学生の窓口編集部

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「吊り橋のようなドキドキする場面では恋が生まれやすい」
「繰り返し会うと好きになる」

心理学が口の端にのぼるとき、こういったエピソードを思い出す人は少なくないでしょう。前者は「吊り橋効果」、後者は「単純接触効果」と呼ばれるもので、これらは心理実験によって明らかにされています。

ただ、現代では再現が不可能な実験も多々……ちょっと怖いエピソードを、本コラムでご紹介しましょう。

文系イメージの強い心理学ですが、現代心理学の発展は「心という目に見えないものを、いかに科学的に証明するか」という点に重点が置かれてきました。ある人は人間の行動を観察し、ある人はアンケートを作って回答させ、またある人は実験をして証明を試みたわけですね。

最後の一つ、実験については、生体を対象にします。さまざまな実験が繰り返される中で、「参加者の福祉と尊厳が重視されなければならない」等の倫理原則が定められるようになりました。なぜなら、実験が被験者に及ぼすインパクトがあまりにも強いものがあったからです。

心理学史に残りながらも現代では再現が不可能な実験、少しご紹介しましょう。

●スタンフォード監獄実験
1971年、スタンフォード大学の心理学者・ジンバルドーの主導により行われた実験。映画『es』の元ネタになった実験としても有名です。

あるとき、新聞広告などで“普通の人”が21人集められました。彼らは大学の施設の一部を監獄さながらに改造した実験室で、看守役と囚人役に分けられました。当初は完全な演技で互いの役割を演じていたものの、時間が経つごとに看守役はより横柄になり、独自に考えた罰を与えられるようになります。

それはバケツの中に排便させたり、午前2時に起床させたりと、現実の囚人への扱い以上に非人道的なものだったといいます。そして、囚人役はそれに従っていました。

当初、実験は2週間の予定でしたが、エスカレートしすぎた結果、6日目には中止となりました。ジンバルドーはその後、このときの被験者を10年感にわたってカウンセリングし続けたほど、与えた影響は大きなものでした。

この実験の結果、権力への服従、状況による影響のされやすさなどがわかりました。
●アルバート坊やの条件づけ実験
行動主義心理学者のワトソンが、1920年に行った実験です。対象となったのはアルバート坊やという生後11ヶ月の赤ちゃん。ワトソンは彼の目の前に白ネズミを放ち、触ろうとすると棒をハンマーで叩くなどして大きな音を立てました。

何回もこれを繰り返すうちに、アルバート坊やは白ネズミでなくとも、白くてフワフワしたもののならなんでも怖がるようになってしまいました。心理学的にえば「恐怖条件づけ」や「汎化した」といった表現で説明できます。

実験的には不十分なところが多く、不正確なものであったということですが、倫理的にはすでに、現代では再現不可能と言われています。

●ミルグラムの服従実験
1960年、エール大学の心理学者・ミルグラムが行った実験です。被験者は、新聞広告で集めた“普通の人”。彼らに対してミルグラムは記憶に感する実験と偽って、生徒役のサクラに電気ショックを与える役割を申し付けます。

サクラが1問間違えるごとに、電圧を上げるルールとなっていました。

被験者たちはときに、「中止しましょう」と訴えますが、白衣を着用した権威ありそうな人が「続行してください」などと言い続けます。結果として、全員が300ボルト以上、うち62.5%以上が最大電圧の450ボルトまで押したとされています。

この実験により「役割効果」「権威主義」などが解明されました。
これらの心理実験は、倫理的な観点から多くの批判を受け、現在では再現不可能であるとされています。もちろん、心理を解明するためだけに個人の心が侵害されることはあってはならないこと。ただ、実験心理学の現場では倫理的問題に縛られ、人を対象とする実験にはOKが出ないのだとか。

そう思うと、嵐のような批判を浴びつつも人の心というものを暴き出したこれらの実験が、なさら貴重なものだったことが感じられるようです。