31日で活動終了となる「嵐」(写真:ロケットパンチ)

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人気アイドルグループ「嵐」のラストツアーとなる「ARASHI LIVE TOUR 2026『We are ARASHI』」は、最終日である5月31日の東京ドーム公演を控えるのみとなった。嵐は、この公演をもって活動を終了する。

最終公演は生配信も決定しており、24日にはこの生配信を告知するテレビCMを民放キー局5局が同時に流すなど異例の待遇でライブの盛り上がりを後押ししている。

一方で盛り上がりには余波もある。嵐が所属するSTARTO ENTERTAINMENT社は18日、公式X上で〈最終公演の生配信を大画面で上映すると告知しているイベントや店舗が多数確認されています〉と指摘。

続けて〈生配信の主催者は配信チケットの利用規約においてそのような上映について許諾しておらず、また、生配信の上映を理由に集客することは、著作権侵害やパブリシティ権侵害等にも該当しうる違法行為です〉と注意喚起した。

この声明に対しては、ファンからも「普通に考えてダメでしょ」「嵐を金儲けに利用するな」など店側に否定的な意見が相次いだ。しかし「公式が映画館で上映してくれたらいいのに」とライブ会場同様に、“大勢で気持ちを分かち合いたい”ファンも一定数いた。

テレビが見られる飲食店もあるが、なぜライブ配信を上映することは問題になるのか。ファン同士で集まって鑑賞することはどこまで許されるのか。著作権に詳しい前原一輝弁護士に話を聞いた。

店舗での上映は「著作権」「パブリシティ権」侵害の可能性

前原弁護士によると、店舗で嵐のライブ配信を上映することが問題となるのは、事務所の投稿にもあるように主に「著作権」と「パブリシティ権」の2つの権利を侵害する可能性があるからだという。

まず、ライブ配信の映像を不特定多数の客に見せる行為は、著作権の一つである「伝達権」の侵害にあたる可能性があると指摘する。

「伝達権とは、インターネットなどで公衆送信されている著作物を、受信装置(テレビやモニターなど)を用いて『公に』提示する権利です(著作権法23条2項)。

伝達権は、原則として著作権者だけに認められる独占的・排他的な権利です。

ライブで演奏される楽曲はもちろん、創作性のあるダンスの振り付けも著作物として認められる可能性があり、権利者に無断で店舗の客など『公衆』に見せることは、この伝達権を侵害する行為となり得ます」(前原弁護士、以下同)

さらに、「パブリシティ権」についても以下のように説明を続ける。

「パブリシティ権とは、著名人の氏名や肖像が持つ顧客吸引力を排他的に利用する権利を指します。

嵐のライブ配信の映像であれば、彼らの顔などの『肖像』が映っています。店が通常の飲食費と別に入場料などのお金を取っていた場合には、嵐が持つ顧客吸引力の利用を目的としていると言え、パブリシティ権の侵害に当たる可能性が高いでしょう」

「入場料無料」のイベントは適法?

では、「入場料や上映会参加費」などを徴収せず、通常の席料・飲食代しか請求しない場合はどうだろうか。

前原弁護士は「今回のようなライブ配信の場合、店が入場料や上映会参加費を取らなくても著作権を侵害していると判断される可能性が高い」と話す。

著作権法には、営利を目的としない場合は著作物を公に上演・演奏できるという例外規定がある(38条)。しかし、この「営利」とは直接的な利益だけでなく、集客につながるような間接的な利益も含まれるため、飲食店などでの上映はこの例外規定の対象外になるという。

「このように言うと、飲食店に置かれているテレビは違法なのか?と思われるかもしれません。

著作権法は例外的に、通常の家庭用受信装置を用いる場合は、営利目的であっても公に伝達することが可能と定めているため、テレビ放送を流すことは適法です(38条3項後段)。

一方で、この『例外(※)』に、一般的なインターネット配信は含まれません。したがって、今回の嵐のライブ配信を店内で流すことは違法といえるでしょう」

※例外は「放送、有線放送、特定入力型自動公衆送信(放送を受信して同時にインターネットで自動公衆送信すること)、放送同時配信等(同時配信、追っかけ配信、見逃し配信)が行われる著作物」に限定されている(著作権法38条3項)

パブリシティ権もまた、入場料無料であっても問題になるという。

「嵐というグループ名や映像を使って店側が集客、つまり店のサービスを広告しているととらえることができるため、パブリシティ権の侵害に該当する可能性が高いと言えるでしょう」

ファン同士の鑑賞会、適法と違法の境界線は?

ファン同士が個人的に集まって鑑賞する場合は、どう考えればよいのか。

前原弁護士は、ここでもポイントとなるのは著作権者の伝達権が及ぶ「公に」の範囲だと話す。

「『公に』とは『不特定または特定かつ多数』の者を指します。裏を返せば、『特定かつ少数』であれば著作権者の伝達権の侵害にはあたらないとされます。

裁判所は、『公衆』(『公に』と同じ)に当たるか否かは『著作物の種類・性質や利用態様を前提として、著作権者の権利を及ぼすことが社会通念上適切か否かという観点をも加味して判断』すると述べています。

こうした観点をもとに、個別のケースを検討していくことになります」

以下、具体的なケースを挙げ、前原弁護士にそれぞれ解説してもらった。

ケース1:自宅のリビングに、日頃から仲の良い友人らを数名招いて、一緒に鑑賞する。

「数名というのが何人かにもよりますが、『特定かつ少数』の集まりといえるため、著作権者の伝達権は及ばず適法である可能性が高いです」

ケース2:「大画面で観たいから」と、カラオケやレンタルスペース等を代表者が予約し、数名で部屋代を割り勘して鑑賞する。

「これもケース1と同様に、『特定かつ少数』として適法である可能性が高いです。部屋代などを割り勘していますが、そこは結論を左右しません」

ケース3:SNSで「ファン集まれ!」と呼びかけ、レンタルスペースなどを借りて10名以上で鑑賞会を開く。代金は実費のみ集める。

「『不特定』の人を集めているため、『公に』提示しており、著作権者の伝達権の侵害となり違法です」

STARTO ENTERTAINMENTは〈ルールを守って公演や生配信をお待ちいただいているファンの皆さまのためにも、悪質な行為に対しては法的対応も視野に入れております〉と表明している。

生配信の実施は、当日東京ドームに行くことができないすべてのファンへの嵐からのプレゼントとも言えるだろう。公式のルールに従って、嵐との別れを惜しみたい。