学生の窓口編集部

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筆者の勤務先の社長が19歳のときに、外食店で細菌による集団(5人)食中毒にかかって2週間入院し、「もうダメだと思ったけど、遺言を書きたくても起き上がれなかった」そうです。管理栄養士の西山和子さんは「ひとり暮らしビギナーや大学生ら、自炊を始めたばかりの人は、食品の知識が乏しいことや調理に慣れていないことで、食中毒になることが多いんです。いつも注意を呼び掛けています」と話します。そこで西山さんに、食中毒の原因や予防策について詳しく聞いてみました。

■「細菌」、「ウイルス」が食品に付着・増殖。手指や髪、調理器具から感染も

食中毒、食あたりと言う言葉をよく聞きますが、どういう症状になるのでしょうか。西山さんはこう説明します。

「菌やウイルスが原因の場合には、食あたりとは言わず、『食中毒』と呼びます。食事をした後に、ひどい下痢、腹痛、嘔吐(おうと)、発熱などの症状が起こった場合は、食中毒を疑います。

一方、食べ過ぎ飲み過ぎたときや食品の食べ合わせが悪いなどでおなかをくだすことがありますが、その場合は食あたりで、一時的な症状です。

いずれにしても、『水のような下痢がとまらない』、『下痢が1日に10回以上』、『血便が混じる』、『嘔吐(おうと)が3回以上止まらない』、『熱が出て体が痛く、ふらふらする』、『背中の腰あたりが痛くて尿が出ない』などの症状があれば、すぐに内科を受診してください。

軽症の場合は、体から細菌やウイルスを排泄するため、スポーツドリンクを水で薄めた水分を補給しながら様子を見ます。下痢止めを飲むと細菌やウイルスを腸にとどめてしまうので、なるべく飲まないようにしてください」

食中毒の原因は何なのでしょうか。

「『細菌』、『ウイルス』、『自然毒』、『寄生虫』です。これらが食品に付着・増殖している、また調理器具や人から感染すると症状が出ます。それぞれ、存在する場所、温度帯や潜伏期間などの特徴があります」と西山さん。

ここで西山さんに、主な食中毒の原因の分類と注意事項を整理してもらいました。

<細菌・毒素の心配はいらないタイプ>

・魚介類、刺身、にぎり寿司に多い「腸炎ビブリオ菌」。海水に存在する。夏に多く、潜伏期間は4〜96時間。調理前に流水でよく洗うことが大事で、調理器具からの感染に注意。

・鶏肉、生レバー、殺菌されていない井戸水や湧き水などに多い「カンピロバクター菌」。動物の腸管に存在する。ペットにも注意。潜伏期間が2〜7日と長い。肉の加熱不十分に注意。

・生卵、自家製マヨネーズ、洋生菓子などに多い「サルモネラ菌」。潜伏期間は6〜48時間。

<細菌・毒素を作るので食品量が多いときはさらに危険>

・加熱不足の牛肉、生乳、殺菌されていない井戸水や湧き水などに多い「病原性大腸菌」。この菌の一種の「O157(腸管出血性大腸菌)」は特に注意。潜伏期間は12〜60時間。

・おにぎり、寿司、サンドイッチなどに多い「黄色(おうしょく)ブドウ球菌」。人の手や鼻水、だ液などから感染するので、これらを作るときは手袋やラップを使って直接触らないように注意。潜伏期間は1〜6時間と短い。

・チャーハン、ピラフ、パスタなどに多い「セレウス菌(嘔吐型)」。潜伏期間は1〜5時間と短い。「セレウス菌(下痢型)」もあり、潜伏期間は8〜16時間。

・ハム・ソーセージ、ビン詰めや缶詰の自家製食品、発酵保存食品などに多い「ボツリヌス菌」。酸素があるところには増殖しない。潜伏期間は8〜36時間。家庭で加熱した程度では、この菌は死なない。

<ウイルス>

・加熱していないカキなどの二枚貝に多い「ノロウイルス」。冬季に発生するのが特徴。潜伏期間は1〜2日で感染性が非常に強い。感染した人の便や吐物から空気飛散し、感染する。

<自然毒(有害物質)>

・フグ毒、貝毒、毒キノコ、毒草、カビなど。絶対に口にしてはいけない。

<寄生虫>

・豚肉に寄生する「トキソプラズマ」や魚に寄生する「アニキサス」など。キャンプやバーベキューをする際は、しっかり加熱することを心がけて。

■においや味がおかしいと思った料理はいさぎよく捨てる

西山さんは、普段の生活で細菌を摂取する例を次のように挙げます。

「細菌やウイルスは目に見えない存在です。おいしそうな食品にも付着、混入していることはあります。

例えば、ケガをしてできる膿(うみ)には、『黄色ブドウ球菌』が存在しています。バンソウコウを貼った手で、生のサラダを調理して食べると、菌が口から入ることになります。害虫のゴキブリや、犬猫などペットも保菌動物です。

原因の細菌やウイルスが増殖しやすい温度は、5度〜60度と幅広く、食品に付着した細菌は室温で2時間もたてば、爆発的に増殖します。

睡眠不足や風邪で体の免疫力が低下していると、食中毒にかかりやすい、また、重症化する確率が高くなります。

細菌やウイルスが口から入らないよう、『食品』、『調理器具』、『自分の手』の3点に重々注意しましょう。また、洗うときに飛び散る水滴にも注意をはらってください」

ここで具体的な対策法について、西山さんはこうアドバイスをします。

・トイレの使用後は、手を石けんを使って流水でしっかり洗い、清潔なタオルでふき、トイレの壁や取っ手をベタベタ触らないようにします。

・調理では、十分に加熱することが大切です。さっと焼くだけでは食品の中まで火が通っていないことが多いので、下ゆでする、電子レンジを使うなどしてしっかり熱を通します。生焼けの肉や魚には細菌やウイルスがいると考えてください。

・生の食材を扱うときは、その都度、流水でしっかり手を洗います。心配なときには、手や指、器具の消毒に、食品用のアルコールスプレーを使います。手をケガしていれば、食品に直接手を触れないよう、ナイロン手袋をします。ツメが長い人や指輪をしている場合は、そこに細菌が付着しています。

・体調が悪いときは、だ液や鼻水が飛ばないようにマスクをします。髪の毛にも細菌がついていますので、触わりながら調理しないように、髪の長い人は、ゴムでくくっておきます。

・料理をしたら2時間以内に食べるようにし、2時間を過ぎたものは、再度加熱してから食べる習慣を身に付けましょう。冷蔵庫で保管していた食品も同様です。

・料理や食品を食べるときに、いつもと違うにおい、味を感じたら、いさぎよく捨ててください。

先述の食中毒経験者の社長は、「ひと口食べて『何かおかしいかも』と思ったのに、半分ぐらい食べてしまってひどい目にあった。味がおかしいと思ったら絶対に吐き出すこと!」を口ぐせのように言います。これらの知識、対策と予防の実践法は今後、一生取りいれたいものです。

(品川緑/ユンブル)

取材協力・監修 西山和子氏。糖尿病専門・ふくだ内科クリニック(大阪市淀川区)にて管理栄養士、糖尿病療養指導士。糖尿病、生活習慣病、メタボリックシンドロームの患者さんを対象に、パーソナルな食事指導にあたる。『専門医が考えた 糖尿病に効く「腹やせ」レシピ』(福田正博 洋泉社)の監修担当。また、食生活に関する記事の執筆、監修多数。