「うどん県でも支持されるラーメン店」背脂を浮かせた一杯が、香川県民に《うどん以上の納得感》を与えるワケ
香川は、観光協会の公式サイトでも「うどん県」と前面に打ち出している土地である。しかも、その看板はイメージだけではない。
県内のセルフうどん店を見れば、「こだわり麺や」の温かい「かけうどん」小は320円、「こがね製麺所」の「かけうどん」小は330円、「うどん玉吉本店」の「かけうどん」小は290円。ワンコインどころか、300円前後で一杯食べられる環境なのだ。
そう考えると、香川でラーメンが支持されるのは難しそうだ。実際、高松市在住の人に話を聞くと、「うどんが数百円で食べられるから、わざわざラーメンは食べないですね。そんな中でも『讃岐ラーメンはまんど®』(以下、「はまんど」)が食べられているのは、本当にすごいと思います」と話してくれた。
うどん県で、わざわざラーメンを食べに行く理由
今回訪れた「讃岐ラーメン はまんど」は、香川県三豊市にある。公式サイトでは、営業時間は11時から15時、定休日は水曜(※祝日の場合は翌休)と案内されている。
JR予讃線「みの駅」から徒歩圏内で、高松自動車道の「三豊鳥坂インター」からも近い。高松の中心部から“ついで”に立ち寄るというより、目がけて向かう店と言ったほうが実感に近いだろう。
それでも、店にはしっかりと人が集まっていた。スタッフに話を聞くと、県内だけでなく県外から訪れる人も少なくないという。
店に入って最初に印象に残ったのは、店長をはじめスタッフの明るい挨拶だった。味だけでなく、店全体に通いやすさがあるのだ。
中心地から離れていても、人が集まる店の強さ
公式サイトによれば、麺は国産小麦「春よ恋(ハルヨコイ)」を使った多加水の平打ち太麺。スープは香川県産の鶏と豚の肉スープに、伊吹島いりこなどの海産物のだしを重ねたダブルスープで、清湯と白湯から選べる。
筆者が今回いただいたのは、店主のイチオシであり、看板メニューでもある「はまんどラーメン」だ。
実際に食べると、まず麺の存在感がいい。平打ちならではの幅があるので、口に入れたときの感触が単調にならない。もちっとした弾力があり、噛んでもよし、すすってもよし。コシはあるのに重たさはなく、まさに“麺を楽しむ土地”で生まれたラーメンだと感じた。
スープは淡麗寄りで、口当たりは思いのほかやわらかい。表面に浮く背脂がほどよくコクを足しているものの、くどさには振れない。あっさりしすぎると物足りなくなるし、背脂が勝ちすぎると麺のよさが埋もれてしまう。「はまんど」のラーメンは、食べ始めはすっきりとしていて、後半になるほど旨みが静かに広がってくる、その運び方がうまい。
見た目にも、この店の持ち味はよく出ている。背脂が浮いているので、最初は少し力のある一杯に見える。しかし、実際には重さで押すのではなく、麺とだしの輪郭を背脂が下支えしている印象だ。
派手さで引っ張るのではなく、最後まで食べ切らせるためのコクとして収まっている、その加減がちょうどいい。
煮卵やチャーシュー、青ねぎも含めて、トッピングがそれぞれ主張しすぎないから、一杯全体のまとまりが崩れない。こうして全体がきれいにまとまっているからこそ、食べ終わったあとも重たさが残りにくいのだ。
平打ち麺の食感、だしの輪郭、背脂のコクが、最後まで無理なくつながっていく。食後に残るのは、「濃かった」でも「尖っていた」でもなく、「ちゃんとおいしかった」という納得感である。
「うどんだけじゃない香川」を証明する店だった
晴れている日なら、「みの駅」から歩いて向かうのも悪くない。駅から店までは徒歩圏内で、道すがらには山並みが見え、空も広い。そんな景色の中を抜けてたどり着く一杯としても、このラーメンはよく似合う。
店頭の黒板には、「うどん県 それだけじゃない香川県 そのとおりです」と書かれているが、食べたあとには確かにその通りだと感じる。
香川に来たらうどん。その定番は揺るがない。だが、その定番がある土地で、わざわざラーメンを食べに行きたいと思わせる事実こそが、「はまんど」の実力を物語っているだろう。
平打ち麺も、淡麗スープも、背脂のコクも、接客の明るさも、客層の広さも、無理なく一本につながっている。
うどん県で支持される理由は、案外まっすぐなのである。
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