親同伴はもはやありふれた光景(写真はイメージです)

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 炎上と言えば大げさかもしれないが、多くの疑問や異論が殺到しているのは間違いない。4月は新入社員が社会人としての第一歩を踏み出す時期だが、その象徴と呼ぶべき“入社式”に「保護者同伴」という企業が少なくないのだ。SNSのXでは《社会人として自立する門出に過保護ではないのか》、《いまの入社式って親、参加するのか。自分に言わせたら、これじゃ入園式だよ》《親も親なら、子も子だなぁ》──といった批判的な投稿が次から次へと表示される。(全2回の第1回)

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 担当記者は「なぜここにきて、『親同伴の入社式がある』という情報がSNS上で広まっているのか、主に2つの理由がXから読み解けます」と言う。

親同伴はもはやありふれた光景(写真はイメージです)

「1つ目は目撃証言です。4月1日に電車などの公共交通機関で入社式に向かう新社会人と親が乗っていたとか、実際に入社式の会場に親子で入っていくのを見た、という投稿が目立ちます。2つ目は全国各地の新聞社やテレビ局が入社式の様子を報じるニュースを見て驚いたという投稿です。親も出席する入社式は珍しいので取材の対象となり、配信された記事が話題を集めて拡散します。今年の場合、西日本の金融機関や、都内の外食産業、東北地方の建設会社などが新入社員の親も呼んで式を行ったと報じられ、その記事に賛否両論の意見が殺到、さらに拡散するという状況が今も続いています」

 大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は就活の問題にも詳しく、『ゼロから始める 就活まるごとガイド2027』(講談社)などの著作がある。なぜ企業は親も入社式に招待するのか、解説を依頼した。

「大きな背景の一つとして就職氷河期の終わりが挙げられます。日本が好景気に転じたわけでもないのに2000年代の後半から就活は“売り手市場”に変わっていきました。なぜかと言えば、少子化に団塊世代の大量退職が加わって人手不足が鮮明になったからです。さらに働き方改革や女性の積極採用も影響を与えました。前者は一人当たりの労働時間が減るため、後者は女性社員の産休や育休に対応するため、社員数を増やす必要に迫られたからです」

オヤカクの誕生

 就職氷河期は究極の“買い手市場”だった。企業側は応募してきた大学生を片っ端から不採用にしても、次から次へと優秀な学生がエントリーしてきた。大学生も1社から内定をもらえば御の字で、内定辞退は基本的にあり得なかった。

「ところが2010年代に入ると、複数の企業から内定をもらうのは当たり前という時代に変わります。そして企業の人事担当者が『ぜひ、わが社に来て下さい』と内定を伝えると、『両親と相談します』と答える大学生が少なくないことに気づいたのです。ここで親子関係の変化がクローズアップされました。もちろん今でも『自分の就職先は自分で決める』という大学生は存在します。その一方で、親に『この会社じゃなく、有名なこっちの会社にしなさい』と言われると素直に応じる学生が増えているのも事実です。こうして企業側にとっては内定辞退率の減少が最優先課題となりました。そこで浮上したのが“オヤカク”という言葉です」(同・石渡氏)

 オヤカクとは「親の確認」を略して誕生した言葉だ。要するに企業が大学生の内定者だけでなく、その保護者にも内定の同意や承諾を得ることを指す。

 このオヤカクが企業の間で必須のものとなっていったことが、「保護者同伴の入社式」が行われるようになった“原点”だという。

 第2回【親同伴の入社式で「早期離職率が下がった」企業も…“オヤカク”が広まる背景に「大学生はまだ子供」という保護者の認識】では、Xでは「入社式に親同伴はおかしい」という疑問の声が殺到しても、入社式に親を呼ぶ企業は確実に今後も増えていく理由について詳しくお伝えする──。

デイリー新潮編集部