名波浩の提案。遠藤保仁&大久保嘉人の「意外な活用法」
名波浩の視点
ブラジルW杯
日本代表の勝機を探る(2)
ブラジルW杯がまもなく開幕する(現地6月12日)。日本代表にとって重要な初戦、アフリカの強豪コートジボワールとの一戦も間近に迫ってきた(現地6月14日。日本時間6月15日、午前10:00)。
ザッケローニ監督がどんなメンバーで挑むのかわからないが、テストマッチ3試合を見て、あくまでも個人的な見解で先発メンバーを選ぶとすれば、以下のようになる。
GKは、川島永嗣。DFは、右から内田篤人、森重真人、吉田麻也、長友佑都。ボランチは、山口蛍と青山敏弘。2列目が、右から岡崎慎司、本田圭佑、香川真司。そして、1トップが大迫勇也。
いくつかポイントはあるけれども、まずはセンターバック。調子が今ひとつの今野泰幸より、現状では森重の起用を優先したほうがいいと思っている。
森重は、昨年11月の欧州遠征(2−2オランダ、3−2ベルギー)の頃から比べると、かなりチームにフィットしてきた。周囲とのコミュニケーションがうまくとれるようになって、カバーリングの意識も増した。代表でのプレイに自信がついてきたようで、顔つきも変わってきたような気がする。
対人プレイの強さなど守備力の高さは申し分ないうえ、視野が広く、常にタテパスを意識しているため、攻撃面におけるプラスアルファーも大きい。実際、アメリカで消化したテストマッチのコスタリカ戦(3−1)、ザンビア戦(4−3)でも、前線に数多くタテパスを入れて、攻撃の起点になっていた。本番までに期待したいのは、さらにコンビネーションを高めて、タテパスを最前線に入れられるようになること。そうすると、ボランチだけでなく、2列目の選手も前を向けるようになって、一層チャンスが増えるはずだ。
もちろん今野もいい選手だが、所属するガンバ大阪ではボランチでプレイ。それが、代表でのプレイに微妙な影響を与えてしまったのかもしれない。かつて自分も、所属チームではトップ下でプレイしながら、代表ではボランチでプレイしていたことがあった。その際、見える景色がまったく違って、苦労した経験がある。
それが、ボランチからセンターバックとなると、見える景色だけでなく、動き方や、その質もまるで違う。そうしたポジションの変化に対応していく中で、今野が調子を崩したとしてもおかしくない。ひとつポジションが前後するということは、それぐらい大変なことなのだ。
次にボランチだが、これまで主軸だった遠藤保仁を外したのは、彼を途中から入れたほうが相手にとっては厄介だと思うからだ。コスタリカ戦でも後半から遠藤が入って、流れが変わった。あのフワッとしたリズムの作り方は独特で、劣勢のときや、点を取りに行きたいときに、遠藤という強力な"カード"が控えていることは心強い。
そうした選択ができるのも、山口と青山の成長がある。とりわけ山口は、テストマッチ3試合で最も評価が上がった選手。今年3月のニュージーランド戦(4−2)のときと比べても、前への意識が高くなり、守備での貢献度も増した。最終ラインの前で相手の攻撃をブロックしようという気持ちが強くて、危ないところには必ず顔を出している。
前線へのタテパスの精度も高く、コスタリカ戦、ザンビア戦では、FW柿谷曜一朗にスーパーなパスを送って、何度か決定機を演出。攻守において、目覚しい活躍を見せている。にもかかわらず、あまりメディアに取り上げられていないのは不思議でならない。DF森重とともに、もっと脚光を浴びていい選手だと思う。
1トップを大迫にしたのは、昨年11月の欧州遠征で奮闘し、以来、ここ半年くらいですごく成長した選手だからだ。
プレイの質は高いし、深さを作れて、キープ力もある。なおかつ、ゴール前に入っていくタイミング、シュートまでの過程も抜群だ。ディフェンス面でも、敵DFのパスコースをしっかり限定し、前線からのケアがよくできている。先発したコスタリカ戦でゴールを決めていれば、誰もが迷うことなく、「1トップは大迫」と断言していたのではないだろうか。
勢いのある大久保嘉人の先発もありだが、1トップと2列目、4つのポジションはどこでもこなせる彼には、遠藤と同様、苦しい状況で使える貴重なカードとしてベンチに置いておきたい。
さて、コートジボワールと戦ううえで重要なことは、第一に相手の強力FWドログバのケア。前線でポイントを作られると、かなり面倒なので、彼へのパスコースはきっちり封じたい。そのうえで、センターバックと挟み込んで対応するために、ボランチのプレスバックという動きも大事になってくる。
そしてもうひとつ、勝敗のカギを握るのは、相手の右サイドアタッカーを務めるジェルビーニョをどう抑えるか。緩急のあるドリブル突破から決定機を生み出し、高いシュートセンスも兼ね備えている彼は、日本にとってはまさに脅威の存在だ。
そういう意味でも、この試合のキーマンとなるのは、左サイドバックの長友。正直、サッカーファンという目線で考えると、ジェルビーニョvs長友というのは、その対決を純粋に楽しみたいマッチアップだが、日本が結果を残すためには長友のがんばりが不可欠だ。長友がジェルビーニョの突破を封じることができれば、日本の勝機も見えてくるだろう。
ただ、テストマッチ最後のザンビア戦で、気になったことがあった。日本は、3−2とリードしてから、試合を終わらせるようなゲーム運びができなかったこと。そのうえ、4−3になってからも、大久保がサイドから突破してクロスを上げるなどして、最後まで点を取りにいこうとしていたことだ。
決して、最後は守りに徹するべきだと言っているわけではない。どうやって試合を締めくくるのか、チーム全体の意思統一が図れていなかったことが問題だった。
まして、残り時間がわずかな状況で4−3と再度リードを奪いながら、不用意に攻め続けていたのはいただけない。個人の力をアピールする親善試合ならまだしも、W杯のシミュレーションとなる試合では、最後はボールをキープして勝ち切る戦いに徹するのが大前提。テストマッチとはいえ、そういう細かいところも徹底しておかなければ、本番で足元をすくわれかねない。そんなことにならないためにも、チームとして勝つためにすべきことを再確認しておく必要があるだろう。
攻撃に関しては、改善すべき点は見当たらないけれども、唯一の不安要素はシュートが少ないこと。どんな形でもいいから、もっとシュートを打つべきだ。シュートというのは、ボクシングで言えば、ジャブのようなもの。何度も(シュートを)打つことで、相手を崩すチャンスが生まれてくる。攻撃の選手には、そのイメージを持って、試合に臨んでほしいと思う。
名波浩●解説 analysis by Nanami Hiroshi

