「石油が空から降ってくる」、ウクライナの無人機攻撃で環境災害 衛星画像に黒く染まった海

(CNN)ロシア黒海沿岸の町トゥアプセ。4月28日、目を覚ました住民は12日間で3度目となる終末的な光景に目にした。
ロシア石油大手ロスネフチが所有するトゥアプセ製油所にウクライナのドローン(無人機)攻撃があり、濃い有毒ガスと炎が立ち上った。周囲のコーカサス山脈に届きそうなほどの高さだった。
当局によれば、火災は30日朝までに消し止められた。16日と20日に起きた2回の攻撃でも鎮火に数日を要し、有毒物質が黒い雨となって降り注いだり、車や通りが油っぽい汚れで覆われたりする被害が発生。専門家は、この地域で近年最悪規模の環境災害と形容している。
住民の1人はSNSで「街は煙で息詰まるようだ」と訴えた。
トゥアプセは2014年冬季五輪の開催地となったソチの北西約112キロに位置する。黒海沿岸の亜熱帯リゾートの一部で、ロシア人の間で夏の保養地として人気があったことから、かつては「ロシアのリビエラ」と呼ばれていた。海上ターミナルと接続する製油所はロシアの石油精製や輸出の重要拠点であり、ここ数カ月、繰り返しウクライナの攻撃目標になってきた。
近隣のクラスノダールでブランディング会社を経営する実業家で、清掃を支援しに来たエルミラ・アイラペティアン氏はCNNの取材に、「石油が文字通り空から降ってくる。息ができない。燃料油が車にべったり付着し、街全体から臭いがする」と語った。
ボランティアがこの場所に集まっているのは、一つには地方当局や連邦当局が対応するまで2週間近くかかった(その間に3回立て続けに攻撃があった)ためだ。
ロシア大統領府は28日に初めて事態を認め、プーチン大統領はクレンコフ非常事態相を現地に派遣して消火作業の調整に当たらせた。クレンコフ氏は「状況は容易ではないが、制御可能だ」との見方を示した。
これに先立ち同日、クラスノダール地方の知事が被害を視察した際も、同様の表現を用いていた。炎と煙がまだ通りに押し寄せている状態だった。
「本格的な環境災害」プーチン氏はこの被害を機に、ウクライナがロシアの民間人やエネルギーインフラに「テロ攻撃」を仕掛けているとの従来の主張を繰り返した。
28日夜に開催された安全保障会議では、トゥアプセへの攻撃は「深刻な環境への影響を引き起こす可能性がある」と指摘。一方で、「深刻な脅威ではないように見受けられる。人々は現地で目の前の課題に対応している」と述べた。
環境の専門家の見解はやや異なる。
環境運動家で反体制活動家でもあるエフゲニー・ビティシュコ氏はCNNの取材に、「これは本格的な環境災害で、少なくとも地域規模の広がりを持つ。ここ数年、こんな例は皆無だった」と指摘した。
CNNが検証した衛星画像や動画には、石油がトゥアプセの川や海まで流出した様子が映り、黒海の一部沿岸は今も燃料油で黒く染まっている。ただ、主要ビーチの一部では28日までに清掃が完了したように見える。
新たな攻撃の前の26日に撮影された衛星画像の分析では、油の痕跡が海岸から少なくとも50キロ沖まで広がっていることが確認された。クレンコフ非常事態相は28日、「海への流出の可能性」を防ぐため、「近く」防護柵を設置する方針を発表した。
拡大するウクライナのエネルギー施設攻撃ウクライナは28日の攻撃後に出された軍参謀本部の声明で、製油所への3回の攻撃すべてについて「侵略者であるロシアの軍事的、経済的潜在力を低下させる取り組みの一環」として実施したことを認めた。
ウクライナ政府は数カ月にわたり、ロシアの重要エネルギーインフラに対する長距離ドローン攻撃を強化してきた。ロシア政府の戦費を削りつつ、兵站(へいたん)を複雑化させる狙いがある。ウクライナのゼレンスキー大統領は3月下旬、米イスラエルとイランの戦争による世界的なエネルギー供給の混乱でロシアが利益を得る中、一部の支援国からは自制すべきとの「シグナル」も出ているが、ウクライナは攻撃を継続しており、さらなる強化にも踏み切っていると説明した。
ゼレンスキー氏は「ウクライナのエネルギー部門への攻撃をやめる用意がロシアにあるなら、我々もエネルギー部門への報復は行わない」と表明した。ロシアによる度重なるウクライナの電力インフラへの攻撃は大規模停電を引き起こしており、戦下の4回の冬を経て状況は悪化している。
30日には、ウクライナ国境から約1450キロ離れたロシアの都市ペルミでも、エネルギー施設が2日連続の攻撃を受け、煙が立ち上った。ウクライナ政府は29日、ペルミの石油ポンプ施設を攻撃したと確認。ペルミの知事も「工業用地の一つ」がドローン攻撃を受けたことを認めた。
