだす。
―どうしよう、これから。
かすみはいつも、もめごとを生まないように人生を歩んできた。流れに身を任せて、全てを受け入れるだけ。
今回だって、本気で踏みだす覚悟も、割り切る覚悟もできていなかった。
里帆の誘いを断ったドクター・浅見。謎のベールがついに…!
どうも。浅見といいます。
城之内さんの後輩で、慈恵医大で内科医をしています。
自分では銀縁の眼鏡が似合うと思っていますが、よく冷たそうと言われて終わりです。
いいんです。僕のことを分かってくれる人だけ、分かってくれれば。
先日、城之内さんに叱られました。「1回くらい、里帆ちゃんとデートに行ってもよかったんじゃないの?」と。
でも僕は、無駄が嫌いです。好きなことにしか没頭していたくない。学者気質なのでね。偏屈と言われても、構いません。
里帆さんは、美人の部類かもしれません。でも僕は、外見だけじゃ惹かれない。むしろ、医者という肩書き狙い感を隠しきれない女性には、嫌悪すら覚える。
実は僕、看護師とつきあっているんです。
医者とナースの恋愛実態にせまる!
医者&ナースの恋愛の美味しいところ、悲しいところ。
もう3年になるかな。同じ病院内なので、誰にも言ってませんけどね。もちろん、城之内さんにも。
きっかけですか?ありがちな展開ですよ。
僕らが研修医の頃って、看護師と寮が一緒で。だから、実質的には行き来し放題なんです。
彼女は山梨が実家なんですけど、実家から送られてきた桃とか、時々おすそわけを持ってきてくれたんです。あと、勤務中にこっそり手紙をくれたりとか。

そういう積み重ねで、徐々に仲が深まっていきました。
分かりやすいと言えばそうですが、城之内さんも言っていたとおり、医者は案外、ストレートな好意に弱いんですよ。
地方のとある病院に転勤すると、「3人になって帰ってくる」っていう逸話もあります。子どもができるということですね。
あ、僕らの関係は、不純ではなく真面目そのものですよ。
僕は大学時代から外科医の皆のように豪遊するタイプではなかったので、恋愛経験も正直、そんなに多くありません。
だから、病院では彼女を苗字で、向こうは僕を先生と呼ぶ間柄だったのが、プライベートではお互い名前で呼び合うようになった時は、ドキッとしたりもしました。
看護師の彼女とつきあって、僕は本当に良かったと思っています。医者の実態を理解してくれる、良きパートナーです。
これが一般の人だと、そうはいかないこともありますよ。
城之内さんも、…かすみさんでしたっけ?2回もドタキャンしたそうじゃないですか。すごく落ち込んでいましたよ。
仕方ないと思いますけどね。医者なんだし。
とはいえ、一般の人にそれを理解してもらうのは、難しい。分かっていても辛い、不満がたまる。そんな風に彼女側が溜めに溜めて、破局した同僚たちを星の数ほど(は言いすぎですが)見てきました。
城之内さんも、看護師とつきあえばいいのに。
だけど、いいことばかりじゃないですよ。親問題とかね。
僕の親は、両方とも医者なんです。だから僕は、小さい頃から医者になるべくして育てられたし、僕の結婚もぜひ医者同士でしてもらいたい、という願望が両親とも強い。
こんなことは本当に言いたくありませんが、彼らにとってやはり看護師は、対等な存在ではないんです。
普段、看護師の大切さを骨身にしみて分かっていても、結婚相手となると、話が違ってしまう。
だから、彼女との結婚は、正直難しいかもしれません。
それでも、僕に残された選択肢は、時間をかけて説得していくこと。親問題を察してか、結婚について何も言い出さない彼女の気遣いに報いたいという気持ちもあります。
だからドクターラバーのような、今どきは、キラキラ女子というんですか?全く目が向かないですね。
これまでも、この先も。
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医者は、結婚相手として本当にいいのか…?
