(※写真はイメージです/PIXTA)

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個人の力で会社を立ち上げ(起業家の時代)、仲間をつくり(幹部の時代)、仕組みをつくり(標準化の時代)、会社を軌道に乗せる(省人化の時代)――。企業が成長するにあたっては、このようにいくつかのステップが存在します。日本は高齢化が進行し人口減に直面していますが、こうしたマーケットの衰退をチャンスに変えるためには、どんな思考の転換が必要なのでしょうか。久野康成氏の著書『現金10億経営 会社をキャッシュリッチに変える経営戦略』(幻冬舎メディアコンサルティング)より、本記事でくわしくみていきましょう。

「二兎を追う経営」が大企業の“衰退危機”を防ぐ

大企業が陥るサクセストラップから抜け出すための方法論は、「挑戦する文化」を形成することです。

全ての既存事業は、やがて陳腐化するという前提に立つ必要があります。これを解決する方法が、二兎を追う経営、『両利きの経営』(チャールズ・A・オライリー著 東洋経済新報社 2019年)です。

これは、既存事業の「深化」(Exploitation) をしながら常に新規事業の「探索」(Exploration)を行うメソッドです。新規事業を開発し続けることが組織の陳腐化を防ぎ、企業家精神を保つことができます。

挑戦する文化の形成は、企業家になる人が、社長のみではなく社員から現れることに影響を与えます。これは、もう一度、人中心の暗黙知の時代となります。

暗黙知と形式知が常にスパイラル的に循環することによって、長期にわたり繁栄する企業を作ることができるのです。

海外市場は早い者勝ち…中小企業に残された“チャンス”

日本は少子高齢化し、人口減少が始まりました。これは全ての先進国で起きている現象です。人口減は、マーケットの縮小を意味します。

このような大きな経営環境の変化に対して我々が取り得る戦略は、次の2つです。

1.「残存者利益」を狙いにいく

第1が、あくまで日本の市場にこだわり「残存者利益」を狙いにいく方法です。多くの上場会社が中小企業を買収しているのもこの戦略といえます。

この戦略が有効な企業は競合他社より原価が低く生産できる企業で、一般的には大企業が有利です。つまり、中小企業にとっては、地域にこだわり、残存者利益を狙う戦略は、不利なのです。

2.海外進出で「先駆者利益」を狙いにいく

第2は、海外進出により「先駆者利益」を狙いにいく方法です。これは、早さが勝負になります。

早さは、会社の規模には関係ありません。トップの意思決定と行動によって決まります。「海外に出る余裕がない」と考える経営者は、時間が過ぎれば、その余裕もさらになくなり、先駆者利益を得るチャンスも少なくなります。

つまり、海外市場は、早い者勝ちなのです。

海外進出“大失敗”で気づいた「早さ」の重要性

私はかつて、国内での拡大に限界を感じ、海外市場の開拓を決意しました。2006年、当時、急速に発展を始めていた中国に進出をしました。そして、大失敗しました。

この理由は、進出が遅かったからです。マーケットは大きくても競合が強すぎました。

その競合は、どこよりも早く進出し「先駆者利益」を得ていたのです。私は、ここで「早さ」の重要性に気づき、3カ月で中国を諦め、すぐにインドに向かいました。

2007年、日本で最初の独立系会計事務所をインドの首都であるニューデリーに設立しました。その後、4年間でチェンナイ、ムンバイ、ベンガルールと4拠点に広がりました。さらに2011年からタイ、ベトナム、インドネシアを皮切りに20カ国以上に展開しました。海外売上比率は7割となり、大半の利益は国外で稼げるようになりました。

一般に海外投資はリスクが高いと思われがちです。かつては、日本の工場を海外に移管することが主たる目的だったため、多額の資金を必要としました。

しかし、現在は、生産拠点ではなく販売拠点としての海外進出が主となったため、多額の資金は必要としません。

また、ローカル企業に少額出資することにより、ファブレス化の実現、つまり、工場を設立しなくても「地産地消」モデルができるようになりました。本編の物語では山田事業部長が悪戦苦闘して現地法人を立ち上げていましたが、よりスムーズな戦略をとることもできたのです。

※ 本編は久野康成氏の著書『現金10億経営 会社をキャッシュリッチに変える経営戦略』(幻冬舎メディアコンサルティング)を参照

賢者の教え

暗黙知と形式知が常にスパイラル的に循環することによって、長期にわたり繁栄する企業を作ることができる。

海外市場は、早い者勝ち。

少額出資による資本提携をローカル企業と行うことでスモール・スタートが可能。

久野 康成

久野康成公認会計士事務所 所長
株式会社東京コンサルティングファーム 代表取締役会長
東京税理士法人 統括代表社員
公認会計士・税理士・社団法人日本証券アナリスト協会検定会員