飲食業界に殴りこみ「LDHの焼き鳥屋」がここへきて急増していた…リスク承知で挑む「ビジネスの勝算」は
「食もエンターテインメント」。EXILEのHIRO氏が率いるエンターテインメント企業であるLDHが、ミシュランの星を獲得し続ける焼き鳥の名店「鳥しき」とタッグを組んだ。
「食はLDHの成長戦略の柱の1つ」とし、国内のみならず海外でも焼き鳥事業を拡大している。その行程とはどんなものなのか。
【前編記事】『なぜ芸能事務所なのに焼き鳥を?LDHが「焼き鳥職人は間違いなくアーティスト」と断言するこれだけの理由』よりつづく。
「3本の柱」で焼き鳥の世界に挑む
「焼き鳥は宗教のタブーに触れず、世界中の方々に召し上がっていただける料理です。『鳥しきICHIMON』ではジャパン・クオリティの上質な焼き鳥を味わってもらい、焼き鳥のリーディング・カンパニーを目指しています」と、LDH kitchen鳥しき事業部・事業部長の泉谷林太郎氏は言う。
2023年、「鳥しきICHIMON」ブランドがスタートした。店主の池川義輝氏が腕を振るう「鳥しき」をはじめ、国内外で14店舗を運営している。
「鳥しきICHIMON」には3本の柱がある――。
1つはカウンターブランドと呼ぶ、ハイエンドの高級焼き鳥店。単価は1人2万円弱で、「鳥しき」や「鳥かぜ」、「鳥おか」など独自の屋号を掲げ、各店でオリジナリティも追求。もう1つは、単価5、6000円ほどの焼き鳥居酒屋である「とりまち」。カジュアルダイニングの位置付けで2025年から出店を拡大中だ。最後がテイクアウト。鳥料理を中心とした惣菜を販売する店であり、「麻布台 鳥しき」がコロナ禍を経て生まれた。
串に刺さず、炭火焼きにこだわった鳥づくしのコースを提供する「鳥焼き 小花」、ドリンクとのマリアージュを追求する「鳥佳」、焼き鳥の原点である“屋台”に立ち返ってリニューアルする「鳥そら」などカウンターブランドはバラエティ豊か。
「鳥しきICHIMON」になり、カジュアルダイニングや海外の店が増えた現在、各店を回遊して楽しむ人も増加。日本の店舗を訪れた海外からの客が、自国の店舗の常連になるケースも多いという。
リスクをとってでも拡大路線を貫く
「長年の修業で培われた職人技術の結晶であるカウンターブランドは、われわれのメインストリームです。一方で、焼き鳥には赤提灯の店のように肩肘張らずに串を味わう気軽な居酒屋としての歴史もあります。その側面も楽しんでもらいたいという思いから始めたのが『とりまち』。街に根付きたいという思いを込め、『まち』の名前を冠しています」(前出・泉谷氏)
海外での出店も加速している。2020年にオープンした「鳥えん New York City」に続き、2023年には上海、2025年には香港に「鳥かぜ」を開店した。2026年5月には台北にも「鳥かぜ」をオープン予定だ。
「われわれが提供するのは本物の『日本の焼き鳥』です。海外において寿司はカリフォルニアロールのような手軽な和洋折衷の味が普及する一方で、職人による本格的な握り寿司も定着していきました。東南アジアにはリーズナブルな鳥の串焼きの『サテ』があるように、鳥料理は生魚を使う寿司よりも世界中で身近です。同じようにジャパン・クオリティの焼鳥が広まる余地は十分にあり、手応えを感じています」と泉谷氏。
LDHの飲食事業を担うLDH kitchenは、官報公告によると2023年12月期決算で、利益剰余金はマイナス約6億7500万円。ただこれも、新規店舗のオープンを積極的に進める拡大路線を続けているがゆえの数字とも言える。
2027年には出店ラッシュを迎える。首都圏を中心とした地域で『とりまち』の出店攻勢をかけるほか、カウンターブランドの『鳥かぜ』もタイ・バンコクほかASEAN地域での出店も計画中だ。
焼き鳥文化をいっそう盛り上げるために
出店以外の多彩な活動も目立つ。2025年12月、「鳥しきICHIMON」は焼鳥でつながるコミュニティサイト「TEAM火入れ」を立ち上げた。日本だけではなく海外で活躍する焼き鳥職人の経歴や、焼き鳥の素材の生産者を紹介する記事などのほか、焼き鳥に関するさまざまな情報発信を行い、職人同士のコミュニケーションを活発に促す。
「焼き鳥業界はラーメン業界と少し似ていて、個人店が多いんです。高級店から手頃な居酒屋業態、家族経営の店などスタイルは千差万別で、地方をまたいでの横のつながりはそんなに強くない。
サイトには『鳥しきICHIMON』だけではなく、各地で営む焼き鳥店の職人さんが伝えたい情報も掲載。事業提携までいかずとも、海外出店の相談に乗ることもできます。焼き鳥職人の方々に、コミュニケーションのハブとして上手く使ってもらえたら」(前出・泉谷氏)
サイト上にはパートナーシップやコラボレーション、その他、さまざまな相談を寄せられるページもあり、既に地方で働く焼き鳥職人から相談の問い合わせがあるという。今後は日本、世界の焼き鳥職人たちと共同でのイベント開催なども視野に入れている。
焼き鳥文化を世界中へ広げるという理念の下、焼き鳥という食文化の価値を上げ、職人の地位向上を目指す。職人をアーティストへと昇華させる――「鳥しきICHIMON」が世界で羽ばたくのか、今後の展開に注目だ。
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