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現在、世界初となる大作の生成AIハリウッド映画が制作中だそうです。エンターテインメント系メディアのThe Wrapが報じています。

The Wrapによれば、この作品は「生成AI映像を全面的に使用した初の“スタジオ品質”の長編映画になる」とのこと。

背景・美術がAI。俳優は出演する

今回の映画の監督を務めるのは、『ボーン・アイデンティティー』や『オール・ユー・ニード・イズ・キル』などで知られるダグ・リーマン。そして、映画には『ワンダーウーマン』などのガル・ガドットやアカデミー主演男優賞受賞のケイシー・アフレックらが出演するとのこと。また、映画の制作はビジュアルエフェクトスタジオのACME AI&FXが担当しています。

ここで留意しておきたいのは、この映画は1から10まですべて生成AI映像で作られたものではなく、俳優たちが演技をする実写映画であり、背景や美術を生成AI映像が担う、という点です。

撮影のためにACME AI&FXが独自にカスタマイズした、背景のないシンプルな照明のセットが作られました。俳優たちの演技をそのシンプルなセットで撮影し、背景となる映像や美術はポストプロダクション段階で生成AIツールによって制作されているといった感じ。

あ、忘れていましたが、この映画のタイトルは『Bitcoin: Killing Satoshi』。タイトルからもわかる通り、ビットコインとサトシ・ナカモトの謎を題材としたものです。生成AIという最新技術を使って制作するには、かつての最新技術だったビットコインがうってつけというわけですね。

製作費が3億ドルから7000万ドルに

映画関係者によると、生成AIを採用したことで当初3億ドル(約476億円)だった製作費が約7000万ドル(約111億円)まで削減できたとのこと。AIを使ったから300億円以上も削減できたのか、すごいなーと思いますが、一方で疑問も浮かんできます。

言ってはなんですが、そもそもこの映画になぜ3億ドルもかかったのだろうか、ということ。3億ドルといえば『アヴェンジャーズ』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』クラスの製作費ですし、そうした迫力のある映像表現やアクションシーンがあるような映画なのだろうかと思ってしまいます。

製作費についてはプロデューサーのライアン・カヴァノーがThe Wrapに対して以下のように述べています。

(脚本では)南極からアンティグア、ラスベガスと約200ものロケーションが登場し、明らかに制作不可能でした。

―中略―

AIツールを活用することでコストの削減ができることに気づいたのです。

製作費は、200ものロケ撮影を行なうことから3億ドルまで跳ね上がり、結果的に生成AIによってその多くが削減できた(制作可能になった)、ということだったのです。

AIを活用して「人が作った」ということ

もうひとつ興味深い点は、ポストプロダクションにAIを使っているにもかかわらず、この映画の制作には実に多くの人数が参加しているということです。

撮影には107人のキャストと100人の撮影スタッフ、54人の撮影外スタッフが携わっています。そしてポストプロダクション作業には55人の「AIアーティスト」が参加しているとのこと。

プロデューサー陣はこの映画にどれだけの人数が携わっているかについて強調しています。これは思うに、彼らがアートにおける一般的なAIへの嫌悪感を認識していることを示しているのでしょう。つまり、このテクノロジーの活用を宣伝しつつ、作品全体を通して“人の手”の存在を強調することでバランスを取ろうとしていると考えられます。

さて、この作品がおもしろいかどうかは実際に観てみないとわかりません。が、制作過程やバックグラウンドの話を踏まえたとしても、やはり「生成AI」というキーワードがこの映画において軸になるのは明らかです。そして、この作品への評価は、AI×映画制作というテーマに対する1つのアンサーになることでしょう。

「俳優が演技し、ポスプロで生成AIを使用した」、「コスト削減のためにAI活用をした」「AIを活用して人が映画を作った」、こうした点を留意しつつ、この映画がどんなものになるかを見届けたいものです。

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