この記事をまとめると

■WRCは規定変更を重ねながら発展してきた

■2027年のラリー1規定では安全性と低コスト化を推進する

■参戦メーカー増加による活性化の狙いもあると見られる

競技環境や社会情勢の変化に応じて変わりつづけてきた

 歴史的に見ると、近代モータースポーツは3つの世界選手権を頂点に展開してきたことがわかる。3つの世界選手権とは、F1による世界選手権、スポーツカーによる世界耐久選手権(WEC)、そしてラリーカーによる世界ラリー選手権(WRC)だ。

 どのカテゴリーも、競技運営が行き詰まりを見せた段階で、あるいは自動車を取り巻く社会環境に変化が生じたタイミングで、競技規則(車両も含めたレギュレーション)の変更が行われてきた経緯がある。

 こうした意味を踏まえた上で、来年規定が変更されるWRCを見てみるとおもしろいかもしれない。ちなみにWRCは、F1が1950年、スポーツカーが1953年に世界選手権シリーズとして発足していることに対し、1973年の発足ともっとも歴史の短いカテゴリーである。

 また、F1、スポーツカーが、レースのために企画・製造された専用車両で戦われる競技であることに対し、WRCは量産車をベースにした改良、改造で戦われてきたことに特徴があった。

 実際、WRCは発足当初から量産車ベースのグループ2/4規定で運営されてきたが、歴史を重ねるうちにグループ4規定車両の改造競争が激化。この動きに追従できなくなったメーカーが増えたため、特殊技術の投入を認めながら生産台数の枠組みを緩くする(少量生産可)新たな枠組みに変更を受けてきた。

 これが1983年から全面施行となったグループB規定によるWRCだったが(グループA規定も並行して設定)、あまりに高性能、高速化したことで重大アクシデントが多発。この事態を重く見たFISA(国際自動車スポーツ連盟)はグループB規定を撤廃。

 1987年からグループA規定に移行し、この規定で10年ほど続けられたが、勝てる条件が量産車で4WDターボ(グループA車両)をもつメーカーに限定され、結果としてこの条件を備えたランチア(デルタインテグラーレ)、トヨタ(セリカGT-FOUR)、スバル(インプレッサWRX)、三菱(ランサーエボリューション)以外に参戦メーカーがなくなり、1997年からF2キットカー+4WDターボを組み合わせたWRカー規定に切り替えられた。

 WRカー規定は2021年まで続けられたが、途中大きな規定変更が2度ほどあり、2022年から「ラリー1」規定が適用され現在に至っている。このラリー1規定は、ハイブリッドシステムの搭載(2024年いっぱいで廃止)、燃料は生産過程で二酸化炭素を取り込む合成燃料とバイオ燃料による非化石燃料によるサステナブル燃料の使用が規定されたあたりに、時代的な特徴を見ることができた。

大幅なコスト削減がキモ

 ところで、ラリー1規定は、シャシーにスペースフレーム構造が認められたことから、車両概略としては化け物といわれたグループB車両に近似することになった。そのラリー1規定が、2022年の発足から5年を経た来2027年、WRC27ラリー1規定として変更されることになったのである。

 といっても、現行のラリー1規定から大きな変更はなく、エンジンは1.6リッターターボ、これに4WDシステムを組み合わせる車両パッケージングはこれまでと変わらず。目立つ変更点は、正面、側面、屋根、後部からの衝突に対し、車内の変形抑制や衝突エネルギー吸収性能を高めた汎用性の高い新型セーフティセルの設定が挙げられるが、もっとも大きな狙いは、車両のイニシャルコスト、ランニングコストを削減した点にある。

 現行車で100万ユーロともいわれる車両価格を34万5000ユーロ(ターマック仕様)に抑えた措置で、使用パーツの耐久性を上げたり、パーツコストを下げたりすることでコストダウンを図っている。また、シーズン3基までとしたエンジンを2基に制限する条項も含まれている。

 こうしたコストダウンが意図するところは、参戦メーカー・コンストラクターの増加にあると見てよい。現状のWRCに参戦するメーカーは、トヨタとヒョンデの2社のみ。とくにトヨタの存在感が大きく、世界選手権タイトルを通算9回、2021年から昨2025年まで5連覇を遂げる実績を築き上げている。

 うがった見方をすると、ヨーロッパラリーの名門フォードも参加しているが、Mスポーツによる参戦体制で、トヨタ、ヒョンデとは体制が異なり分の悪い存在になっている。フォード自体は2012年に撤退して以来、メーカーとしての参戦活動は行っていない。

 2027年の規定改定は、トヨタ、ヒョンデ以外のメーカーに門戸を開く変更と理解することができ、とくにフォードの活性化に期待が置かれているようにも受け取れる。これもうがった見方だが、かつてMスポーツを率い、フォードと密接なつながりをもつマルコム・ウィルソンが、2025年にFIAのスポーツ担当副会長に就任したことも、今回の規定変更とあながち無関係ではなさそうに思えてくる。

 新たなメーカーやコンストラクターの参戦が得られれば、WRCそのものの魅力が増すことは疑いようもなく、活性化したWRCが関連するスポンサー企業や新たなラリーファンの獲得に大きくプラスとなることも間違いないだろう。いずれにしても、参戦メーカー・コンストラクターが増え、WRCが活性化することを期待したい。