ロードサイドにおしゃれイタリアンを続々出店…迷走するすかいらーくグループ、資さんうどんが「頼みの綱」か
ファミレス業界で店舗数1位を誇る「ガスト」だが、現在既存のガスト店舗が他ブランドへ続々と“衣替え”されている。ガストを運営するすかいらーくHDは、2024年に買収した北九州発のうどんチェーン「資さんうどん」の店舗を、2030年までをめどに現在の約4倍にあたる400店舗に引き上げると発表し、既存のガスト店舗などを、より割安な業態である資さんうどんの店舗へと切り替えていく方針だ。
こうしていまガストが静かに消えつつある背景にはどんな事情があるのだろうか。外食産業に精通するフードアナリスト・重盛高雄氏に解説していただく。(以下「」内は重盛氏のコメント)
記事前編は【ファミレスの王者「ガスト」店舗数の減少が止まらない…背後にあった「商品のクオリティ」と「価格」の乖離】から。
資さんうどんはすかいらーくの“救世主”?
またすかいらーくグループ全体の課題としては客数の低下が挙げられる。すかいらーくのIR情報によると、2025年から2026年まで前年比はいずれも100%前後で推移しており、大幅な客数増加はない。2026年に入ってからの客数は微減で、1月は105.6%、2月は100.2%、3月は97.4%と伸び悩んでいる状況だ。
こうしたなか、すかいらーくがここのところ資さんうどんの出店を強化している理由とは何なのか。
「すかいらーくが展開するチェーンは、ガストをはじめ、値上がりによって徐々に中価格帯以上になってきており、グループ全体として価格帯に幅がないことが課題となっています。安さを求めるファミリー層の客離れが激しくなっているなか、すかいらーくは資さんうどんを、低価格かつ満足感のあるクオリティを実現できるチェーンとして重要視しているのです。
資さんうどんの客単価は800円〜900円ほどとお手頃で、うどん1杯でも満腹になるボリューム感です。さらに店内はファミレスであるガストの跡地をメインに展開するため、広々としていてテーブル席も多く、ファミリーでも来やすい。すかいらーくとしては、割高感が強まっているガストから、お手頃でクオリティも高い資さんうどんの展開を強化することで、離れてしまったファミリー層の顧客をもう一度取り戻そうという思惑があるのでしょう」
「地場チェーンだからこそよかった」の声もあるが…
北九州ならではの甘めのだしや、看板メニューの『肉ごぼ天うどん』など独自の商品展開で、ライバルのうどんチェーン「丸亀製麺」、「はなまるうどん」との差別化も図られている資さんうどん。
ただネットでは“北九州地場のうどんチェーンだからこそよかったのに……”といった声が一部あり、資さんうどんの大規模チェーン化に懸念を示す消費者もいる。しかし重盛氏は、すかいらーくによる資さんうどんの規模拡大について肯定的な見方だ。
「東京1号店の両国店はオープン当初から大きく話題となり、しばらくは行列が絶えないほどの人気ぶりとなりました。北九州以外のエリアでも資さんうどんが受け入れられ人気となったのは、やはりほかのうどんチェーンにはない独自の付加価値や商品の強みがあるからこそ。
また首都圏には立ち食い形式の格安うどん店も増えてきていますが、どこも物価高のあおりを受けて値上がりは避けられない状況です。ライバル店が多い地域でも、資さんうどんの独自の商品力と、安定した低価格路線により、今後幅広いエリアで順調に受け入れられて拡大していくのではないでしょうか」
迷走するすかいらーく、新業態の行く末
ガスト跡地に出店しているブランドは資さんうどんだけではない。ロードサイドや地方のガスト跡地にはすかいらーくの新業態イタリアンレストラン「ペルティカ」が出店し始めているのだ。
ペルティカは関東圏を中心に現在7店舗展開しており、“五感を刺激する食体験”をコンセプトに、客自らの手で食材を調理して完成させるパスタや、全長約12mもあるドリンクバーでドリンクアレンジし放題などのサービスが特徴となっている。
「ペルティカはセットメニューが1500円台から2000円台と、少々高めの価格帯ですが、正直どこの客層をターゲットにしているのかわかりづらいという印象があります。消費者の間でアレンジ志向や体験型といったトレンドはあるため、コンセプト自体は悪くはないものの、出店エリアと客層にミスマッチが生じているという問題があります。
出店場所はロードサイドが多いですが、そういったエリアに体験型の“SNS映え”するような料理を求めて来店する客が多いのかは疑問です。またリゾート気分を味わえるということも売りにしているのですが、日常にあまり馴染まないコンセプトで、消費者からすると気軽に訪れようという感じにならないことも課題でしょう」
重盛氏いわく「新業態に関してはまだ“実験段階”」とのことだが、すかいらーくは近年積極的にこうした新業態のチェーンを展開している。例えば2023年には飲茶専門店の『桃菜』と、そばをメインとしたチェーン『八郎そば』をオープンさせているが、現在の店舗数は桃菜が1店舗のみ、八郎そばが3店舗のみといずれも不調だ。
すかいらーくグループの課題
こうした状況に、すかいらーくグループの課題があるという。
「基本的に客のニーズに応える戦略を打っていくということは、どの企業にも求められるわけですが、近年のすかいらーくは自社のやりたいこと、つまり新業態の“実験欲”のほうを優先してしまっている印象。その結果、ターゲット層がいまいち定まらないチェーンを展開するなど迷走気味となっています。
こうした背景には、グループ全体としての客数が徐々に減っていること、主力だったガストも低迷気味であることによる、すかいらーくの焦りが見えてきます。客からのニーズは何なのかをしっかり把握すること、そのなかでチェーンそれぞれの強みや個性を活かしていくという基本戦略に立ち返ってみることが、現在のすかいらーくには必要なのかもしれません」
――ガストが徐々に他ブランドへと姿を変えている裏には、すかいらーくグループの迷いや焦りがあるようだ。迷走気味のすかいらーくは、現在進めている新業態のトライ&エラーの先に“正解”を見つけられるのか、今後の展開に注目したい。
(取材・文=瑠璃光丸凪/A4studio)
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