ニューメキシコ大学(UNM)のIsmael Mirelesさんを筆頭とする国際研究チームは、がか座の方向、地球から約370光年先の恒星(F型星)「TOI-201」の惑星系に関する研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は学術誌「Science Advances」に掲載されています。


UNMによると、研究チームはTOI-201を公転する3つの天体を確認しました。これらの天体は性質が大きく異なるだけでなく、公転軌道が動的で常に変化し続けているのだといいます。


研究チームは今回の成果について、私たちが住む太陽系のような惑星系がどのように形成され、時間をかけて進化していくのかを理解する上で、TOI-201系の構成と進化が重要な手がかりになると述べています。


【▲ 今回の研究成果にもとづいたTOI-201系のイメージ図(Credit: Tedi Vick)】

多彩な天体が同居するTOI-201系

論文によれば、TOI-201系を構成する3つの天体は以下の通りです。いずれも主星の手前を横切る「トランジット(ある天体が別の天体の手前を横切る現象)」を地球から観測することが可能で、その際に起こる主星の光のわずかな変化を捉えることができます。


TOI-201 d(スーパーアース):地球と比べて約1.4倍の直径と約5.8倍の質量を持つ岩石惑星と推定されています。約5.85日という短い周期で主星の周りを公転しており、液体の水が存在するには高温すぎると考えられています。


TOI-201 b(ウォームジュピター):木星と比べてほぼ同じ直径と約0.5倍の質量を持つ巨大ガス惑星とみられ、公転周期は約53日です。ウォームジュピターは、主星を数日周期で公転する高温の巨大ガス惑星「ホットジュピター」と、木星のように数年かけて公転する低温の巨大ガス惑星の中間に位置づけられる惑星であり、どのような過程で現在の軌道に至ったのかが天文学的な関心を集めています。


TOI-201 c(褐色矮星):木星と比べて約0.9倍の直径と約15.7倍の質量を持ち、惑星と恒星の中間的な天体である褐色矮星に分類されます。彗星のような楕円軌道を約8年(約2890日)周期で公転しており、これまでに発見されたトランジットを起こす天体の中では最も軌道周期が長いとされています。


短いタイムスケールで変化する軌道

TOI-201系の特徴は、その「動き」にあります。通常、惑星系は数百万年という途方もない時間をかけて進化しますが、研究チームによると、TOI-201系では惑星や褐色矮星の公転軌道が非常に短いタイムスケールで今も変化し続けているといいます。


現在のTOI-201系では、地球から3つの天体すべてのトランジットを観測できます。ところが、約200年後にはまずTOI-201 dのトランジットを観測できなくなり、さらに数百年の間にTOI-201 bとTOI-201 cのトランジットも観測できなくなると予測されています。


Mirelesさんは、TOI-201を公転する3つの天体の軌道はどれも異なる傾き方をしており、互いの重力が影響し合うことで、公転軌道全体の向きや傾きが徐々に新しい方向へと変化していると指摘しています。この変化は一時的ではなく継続的なものであるため、数千年後には再び地球からトランジットが観測できるようになるといいます。


【▲ 太陽系(左)とTOI-201系(右)の惑星・褐色矮星の公転軌道を比較した図(Credit: Tedi Vick)】

複雑な軌道の変化を生み出すメカニズムとは

通常、惑星は若い恒星の周りに存在するガスと塵(ダスト)でできた原始惑星系円盤の中で誕生すると考えられています。平面的な構造である円盤の中で形成されることから、その公転軌道は太陽系の惑星のように傾きが比較的揃っているはずです。しかし、TOI-201系では公転軌道がそれぞれ傾いており、褐色矮星のTOI-201 cはまるで彗星のように離心率(楕円の度合い)が大きな楕円軌道を公転しています。


N体シミュレーション(多数の天体の重力相互作用を計算する手法)を用いて分析を行った研究チームは、TOI-201 cの楕円軌道が「フォン・ツァイペル-リドフ-古在(vZLK)振動」と呼ばれるメカニズムで説明できる可能性が最も高いと結論づけました。主星であるTOI-201には未発見の伴星があり、その重力が影響してTOI-201 cの軌道の傾きと離心率を周期的に変化させているというのです。


vZLK振動とは別に、過去にTOI-201系に存在した別の巨大惑星が弾き飛ばされた際の影響も検証されましたが、現在の惑星系の姿を再現できる確率は低いと判断されています。結論はまだ出ておらず、研究に参加したUNMのDiana Dragomir教授は「これら3つの天体がどうしてこのように傾いた軌道を描くようになったのかが次に挑むべき謎です」と述べています。


多角的な観測の賜物

この複雑な惑星系の姿を解明するため、研究チームは4つの異なる観測手法(※)を組み合わせました。分析にはNASA(アメリカ航空宇宙局)の系外惑星探査衛星「TESS」をはじめ、南極のコンコルディア基地にあるASTEP望遠鏡、世界各地の望遠鏡をつないだ「LCOGT(ラス・クンブレス天文台グローバル望遠鏡ネットワーク)」など、地上と宇宙の様々な観測手段で得られたデータが用いられています。


※…視線速度法(分光法)、トランジット測光法、トランジットタイミング変動(TTV)、位置天文学(アストロメトリ)。


Mirelesさんは、「新しい観測データがもたらされるたびに、TOI-201系の立体的な構造が徐々に明らかになっていきました」と、長年にわたるチームの努力の成果を強調しています。


なお、公転周期が長い褐色矮星TOI-201 cの次回のトランジットは、2031年3月26日に観測されると予測されています。この特徴的な惑星系の姿をさらに詳しく調べるために、この日が新たな観測の機会になると期待されています。


 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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