2023年のJリーグが動き出した。1月に入って各チームが始動し、続々とキャンプインしている。プロ野球に先駆けて開幕するJリーグは、キャンプの便りもそのぶん早い。

 いくつかのチームの会見に出席した。最近はメディア向けの記者会見でなく、一般の観客を入れた発表会とするチームが増えている。新型コロナウイルスの感染対策をしながら、社会経済活動をしていく流れに沿ったものなのだろう。付加価値のあるイベントを組み込むことで、発表会を有料にするクラブもある。

 発表会の会場で気づくのは、観客の年齢の高さだ。50代半ばの僕と、同じくらいの人が目につく。10代や20代前半の若い女性や、制服姿の高校生は少ない。

 学生たちは部活があるので、来られないのかもしれない。それにしても、大人が目立つのだ。選手の親世代はもちろん、祖父母世代もいる。

 Jリーグは観戦者の調査をしている。年齢については、18歳以下、19歳〜22歳、23歳〜29歳、30歳〜39歳、40歳から49歳、50歳以上の6つに分類している。

 手元にある資料でもっとも古いのは2000年で、30歳〜39歳の観戦者が最多だった。その次が23歳〜29歳だった。18歳以下から39歳までで、全体の8割近くを占めていた。40歳以上は20パーセント強だった。

 10年後の2010年はどうか。

 30歳〜39歳が依然としてもっとも多く、全体の3割近い29・4パーセントを占めていた。一方で、40歳〜49歳が26・3パーセント、50歳以上が18・3パーセントとなっている。40歳以上の観戦者が、10年間でほぼ2倍となった。観戦者の平均年齢は37・3歳だった。

 コロナ禍以前の最新データとなる19年を見ると、観戦者の高齢化はさらに進んでいる。もっとも多いのは40歳〜49歳の26・9パーセントで、次が50歳以上の20・5パーセント、その次が60歳以上の13・7パーセントだった。40歳以上が全体の61・1パーセントである。

 Jリーグが開幕した1993年に10歳だった人は、今年40歳になる。15歳の人は45歳、20歳の人は50歳で、30歳だった人は60歳だ。カズこと三浦知良とヴェルディ川崎が牽引するJリーグに魅せられた世代の多くが、そのままコア層として定着している印象だ。

 新型コロナウイルスの出現により、20年と21年は感染対策をしながらのリーグ戦開催となった。Jリーグからも従来の観戦者調査は発表されていないが、エンゲージメントの高いファン・サポーターからスタジアムへ戻ってきているというアンケート結果がある。

 2022年は、ウクライナ情勢と円安の影響で値上げが相次いだ。電気代やガス代なども高騰している。Jリーグに限らずスポーツ観戦環境は、世代を問わずに厳しいだろう。学生や若い社会人は、より大きな負担増を感じているはずだ。

 ワールドカップの視聴では、NHKや地上波よりもアベマが良かったという声を多く聞く。無料で視聴できるのはもちろん、スマホやタブレットでも観ることができ、倍速機能があることを評価する声を多く聞いた。

 JリーグはDAZNでの視聴が基本だ。アベマと同じ気軽さをアピールできるが、こちらは無料ではない。しかも、Jリーグの新シーズン開幕に合わせて値上げされる。

 DAZNはひとつのアカウントで、ふたつのデバイスで同時視聴できる。それならふたりで割り勘にするとしても、3000円の月間プランならひとり1500円だ。交通費とチケット代をかけて会場で見るよりも割安だが、大学生には「90分も見るのは大変」という感覚もあると聞く。「それならハイライト動画でいい」と、考える人がいてもおかしくない。

 日本は超高齢化社会へ突き進んでいる。Jリーグの観戦者が高齢化していくのも、社会情勢を映したものだ。ある意味では驚きでない。

 カタールW杯の余熱が冷めていくなかで、今シーズンのJリーグは開幕する。新型コロナウイルスの感染に気をつけながらも、日本は社会経済活動を活発化していくフェーズに入っている。Jリーグもコロナ禍以前の姿を取り戻す、リスタートのシーズンになるのだろう。

 そのうえで、10代や20代にいかにJリーグを届けていくか。いかにスタジアムへ来てもらうか。

 あるいは、スタジアムに来なくても、観てもらえる仕組みを整備するのか。93年の開幕から31年目のシーズンは、Jリーグにとってきわめて重要な意味を持つと思う。