EV化したクラシック・ミニ(岡山県吉備中央町で)

写真拡大

 両備ホールディングス(本社・岡山市北区)は、クラシックカーなどの車を電気自動車(EV)に生まれ変わらせる事業を本格化させている。

 脱炭素化の流れの中で、愛車の形を残しつつ乗り続けられるため、自動車文化の継承につながることが期待できる。同社はこの技術を応用して既存の路線バス車両のEV化も目指している。(新居重人)

 同社のEV研究のきっかけは、1978年に当時の社長がロンドン市から購入した1台のロンドンタクシー(1969年製)だった。輸入後にイベント車両として活用されていたが、「もう一度、走らせられないか」という声が社内で上がった。

 どうせ復活させるならと、脱炭素の時代に合った形を模索。車両整備などを受け持つ「両備テクノモビリティーカンパニー」がEV化に乗り出した。ほとんど経験や実績がない中、試行錯誤の末、2021年に走行可能な状態にまで仕上げた。

 その後も研究を重ねるため、クラシックカーや旧車を対象に、オーダーメイドでEV化する事業を展開。ただ1台ずつの設計が必要で、車ごとに適合するモーターや電池を選択・開発することになるため、高価格で製作期間も半年以上かかってしまい、広く普及させることは難しかった。

 そこで量産化に向け、旧車の中でも人気が高い英国製の「クラシック・ミニ」に着目。車種をしぼることで設計やEV化に必要な多くの部品を規格化し、コスト削減を図るとともに、作業時間も短縮できるようにした。

 試行段階のため、クラシック・ミニのEV化でも約800万円かかるというが、同社の大塚雅士吉備工場製造課長(47)は「愛車をいつまでも乗り続けたいという声に応え、コスト面も含めて今後も進化させていきたい」と語る。

 この先に見据えているのが、既存の路線バス車両のEV化だ。

 国は、省エネや地球温暖化対策として、18年の「未来投資戦略」の中で、30年に新車販売に占める次世代自動車の割合を5〜7割とする目標を掲げた。25年に閣議決定したエネルギー基本計画でも、8トンを超える大型商用車について、20年代には、EVやハイブリッド車、燃料電池自動車といった電動車を5000台先行導入させることを目指している。

 しかし、現在の国産の路線バス用EV車を新車で導入しようとすると1台6000万円ほどかかる。補助金を充ててもエンジン車1台の価格約2500万円を上回る。10年ほどで駆動用バッテリーを交換する費用もかかるため一気に電化できない一因となっている。

 両備ホールディングスの路線(乗合)バス車両は25年度末現在、428台あるが、すべてエンジン車となっている。このため、使用しなくなった車両のエンジンを電気モーターに換装してEV化する研究を続けており、試作1号車がまもなく完成するという。価格面でも、エンジン車1台分以下となる見込みだ。

 同社の細谷尚宏上席執行役員(55)は「エネルギーの多様化に対応できるモビリティーを同業他社にも提供できるぐらい、技術力を高めたい」と意気込んでいる。