性的コンテンツの視聴は幅広い年齢層で行われている一般的な行動であり、多くの青少年は成人になる前にインターネットの広告や友人からのリンクなどを通じ、性的コンテンツに接触した経験があります。新たな研究では、「成人向けの性的コンテンツを習慣的に視聴し始めた年齢」が、後の人生におけるメンタルヘルスの状態を予測する可能性があると示されました。

Early exposure and emerging risk: A latent profile analysis of pornography use trajectories and their psychological correlates - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0747563226000026

The age you start regularly watching adult content predicts your future mental health

https://www.psypost.org/the-gap-between-seeing-and-seeking-adult-content-predicts-mental-health-risks/

依存症科学の分野では、若い頃から飲酒やギャンブルを始めると成人になってから行動障害を発症するリスクが高まると指摘されています。ネバダ大学ラスベガス校の心理学者であるベイリー・ウェイ氏らの研究チームは、成人向けの性的コンテンツの視聴開始時期も同様のパターンを示すのかどうかを調べるため、新たな研究を行いました。

性的コンテンツの視聴習慣とメンタルヘルスに関する研究の多くは、「初めて性的コンテンツを視聴した年齢」のデータしか収集していなかったとのこと。そこでウェイ氏らの研究チームは、「初めて性的コンテンツを視聴した年齢」と「性的コンテンツを習慣的に視聴し始めた年齢」の両方を尋ね、それぞれを区別して分析しました。

被験者は1316人のアメリカの成人であり、このサンプルは年齢・性別・地域・人種・世帯収入といった点でアメリカの広範な人口統計学的傾向を反映していました。被験者は「性的に露骨なコンテンツ」を初めて視聴した時期と、それらを頻繁に視聴するようになった時期について回答。また、「現在の性的コンテンツの視聴頻度」「1回あたりの平均視聴時間」「うつ病・不安・自殺念慮の症状の有無」「アルコール・大麻・ギャンブルに関する習慣」についても測定されたとのこと。



被験者は少なくとも1回は性的コンテンツを視聴したことがあると回答しており、初めて性的コンテンツを視聴した平均年齢は15.34歳、中央値は15歳で、定期的に性的コンテンツを視聴し始めた平均年齢は24.64歳、中央値は20歳でした。研究チームは数学的な分類方法を用いて、被験者を「早期視聴型」「後期視聴型」「カジュアル視聴型」の3グループに分類しました。

「早期視聴型」のグループは被験者の約67%を占めており、平均して14歳頃に初めて性的コンテンツを視聴し、18歳頃までに定期的な視聴習慣を身につけました。このグループは調査時点での性的コンテンツを視聴する頻度と1回あたりの視聴時間が最も長いとのこと。

「後期視聴型」のグループは被験者の約26%を占めており、平均して14歳頃に初めて性的コンテンツを視聴した点は「早期視聴型」と同じですが、定期的な視聴習慣を身につけたのは平均で38歳と遅めでした。

被験者全体のうち約7%を占める「カジュアル視聴型」は前の2グループとはまったく異なるパターンを示しており、初めて性的コンテンツを視聴した年齢は平均で28歳とかなり遅く、定期的な視聴習慣を身につけたのは36歳頃でした。「カジュアル視聴型」の被験者は宗教的な信仰心や教会への出席といった指標で、より高いスコアを獲得していたとのことです。



分析の結果、「早期視聴型」の被験者は他のグループと比較して、より過激あるいはニッチな性的コンテンツを好んで視聴する傾向がみられました。研究チームは、「早期視聴型」の人々は早いうちから性的な刺激に慣れてしまったため、同じレベルの興奮を得るためにより過激なコンテンツを求めるようになったのだろうと推測しています。

メンタルヘルスの側面を見ると、「早期視聴型」の被験者は最も高い心理的苦痛を報告しており、うつ病・不安・自殺念慮に関するリスクがより高いことが示されました。また、このグループは問題のある飲酒・大麻・ギャンブルに関連する症状の報告も多かったとのことです。

一方で「後期視聴型」の被験者はうつ病・不安・自殺念慮、そして心理的苦痛のスコアが最も低く、「性的コンテンツに初めて触れた年齢」だけが後のメンタルヘルスと関連しているわけではないことを示唆しています。むしろ大きな問題は、「初めての性的コンテンツの視聴」から「習慣的な性的コンテンツの視聴」に移行する速さの可能性があります。

「カジュアル視聴型」のグループは調査時点における性的コンテンツの視聴時間が最も短かったものの、「早期視聴型」と同程度のうつ病や不安の症状を示しました。これらの被験者は性的コンテンツの視聴に対する罪悪感も強かったことから、宗教的な信仰心と性的コンテンツの視聴が道徳的な矛盾を引き起こし、それが心理的負担になっているのではないかと推測されています。

今回の研究では、グループ分けには人口統計学的な背景も影響していることが示されました。男性は女性よりも「早期視聴型」または「後期視聴型」になりやすく、異性愛者や白人の被験者は「後期視聴型」に多くみられたとのこと。

逆に性的指向が多様な人々は「早期視聴型」に多い傾向がありました。この点について研究チームは、若者がオンラインで自身の性的アイデンティティの変遷を探求し、セクシュアリティに関する疑問の答えを見つけようとする中で、性的コンテンツの視聴習慣が形作られた可能性があると考えています。



今回の研究はあくまで観察結果に基づいたものであり、「早期の性的コンテンツの視聴習慣がメンタルヘルスの問題を引き起こす」という因果関係を証明したものではありません。たとえば、すでにうつ病や不安症の初期症状を経験している若者が、問題に対処する方法として性的コンテンツに依存している可能性も十分に考えられます。

また、テクノロジーへのアクセスによる世代間ギャップも結果に影響しているかもしれません。被験者の中には家庭にインターネットやスマートフォンがない環境で育った高齢者もいたため、これらの人々はそもそも性的コンテンツにアクセスする手段がなかったため、「早期視聴型」にならなかった可能性があるとのこと。

研究チームは今回の研究結果を踏まえて、若者を長年にわたって追跡する長期研究も実施する予定です。実際の行動をリアルタイムで追跡することにより、幼少時の記憶に頼るよりも正確なデータセットが得られると期待されています。