「親は反省しなくていい」4000組の不登校親子を見てきた相談員が語る、子どもを前に親が変えられること
4月にスタートしたドラマ『タツキ先生が甘すぎる!』(日本テレビ系)が話題になっている。第3話と第4話では、親の期待に応えようとする小学6年生の寧々(本屋碧美)のエピソードが描かれた。塾に通わせたい父(忍成修吾)と、ピアノを続けさせたい母(黒川智花)。「子どものためを思って」という言葉の裏側に踏み込んだ内容に、SNSでは「自分にも思い当たるところがあって心が痛い」といった声も多く見られた。
こうした不登校の子どもを持つ親の悩みに、40年にわたって寄り添ってきた相談員が池添素さんだ。ジャーナリストの島沢優子さんが池添さんに丁寧に取材を重ねた書籍『不登校から人生を拓く――4000組の親子に寄り添った相談員・池添素の「信じ抜く力」』(講談社)が、2025年9月に発売された。背景には、文部科学省の「問題行動・不登校調査」が示すように、2024年度に不登校となった小中学生が過去最多の35万3970人にのぼり、12年連続で増加しているという現状がある。
発売を記念して、池添さんの地元・京都の大垣書店イオンモール京都桂川店で2人のトークイベントが開かれ、約100人が参加した。池添さんと島沢さんは、実際に寄り添ってきた親子の話や自身の体験を率直に語り、会場には熱心にメモを取る人の姿も見られるなど、参加者がそれぞれ学びを深める時間となった。
この記事では、イベントで池添さんが語った「不登校に悩む親に伝えたい3つのこと」を紹介する。
1日でも早く子どもを「信頼」して
池添素さん:子どもの不登校に悩む方に伝えたいことが3つあります。切羽詰まっている親もいると思いますし、支援に関わっている方もいると思います。
1つ目は、「子どもを信頼すること」です。本のタイトルにもあるように、大切なのは“信じ抜く力”だと思いますが、その入口は「子どもを信頼すること」だと私は感じています。今は長いトンネルの中にいるように感じるかもしれません。入口から見ると、出口の光はとても小さくて、不安になりますよね。でも、出口のないトンネルはありません。今は見えにくくても、必ず出口はありますし、進んでいけば光は少しずつ大きくなっていきます。ただ、その光は立ち止まったままでは見えてきません。前に進もうとする力が必要です。そのときの支えになるのが、「きっと出口はある」と信じる気持ちだと思います。
そして私は、子どもは信頼に値する存在だと思っています。どんなに今うまくいっていないように見えても、それはあくまで“今の結果”にすぎません。そこには必ず理由や積み重ねがあります。場合によっては、プロセスに長い時間がかかることもあるかもしれません。だからこそ、できるだけ早いタイミングで「信頼する」と決めることが大切です。「うちの子は大丈夫」と思うこと。「なんとかなるわ」と思えたらいいのですが、それが難しいですよね。でも、そう思おうとすることが第一歩です。今この瞬間から子どもを信頼することを始めてみてほしいと思います。
親は反省しなくていい
池添さん:2つ目は、親自身のあり方、生き方についてです。子どもの発達を見ていると、「気持ちのサインを出すこと」がとても大事だと感じます。たとえば1歳半や2歳ごろのいわゆるイヤイヤ期がありますよね。でも、こうした「嫌だ」「こうしたい」という気持ちは、その時期だけのものではなく、いくつになっても出てくるものです。そして、その気持ちに対して、その都度「わかったよ」と受け止めてもらえたかどうかが、その子が自分らしさ(自我)を育てていくうえで、とても大切な入り口になります。
だから、「学校に行きたくない」と子どもが言ってくれたとき、それはすごく大事なサインなんです。「やっと言えたんだね」と思えたらいいですよね。そのときに、「行かなあかんやん」と返すのではなく、まずは「そっか、嫌なんだね。わかったよ」と受け止める。これは1歳半の子に接するときと同じです。そのためには、子どものサインを受け止められる自分でいられるように、親が自分自身と向き合うことが大切だと思います。
多くの親御さんは、「これまで忙しくてちゃんと向き合えていなかったかも」とか、「子育てが十分にできていなかったかも」と振り返って、反省されることがあります。でも、私はそこにとらわれる必要はないと思っています。
どれだけ反省しても、過去は戻ってきません。だからいったん手放して、「これからどうするか」に目を向けることが大事です。「学校に行きたくない」と言ってきたときに、「わかったよ」と受け止められる自分でいるにはどうしたらいいか。そこから考えてみてほしいと思います。
子育てと向き合うために、自分の育ちを振り返る
池添さん:自分と向き合うときには、自分の育ってきた環境や、親との関係を振り返ってみることも大切です。というより、自然とそういうことを考える場面が出てくると思います。子育てのモデルは、多くの場合は自分の親ですよね。自分がどんなふうに育てられたかが、そのまま子育てのベースになっていることは少なくありません。だから、親にされて嫌だったことを、自分の子どもにもついやってしまう、ということもよくあります。「連鎖」と言われることもありますが、自分ではこうしたいと思っていても、これまでの経験が影響してしまうのです。
もし子育てがしんどいと感じたときは、「自分は親にどう育てられてきたかな」と少し振り返ってみてください。ただ、過去の出来事や親そのものを変えることはできません。
それでも、「そうだったんだな」と気づくことに意味があります。まずはそれを受け止めて、自分で認識すること。そして、そこから少しずつ考え方や受け止め方を変えていく。そういうプロセスが大切なのだと思います。
◇後編【「子どものために」が苦しめてしまうこともある…不登校の家庭で起きていること】では3つ目に伝えたいこと。何が子どもを苦しめてしまうのか、そして親に何ができるのか。イベントで語った内容を紹介する。
構成・文/峯重咲希(FRaUweb)
