体の病は必死にケアするのに、なぜ心の病は放っておくのか…スマホ時代に精神の処方箋になってくれる読み物とは

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私たちは体にいい食べ物には手間やお金をかけるけれど、心の健康を守るためには何をしているだろうか。精神の不調に対して、古くから効き目のある処方箋として読み継がれてきたのが「古典」というものだ。1時間読むだけで不思議と心がすっきりし、スマホや情報に削られた精神が少しずつ回復していく、その効果とは。

【画像】体の滋養にはお金を惜しまないのに…150年前に“警告”を記した名著

 

そんな古典の魅力を解説した『どん底から最高の人生に変わる「古典」の知恵』より一部抜粋、再編集してお届けする。〈全3回のうち3回目〉

精神の病を予防しない現代人

『ウォールデン 森の生活』を書いたヘンリー・デイヴィッド・ソロー。自ら森に入り、小屋を建て、自然人の暮らしをしたソローの本には、次のようなことが書かれている。

「私たちは精神のための滋養は等閑に付すが、肉体のための滋養や肉体的な病気には費用を惜しまない」

全く同感である。私たちは体にいいものを常に意識して食べるように努力する。私は最近、毎日1杯のキャロットジュースを欠かさず飲んでいる。病気になれば、その病気を治すものを食べる。喉風邪を引いたら生姜茶を飲み、下まぶたがピクピク痙攣したら「マグネシウムが多い食べ物」を検索して唐辛子の葉、ほうれん草、しいたけなどを食べる。

そこで考えてほしいのだが、私たちは精神的な病を予防するために、体の健康と同じほど、いやそれ以上に何かをしているだろうか。おそらく何もしていない。体よりも精神がつらい人のほうがずっと多いのに―。憂うつ症、パニック障害、人格障害、摂食障害といった精神疾患が現れると病院に行って治療を受け、薬を服用するけれど、予防しようとしないのだ。

でも、精神疾患を予防できる確かな方法は存在する。古典を読むことだ。

私たちは体にいい食べ物をどうやって知ったのだろうか? 先祖たちが実際に食べて、いいものはいい、悪いものは悪いと、数百、数千年かけて割り出した結果である。私たちが今精神的に苦痛を受けている数々の問題は、今日初めて起こったわけではない。人間の本質は変わることがないため、人間は昔も今も同じことで悩み、苦しむ。 

精神的な苦痛を経験して気づきを得た先達が、後世の人々に同じ苦痛を味わわせないように書いたものが、古典として現在も読み継がれている書物なのだ。

1時間の読書で振り払えない不安はない

ソローもまた精神的な病について言及しながら、古典こそが最高の精神治療薬だと語っている。

若き日に大切な時間を捧げ、多少なりとも古代の言語を勉強することは十分に価値あることだ。その言語は日々の些細なことを超越して永遠の暗示と刺激をくれるだろう。農夫がどこかで聞きかじったラテン語をいくつか覚えて、繰り返してみることは決して無駄なことではないのだ。
                                                                                『ウォールデン 森の生活』

古典を読み、その哲学に夢中になって我に返ると、知らぬ間に心がすっきりしている。まるで点滴を受けながら気持ちよく眠り、病院から出てきたときのように。

肉体だけでなく、精神にも同じように健康的なものを食べさせ、健康的な運動をさせよう。

ビタミンCが不足すれば風邪を引きやすくなるように、古典の知恵がなければ精神的に常につらい状態になる。免疫力が弱まったら病気になる。同じように古典を吸収しなければ、世の中のことすべてにおける免疫力が落ちるのだ。古典ほど完璧なサプリはどこにも見当たらない。

妻が昨日、拱辰丹という漢方薬を買ってきたのだが、なんと値段は100万ウォン(約10万円)以上。毎年この時期に飲めば冬にも風邪を引かないらしく、去年から摂取している。しかし古典はいくらするか? 図書館に行けばタダだ!

1時間の読書で振り払えない不安はない。古典を1時間だけ摂取すれば、あらゆる不安は消える。不安が姿を消すばかりか、意欲が漲る。紅参、山参といった高級な高麗人参よりも私たちには効果があるはずだ。私たちはどれだけ多くの天然物、有機無農薬、国内産の食べ物を探していることか?

そういうものすべてを凝縮したものが古典である。1ページ読んだだけでも精神が健康になる。運動をすれば体調が良くなることが感じられるように。

害があるのは真っ黒に焦げた肉よりもスマホ?

健康を害する食べ物のうち、いちばん怖いものは?「真っ黒に焦げた肉を食べると癌になる」「揚げ物は健康に害だ」「あまり甘いものを食べすぎるな」「インスタント食品とファストフードは健康によくない」といったことはもはや常識だ。そして、できれば食べないように心がける。

私はスマートフォンを真っ黒に焦げた肉だと思って、できるだけ見ないように努力している。スマートフォンを見ている間、「私は今、真っ黒に焦げた肉を食べているところだ。癌にかかるかもしれない。だから早くどこかにやってしまおう」と繰り返す。そして電源を落とす。実際に精神衛生上、害があるのは真っ黒に焦げた肉よりもスマートフォンだ。

私たちは体に悪いものを食べれば、健康を害するのではないかと恐れるくせに、精神的な健康に対して何よりも害のあるものを毎日、何時間も欠かさず、きちんきちんと摂取している。恐れがないのだ。

あなたは、最も体に悪い食べ物は何だと考えているだろうか? その食べ物とスマートフォンは全く同じだと思ってほしい。いや、スマートフォンはもっと悪いものだと心に刻んでおこう。反対に世界で最も体によい食べ物を思い浮かべ、そのイメージに古典を重ね合わせてほしい。

