中部地方のスーパーがいま熱い!おにぎり85円・ドンキ新業態「ロビン・フッド」が変えるスーパー最前線

写真拡大 (全4枚)

中部地方のスーパーには、全国チェーンに押されながらも地元資本が根強く生き残る独自の生態系がある。バローのように首都圏へ攻勢をかける地場スーパーがある一方で、ユニーはドン・キホーテのPPIHの傘下に入り、「MEGAドン・キホーテUNY」への転換で若年層の取り込みに成功した。

しかしその実態は、単なるドンキ化ではない。ユニー時代の落ち着いた売り場の空気を残しながら、ドンキのブランド力と商品開発力を融合させた新たな業態だ。そしてこの2社の融合は、ドン・キホーテ自身をも変えつつある。後編では、今月生まれる新業態「ロビン・フッド」の戦略に迫る。

前編記事『バローにアミカ、ユニー…国内一強のイオンを返り討ちにする「中部地方のローカルスーパー」が強すぎる』より続く。

ドンキの新業態「ロビン・フッド」が誕生

そしてその流れを象徴する動きとして注目されているのが、今月より本格展開が始まるドン・キホーテの新業態「ロビン・フッド」だ。

PPIHは2025年8月、長期経営計画「Double Impact 2035」を公表。戦略達成の柱のひとつが「新業態」であり、その具体策として提示されたのが「食品強化型ドンキ」--すなわちロビン・フッドである。

4月24日に愛知県あま市甚目寺にオープンする1号店「ロビン・フッド甚目寺店」を皮切りに、2026年6月までに東海地方で5店舗を展開。2035年に向けて200〜300店舗の展開をめざし、総売上6000億円、営業利益360億円を目標としている。

コンセプトは「スーパーみたいでスーパーじゃない」。おにぎり85円をはじめ圧倒的な安さを武器に、売場面積の約60%を食品売場としつつ、ドンキ取扱の非食品を40%にまで拡大するのが大きな特徴だ。(一般的なスーパーの非食品の売場面積は10%程度)

PPIH代表取締役COO・鈴木康介氏は、「ロビン・フッド」の発表会見において次のように述べている。

「ディスカウント要素を継続しながら、高まる食品ニーズに応えていく。土台になるのはユニーの生鮮調達力。ドンキに食品や生鮮のイメージはないだろうが、(ユニーの買収などで)長年にわたり強みを取り入れてきており、力の見せ所が“食品強化型ドンキ”だ。物価が上がっている今だからこそディスカウントが重要。ユニーの生鮮とドンキの編集力・ディスカウントを組み合わせたものは、唯一無二の“勝てる方程式”だ」(引用元:Impress Watch 2026年3月3日報道)

そう、ユニーはドンキにただ救われたのではない。ドンキもまた、ユニーから学んでいるのである。

国内スーパーの競争は激化

PPIHが新業態の展開地として選んだ中京エリアには、昨年の流通業界で話題を集めた「ロピア」など他地域からのディスカウントスーパーも続々と進出している。

ロピアは精肉や惣菜を中心に、「日本版コストコ」とも呼ばれるボリューム感のある商品を低価格で販売し、急成長の真っ最中だ。5年間で店舗数は2倍以上、売上高は10年で7倍という驚異的な成長ぶりで、近隣に出店されると既存のスーパーが年間40億円ものシェアを奪われるとすらいわれている。

一方、九州の雄「トライアル」は、AIやデータ分析を活用した次世代型ディスカウントストアを掲げ、西友の買収を足掛かりに首都圏での攻勢を強めている。また、群馬県発祥のベイシアも首都圏・東海地方で存在感を強めており、競争はますます激しくなっている。

製造業の地に根付く「信頼の文化」

中部地方のスーパーが強い理由を一言で説明することは難しい。ただ売り場を歩いていると、そこが単なる食材を調達する場所ではなく、「生活のインフラ」として受け入れられていることを感じる。だからこそ、この地域のスーパーは派手な価格競争だけでは簡単に置き換わらないのだ。

その背景には、中部地方特有の産業文化もあるのではないかと思う。トヨタをはじめとする製造業の集積地であるこの地域では、地元企業同士の長い取引や信頼関係が重んじられる。スーパーもまた、その地域で長く商売を続けてきた企業のひとつだ。

規模はまったく違うが、筆者も地元山梨でのローカルスーパーの経営者時代、いくつかのスーパーを引き継いだ経験がある。ビジネスとしての計算はもちろんある。だがそれ以上に、その店が長年築いてきた商品力や地域からの信用を受け継ぐ意味合いの方が大きかった。ドン・キホーテもまた、ユニーが築いてきた売り場の中に、そうした価値を見いだしたのではないだろうか。

長年積み重ねられた関係や信頼は、売り場の空気にもどこか表れている。中部地方を歩くと、まだ各所にチェーンではない「地元の店」がちゃんと生きている。そしてそのことは、いまの日本の小売業界の中では、とても貴重なことのように思えるのである。

・・・・・・

【もっと読む】「買い物の喜びゼロ」と批判されても…首都圏で「まいばすけっと」が爆増する「必然の理由」

【もっと読む】「買い物の喜びゼロ」と批判されても…首都圏で「まいばすけっと」が爆増する「必然の理由」