患者と研究者の協働目指す「膠サポ」、PPI活動に力…医師側からも賛同の声「新たな知見や気づき」
NPO法人「膠原病(こうげんびょう)・リウマチ・血管炎サポートネットワーク(膠サポ)」は、医療や医学研究に患者の意見を取り入れるPPI(患者・市民参画)の活動に力を入れている。
患者と研究者との協働を掲げながら、患者の実態調査と発表、欧米の先進事例を日本の現場に取り入れるといった活動を通じ、医療に積極的に関わる。欧米に比べて患者が受け身になりがちとされる日本で、活動の広がりが注目される。
日本で一般的に取り組まれているPPIは、製薬会社が薬の治験を行ったり、学会が治療指針を作成したりする際、患者が経験や意見を伝えるものが多い。膠サポの活動はさらに踏み込み、患者側から医師らに働きかけたり、積極的な情報発信を行ったりし、よりよい医療の実現を目指す。
膠原病とは、全身の関節や様々な臓器に慢性的な炎症が見られる病気の総称で、関節リウマチや血管炎などが含まれる。膠サポは2022年に発足し、現在、メールで無料のニュースレターを届ける登録者は約500人、Xやインスタグラムのフォロワーも1000人規模となっている。
患者会の多くは、会員同士の交流や勉強会の開催などを主な活動内容としている。膠サポはこれらに加えて、国や企業、研究者が実施する調査や研究への参加を会員に呼びかけるほか、調査結果などを国内外の学術大会で報告するといった活動を行う。欧米の患者が、妊娠計画を医師らに相談する時に使う「ディスカッションガイド」も翻訳し、日本の医療現場で血管炎患者が使えるようにした。国内にとどまらず、国外にも目を向ける。
設立した臨床心理士の大河内範子さんは、血管炎の患者の1人。大学院で同じ病気を持つ人の精神的ケアを研究し、その経験や知識を生かしたいとの思いがあった。「患者の声を医療や研究現場に届けることは、結果として患者の幸せにつながる」と語る。
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膠サポの特徴に、様々な活動の過程で患者の意見を積極的に取り入れていることがある。その一つが、膠原病の患者を対象にしたトレーニング動画「やさしい筋トレ」の制作だ。イスにつかまりながら行うスクワットやタオルを使った背筋運動など、1本につき1分30秒ほどの動画を計10本、ユーチューブで公開している。
制作にあたってはまず、患者に運動への関心事や心配事を調査した。その後、医師や看護師、患者ら様々な立場の会員が議論を重ねた。関節リウマチ患者で、理学療法士の輿日登美(こしひとみ)さん(62)も、中心メンバーの一人だ。47歳で関節リウマチを発症し、治療薬で症状が落ち着くまでの休職期間を利用して、大学院でリハビリについて研究した。
輿さんは動画の制作で、患者にとって難しい動作がないか、どうすれば無理なく体を鍛えられるかなど、細かく気を配った。「運動から遠ざかりがちな患者に『自分でも参加できる』と思ってもらえるよう、患者と理学療法士、両方の視点から意見を伝えた」と振り返る。
紹介したトレーニングは、今後の医療や、ほかの病気の予防に生かせる可能性がある。膠サポは動画の利用者を対象にアンケートを行い、その結果を昨年、米国リウマチ学会で発表した。
PPIには、医師側からも賛同する声があがる。山王メディカルセンター院長で、リウマチ専門医の針谷正祥さんは「患者の意見に耳を傾けることで新たな知見や気づきを得られ、医療者にとっても大切だ」と話す。研究を進める観点でも重要だとし、「臨床試験・研究の立案段階から患者が参加することで、より多くの成果を患者に還元することが可能になる」と期待する。
*PPI=Patient and Public Involvement