実際のところ、スマートフォンを全く見ないことは今の世の中では不可能である。けれども、スマートフォンによって害される精神的な健康は、古典によって元に戻そう。古典は病気を予防してくれるだけでなく治療もしてくれる。だからコツコツ古典を摂取するのがいい。

「最も高価なウィスキー」を検索してみると、かつて約24億7000万ウォン(約2億7000万円)というとんでもない値段で取引された1本が出てくる。様々な理由があるだろうが、1世紀近い歳月を経て熟成されたという事実が、おそらくそのウィスキーの価値を高めたのだう。

酒好きな人々(私もその一人だ)は、このような記事を読むと「1滴だけでも味わえたら、それ以上の望みはない」と語る。私にとっては古典がすでにそういう存在だ。死ぬまでに1滴でも多く飲みたい貴重なものなのだ。

ヘンリー・デイヴィッド・ソローも、古典について次のように語る。

「古代の最も賢明な人々が語り、その後のあらゆる時代の賢者がその価値を保証してきた、黄金のような言葉の数々が、ここにある」

私を生かし健康で幸せにしてくれる秘訣は、すべて古典に詰まっている。

古典は古ければ古いほどいい。検証されているからだ。

古典は人生の答えである。長い歳月のなかで、整えられ、修正され、補完され、今の私たちの生活に最適化された答えだ。

今日、スーパーに行って体にいい食材を購入し、書店に寄って、精神の健康にいい古典を1冊購入しよう。読者のみなさんの限りない健康をお祈りする。

文/コ・ミョンファン 写真/Shutterstock

どん底から最高の人生に変わる「古典」の知恵

コ・ミョンファン (著), 小笠原藤子 (翻訳)

2026/5/22

1,980円(税込)

280ページ

ISBN: 978-4799332818

★韓国15万部突破★
★教保文庫出版アワード2024「今年の作家賞」受賞作★
★ノーベル文学賞受賞者ハンガンとの同時受賞で話題となった書籍、待望の邦訳★

人生の答えは、すべて古典が知っている
―― 主体的に生きるための独自の答えを見つけ出す実践的読書術

絶望の淵で実証された「古典」の力があなたの人生を大好転させる。

人生の答えはすべて「古典」が知っているというと、あなたは大げさだと思うでしょうか。
しかし、これは決して大げさではありません。確固とした事実なのです。
なぜなら、著者は、交通事故によって余命3日という宣告を受け、すべてを失ったあと、古典に読みふけることで得た知見によって、人生を大好転させたのですから。

まさに著者こそ、「古典の力」の体現者と言えるでしょう。

また多くの成功者は、古典を読んでいることは旧知の事実です。
それは、人間に悩みの根底にあるものは古今東西変わらないことを知っているからでしょう。
人々は、進化しながらも、結局同じことを続けているものです。だから、古典を紐解けば、答えにたどり着くことができるのです。

「古典」という数千年の経験が凝縮された最強の武器を手にしたとき、あなたの人生は確信に満ちた、新しいステージの幕を開けることでしょう。

【目次】
はじめに 人生の答えはすべて「古典」が知っている

第1章 自分の正体を知る――私は何者だろうか
なぜ、グレゴール・ザムザは「虫」に姿を変えたのか
2×2の答えとは?
なぜ、ドン・キホーテは老いてなお冒険の旅に出たのか
カミュや芥川が描いた「暗い欲望」を自分の中に認める
知らないことが増えるとき、人は成長する
自分の中に眠る「星の王子さま」を目覚めさせよう
少し足りない状態が満足を生む
古典を読み、時間を味方にする
主人公に深く感情移入し、自分の価値を高める
イワン・イリッチと一緒に人生の方向性を見つける
さっと通り過ぎ去った時間の意味を考える
誰かの影としてではなく自らの翼で羽ばたこう
あらゆるものは繋がっている

第2章 自分らしい生き方を知る――どう生きればいいのか
今まさに幸せでいることの秘訣は「素朴」にあった
なぜ、いつまで経っても望みがかなわず不幸なのか
苦痛のない快楽はない
人のために生きることこそ自分を幸せにする
強い子どもは自然の中で育つ
どれほど所有すれば幸福になれるのか
「あれ」を捨てて「これ」を拾う。老子に聞く生き方
500年前の敗戦記から失敗しない方法を習得する
努力の仕方ではなく努力の方向を変えてみる
知っていることは実践できていると錯覚してはいないか
何気ない日常の一食から人生の喜びを!
自分の人生を生きるために、いつも死を覚悟する

第3章 自分にしかできないことを知る――何をすればいいのか
とりあえず始めよう。計画はそれからだ
チャンスの音はどこから聞こえてくるのか?
1日たった10分、ただ「考える」を始めよう
「被害者」ではなく「冒険家」の目で見る
古典で身につけた力を実生活に取り入れる
失うことより得ることを信じて一歩外に出てみよう
勝ってから戦う。孫子の兵法こそ、最強の戦略だ
必死に描き続ければ独自のスタイルが出せる
ぼうっとしている時間は、何もしていない時間ではない
なぜ、『若きウェルテルの悩み』で憂うつ症が消えたのか?
料理こそ、身につけるべき人生最強のスキルである
読み、歩き、考え、そして書く。こうして人は完成する
古典を1時間読めば、どんな不安も消えていく

おわりに 自分がいるべき場所を見つけよう
本書で言及された古典