ラップ・おむつ・生理用品にも影響…“ナフサ不足”で懸念される「買い占め」と「転売」 法律で規制できるか?【弁護士解説】
中東情勢の悪化により、原油から作られ、プラスチックなどの原料となる「ナフサ(粗製ガソリン)」の供給不安と価格高騰が深刻化している。
ナフサとは、原油を蒸留して得られる軽い留分(ガソリンに似た透明な液体)。国内では主に工場(プラント)で熱分解され、エチレンやプロピレンなどの石油化学基礎製品を作り出す。そしてこれらの基礎製品は、さらにポリ袋やラップ、ペットボトルや食品の包装といった、私たちの身近な生活にとって不可欠な日用品の原料となる。
また、紙おむつ・介護用おむつなどケアを必要とする乳幼児や高齢者がいる家庭における必需品、そして女性にとって不可欠な生理用品にも関わる。さらに注射器や点滴バッグ、カテーテルや透析回路など医療の現場で使用される製品の原材料も、ナフサ由来の基礎製品だ。
そして4月初旬から、ナフサを原料としていることから品薄になった塗料用シンナーがフリマサイトに高額出品されており、必要とする業者が困っている事態が報じられていた。また、ホームセンターでの買い占めも報道されている。
コロナ禍ではマスクやアルコール消毒液が、昨年にはコメが、買い占められたうえで高額で転売されるケースが相次ぎ、社会的な問題となった。そして、同じく品薄になっているナフサ製品についても転売が横行する事態が予測される。
はたして、転売行為を法的に規制・予防する方法はないのだろうか。
「転売行為」そのものを規制する法律はないが…まず、すでに報道で確認されている、塗料用シンナーを転売する行為(フリマサイトへの高額出品)に、法的な問題はあるのか。
シンナーには劇物である「トルエン」が含まれており、取り扱いには危険が伴う。しかし、転売の問題に詳しい杉山大介弁護士によると、塗料用シンナーそのものは法律上の「劇物」ではないことから、「毒物及び劇物取締法」によって販売を禁止される対象ではない。
「転売目的でシンナーを大量購入した場合には、消防法や各自治体の条例に基づく規定量を超えて保管する際の義務などが生じる可能性はありますが、やはり、ただちに違法となるわけではありません」(杉山弁護士)
一方で、前述したポリ袋やラップ、紙おむつや生理用品などの製品は、現時点では一般の人にも入手・保管が容易であること、そして「必要とする人が必ずいる」ことがだれにでも予見可能であるからこそ、今後、買い占めと転売の対象となる可能性が高いと考えられる。
特に患者の生死にも直結する医療の現場では、ナフサ製品の不足に対する不安の声は強い。
だが、現行法では転売によって価格をつり上げる行為そのものを規制する法律はない。つまり、これらの製品が転売の対象となっても、現状の法律に照らせば問題がないということだ。
ただし、実際には、衛生マスクや消毒用アルコールやコメ(米殻)の転売は「国民生活安定緊急措置法」によって一時的に規制されてきた。ナフサ製品についてもこの法律を適用できる可能性があるという。
具体的には、政令で指定した物資について一時的にその価格をコントロールし、違反者に対して経済的制裁なども与えることができる法律である。
「国民生活安定緊急措置法は条文上、乱発してよい内容にはなっていません。しかし、必要と判断されたら、ナフサ製品に関しても使われる可能性はあります。
国民の自由を制限する要素が大きい法律ではありますが、一時的な措置であるといった点から、正当化される余地も相応にあり、比較的使いやすいものといえます」(杉山弁護士)
国内での対処には限界があるそもそもナフサ製品の供給不安の根本的な原因は、米国やイスラエルとイランとの衝突に伴い発生している、ホルムズ海峡をめぐる問題だ。
したがって、転売の規制や、ガソリンに対してなされているような補助金といった、国内の法律や政策に基づく対処には限界がある。根本的な解決手段は、外交努力によるものとならざるを得ない。
「従来、日本政府はイランなど中東とも友好な関係を築いてきました。
政府の代表者が、その成果をあえて放棄し、あたかも代替的な石油を別の場所から確保できるかのように吹聴している現状には懸念しかありません。
現在は石油の国内備蓄の放出という手段を取っておりますが、それも数か月すれば尽きてしまいます。このままだと、間違いなく石油は不足します。
今回の石油不足そのものは外国の戦争に起因する不可避の損失であるとしても、その損失を最低限に収められるのか、それとも必要以上に損失を拡大してしまうのかという点で、日本政府や現政権の対応が問われると考えるべきです」(杉山弁護士)
