「自分のいる世界は壊れてしまった」トラウマ体験をした被害者の症状「再体験」とは。
PTSD(心的外傷後ストレス症)は、事件や事故、災害などのつらい体験がトラウマとなって、いつまでも恐怖や不安が続き、生活に支障が出てしまう心の病気です。近年は暴力や性被害、重度の事故など、個々の事例からPTSDになることも多く、誰もがトラウマの問題と無縁でいられなくなっています。
こうしたトラウマによって引き起こされるさまざまな変化(トラウマ反応)や対処法、家族や周囲の人ができるサポート法を紹介した書籍『新版 PTSDとトラウマのすべてがわかる本』より、一部を抜粋紹介します。
以前の自分ではない感覚に苦しむ人が多い
トラウマ体験は、被害者の人生を一変させてしまいます。夢や希望を感じることができなくなり、悲観的な価値観に心を支配されます。あまりのつらさに、人生が悪夢のように感じられ、現実感をもてません。
その気持ちを「自分のいる世界は壊れてしまった」「いつか悪夢からさめて、すべてなかったことになるような気がする」などと表現するようになります。
本人の内面は大きく変わってしまっているのですが、周囲はそれをなかなか理解できません。
再体験 つらい体験を思い出したり、夢にみたりする
再体験は、PTSD症状の1つで、侵入症状ともいわれます。文字通り、思い出したくないのにトラウマ体験の嫌な記憶が頭のなかに侵入してくる現象で、逃れたり拒んだりできません。
ただ思い出すのではなく、その現場に引き戻されて、出来事を再び体験しているような生々しい感覚におそわれ、強い苦痛を伴います。思い出したらどうしようとつねに不安を感じます。
再体験が現れるきっかけは人によって異なります。仕事中にふと現れることもあれば、テレビで事件や事故のニュースを目にしたとき、あるいは横になると現れることもあります。一日に何度も苦しむ人もいます。
思い出しても大丈夫な記憶として制御することが必要です。
■症状)嫌なイメージが再生される
事件や事故などの記憶が頭のなかで再生され、何度もよみがえります。トラウマ体験を夢にみることもあります。事故現場など、当時の状況に近い環境に触れたときに起こりがちです。
・嫌な記憶が急によみがえる
・当時の状況を夢にみる
・似た事件のニュースをみると、体調が悪くなる
■対処法)記憶をコントロールする
トラウマ体験は、被害者の心に深い傷を残します。それを思い出す再体験は、自然な反応ともいえます。無理に忘れようとせず、記憶と向きあい、制御していくことが必要です。
フラッシュバックに悩まされ、生活が困難に
再体験のもっともはげしい症状が「フラッシュバック」です。本人の頭のなかで事件・事故の状況が再現され、痛みやにおいまでも再体験してしまいます。
フラッシュバックにおそわれている間、本人は、周囲の状況がわからなくなっている場合があります。また、自分の力ではどうにもならず、途方にくれています。
この症状は、本人の努力や周囲のアドバイスで治るものではありません。できるだけ早く、専門家に相談する必要があります。
周囲も症状の深刻さを認識して、本人に受診を勧めてください。
■症状)記憶が生々しくよみがえる
現実への認識を失い、事件・事故当時の心理状態に陥ります。加害者が近くにいると思って激しく行動したり、ケガの痛みを感じると訴えたりします。
・叫び声や話し声が聞こえる
・事件の映像が鮮明にみえる
・ケガの痛みや寒気を感じる
フラッシュバックにおびえて、日常のことが手につかなくなるなど、生活へも影響が。家族や友人などが犯人の姿にみえ、思わず突き飛ばすことがある。
・仕事や家事ができなくなる
・落ち着きを失う
・つらさのあまり自傷行為に走る
■対処法)まずは安全を確保する
フラッシュバックは、ときには危険にさえつながる症状です。起きてしまったときは、まず安全を確保しましょう。
〇こどもの場合
トラウマ体験を遊びで再現することがある
被害者が子どもの場合、再体験が遊びのなかに現れることがあります。人形に暴力をふるう、ぶらぶらと揺らして地震を再現する、おもちゃを衝突させて交通事故を再現するなど、おもちゃや道具を使ってトラウマ体験をよみがえらせます。
このとき、遊んでいても表情はこわばっているのが特徴です。
