孤独な年寄り人生が待ち受ける…73歳精神科医「老後の人付き合いで口にしてはいけない"シニア特有のタブー"」
※本稿は、保坂隆『ムリなく気楽にちょうどよく 「ひとり老後」の人づきあいの知恵袋』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

■基本は「ひとりで楽しめる人」になること
冒頭からいきなり矛盾したことを言うようですが、人づきあいが上手になりたければ、まず、ひとりで行動できること、そしてひとりで楽しめる人になることが大切です。
「○○展を見に行きたいけれど、一緒に行く人がいない」
「△△という映画が評判になっているけれど、誰か一緒に観に行ってくれないかしら」
こんなふうに思っているのはいいとして、誘った相手が「今回はちょっと……」などと言うと、「だったら私も行かないことにするわ」と口にしたりするのはいかがなものでしょうか。
これでは半分脅しているみたいで、相手の気持ちはズシリと重くなってしまいます。
もちろん、一緒に行くことができたら、どんなに楽しいだろうと思って誘うのですが、相手の都合がつかなければ、「残念ね。次の機会にはぜひ一緒に行きましょうね」などとさらりと受け、ひとりで見に行けばいいのです。
ひとりでも楽しめる人には、この軽やかさがあります。これが相手にとっても快い印象になるのです。
また、一緒に出かけた場合も、相手にしょっちゅう話しかけていないと気がすまない人がいます。それも、なぜかたいてい独演会だったりします。
そのうえ、相手が「今日はこれから、もう一カ所、回りたいところがあるので」と言ったりすると、「私もご一緒するわ」などと、どこまでも一緒に行動しようとします。
これでは相手はうんざりしてしまいます。
中学生の友だちづきあいではないのですから、引くべきタイミングは心得ておきたいものです。
年齢を重ねていくと、人それぞれ個性やクセが強くなってきます。
それらを丸ごと受け止めて、さらりと流せるようでなければ、老後の人づきあいはうまくいかないものだと肝(きも)に銘(めい)じておきましょう。
■シニア特有の話題にしてはいけないタブー
上司や同僚の噂話や悪口など、仕事関係の話題が中心だった現役時代とは打って変わって、リタイア後は身のまわりのことが話題に上るようになります。とくに子供や孫はしばしば会話に登場するようです。
だけど、こうした話題、はたして適切なものなのでしょうか。
「昨日も孫が来ましてね。また、玩具をねだられました。かわいいからしかたがないけど、まったく困ったもんです」
そんな話をした相手が孫に恵まれず、寂しく思っているとしたら、かわいい孫の自慢は適切なものとはいえないでしょう。相手の寂しい気持ちをいっそう深めることにしかならないからです。
そんな話をしょっちゅうするあなたを、相手が遠ざけるようになったとしても不思議ではありません。
また、なんらかの事情で孫に会えない状況にあることも考えられるし、不幸にして孫がすでに亡くなっているというケースだってあるかもしれません。
ですから、「おたくのお孫さんは」といった問いかけもタブーと心得ておきましょう。

孫のことばかりではなく、相手の家族関係を探るような話題は、こちらから持ち出さないのが成熟した年代の心配りというものです。
新聞にざっと目を通せば、話のネタはいくらでも見つかります。そのとき注目されている人物や本、テレビ番組などの情報は、インターネットからでも拾えます。自慢にならない程度に自分の趣味の分野の話をするのもいいでしょう。
タブーに触れない。それが老後の人づきあいを上手に運ぶ不文律です。
■矢継ぎ早に質問してくる人の正体
人間関係は不思議なもので、知り合ったばかりでも、つきあいの長い友だちのような気安さを感じさせてくれる人もいるし、何年つきあっていても、「やっぱり波長が合わないな」という人もいます。
親しくなるのに時間がかかる人もいるし、第一印象で「いい人だな」と思っても、次第に違和感が増してくる人もいるでしょう。
なかには会った瞬間から質問攻めにしてくる人もいます。
「どちらのご出身?」「どんな仕事をしてきたの?」といった当たり障りのない話題ならともかく、時として「いつからおひとりなの?」「旦那さんとは死別されたの? それとも離婚?」「どうしてお子さんと同居していないの?」「何か持病がお有りですか?」などといった、「それって初対面で聞きますか?」と言いたくなるようなことまで聞いてくる人もいます。こうなると、質問というよりも訊問に近い感じかもしれませんね。
せっかく出会えたのだから、あれも聞きたい、これも知りたいと思う気持ちもわからないではありませんが、実は矢継ぎ早に質問してくる人に限って、聞いたそばから忘れていることも少なくありません。
つまり、そういう人は「ただおしゃべりが好きな人」であって、話の内容に興味があるわけではないのです。
■ベタベタした人間関係は敬遠する
また、こちらが聞いてもいないのに、自分の込み入った事情までペラペラしゃべり、「自分はこんなに腹を割って話したのだから、あなたも包み隠さず教えてくれなくちゃ」と勘違いしている人もいます。
いずれにしても、シニアが新しい友だちをつくろうというときのポイントは、不用意に相手の事情に深入りしないこと。
なぜなら、長い人生を歩んできた道のりには、たとえ親しい相手にでも触れてほしくないこともあるからです。そこにいきなり土足で踏み込まれるような思いはしたくないに決まっていますよね。
シニアの人づきあいの鉄則は、「適当な距離を保ちつつ、細く、長く」です。ベタベタしたつきあいは避けるに限ります。
■「友だちをつくろう」と意気込むのは危険
最近、テレビや新聞で取り上げられている話題に「あおり運転」があります。前方を走行する自動車やオートバイに危険な嫌がらせをするもので、最も多いのは極端に車間距離を詰めて道を譲るように強要するケースです。
シニアはスピードをあまり出さずに運転することが多いため、この被害に遭う場合も少なくないようです。
しかし、こと人間関係となると、あおり運転とは逆に、シニアのほうが気がつかないうちに距離を詰め過ぎてしまうケースが少なからずあります。
とくに注意したいのが、シニアになってから友だちをつくろうと頑張っている場合です。
あちこちから「そのままでは孤独な年寄りになってしまいますよ」という情報が入ってくるので、居ても立ってもいられなくなるのかもしれません。
しかし、頑張って友だちづくりをしようとすればするほど、人は遠ざかっていくものです。
「私が友だちになりたいと思っているのだから、相手も同じ気持ちであるに決まっている。だから、うまくいくに違いない」と、勝手に考えがちです。

このように自分自身を分析して、自分の行動の結果を予想することを「自己スキーマ」と呼びます。
本来、自己スキーマは客観的に自分自身を分析して考えるものですが、歳を重ねるにつれ、自分に都合のいいように考えがちです。その結果「うまくいくに違いない」と思い込んで、了承も得ずに相手の世界にズケズケと立ち入ってしまうのです。
自分の周りにこんな人がいたら、友だちになるどころか、挨拶だってしたくなくなると思いませんか。
■老後のつきあいは「物足りない」ぐらいで
友だちがほしくても、あるいは、より親しくなりたい友だちがいても、焦りすぎないことです。ここで利用したいのが「自己開示」と「相互開示」という心理です。

「自己開示」とは、自分の情報を相手に公開することで、そうすれば相手にも同程度の情報を公開したくなる心理(「相互開示」)が生じます。
つまり、友だちになりたいと思う人がいたら、「ずいぶんと涼しくなりましたね」といった、たわいのない話から始めてみることです。
もし相手が応じてくれたら、次の段階――たとえば、自分の住んでいる地域や年齢、家族構成などを話す段階に進んでいいのですが、相手の口が重いようなら、そこで留めておきます。
そんな人とは「挨拶+ひとこと」が会話のマックスと考えてつきあえばいいでしょう。
そもそもで言うなら、老後のつきあいは「物足りない」くらいがちょうどいいのです。
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保坂 隆(ほさか・たかし)
精神科医
1952年山梨県生まれ。保坂サイコオンコロジー・クリニック院長、聖路加国際病院診療教育アドバイザー。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、2017年より現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。著書に『精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術』『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』(大和書房)、『精神科医が教えるちょこっとずぼら老後のすすめ』(海竜社)など多数。
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(精神科医 保坂 隆)
