「依存症対策」は建前? 衰退止まらぬパチンコ業界、2027年キャッシュレス化へ 「上限きたら現金で打つだけでは」と冷ややかな声
かつて、大衆娯楽の王様とまで呼ばれていたパチンコ。しかし、長い年月が経ち最近は大分衰退してしまった。
不景気では国民もおこづかいに余裕がなく、無駄にして良いお金などなくなってしまい、遊技客も短期的には回復しても、全体としては右肩下がりだ。ホールもいつの間にか減ってきた(それでもまだ多い)。
パチンコが昔ほど娯楽として通用しなくなった理由はいくつかある。業界はすぐにスマホが悪いだとか、サブスクが台頭したとか他責に走りがちだが、根本にあるのは不景気による順当な淘汰だ。
かつて向こう見ずにホール企業各社が無思慮に増やせるだけ増やして行ったホールが、不景気だからと釘を開けられず、設定も入れることができなくなった。回らない台は勝てないから、まともな人から買わなくなる。
本来は出店しても集客の見込みもへったくれもなかった土地にGOサインを出し、無理にオープンさせた店は当たり前に潰れていった。残ったのは一部の依存症ユーザーぐらいのもので、そうなると新規の参入もどんどん見込めなくなる。
そんな中、業界の復活をかけてパチンコホールがキャッシュレス化を目指すという。(文:松本ミゾレ)
本当なの?「使用上限を設けられるキャッシュレス決済は強力な対策」
パチンコ・パチスロ業界メディアのグリーンべるとは3月17日に「業界のキャッシュレス化、2027年度中の開始目指す〜日遊協会見」というタイトルで、日本遊技関連事業協会、通称“日遊協”の会見の模様を報じている。
DXを活用した依存対策としてキャッシュレス化を推し進めたいのだそうで、同団体の西村拓郎会長は次のように発言したという。
「スマホがこれだけ世の中に普及している今の時代において、我々業界でもスマホを活用していく。(中略)根底にあるのはあくまで依存対策であり、業界として推進していくためには、使用上限を設けられるキャッシュレス決済は強力な対策になり得る」
パチンコ業界では依存症対策として、自己申告・家族申告プログラムというものがあり9割超のホールで導入されている。これは依存症のパチンコユーザーが、あらかじめ自分の投資金額をホール側に伝え、それを超過して打っているとみなされた場合、ホールスタッフから忠告してもらえるというもの。
ただ、現状このプログラムがまともに運用されている例を僕はあまり聞いたことがない。実際に使ってる人はいるのかもしれないが、大半のユーザーは依存症の自覚もないだろうし、家族に黙って打ってるだろうから、存在価値のないプログラムではないか。
そのプログラムの形骸化は業界として認識しているはずなので、今度はそのプログラムのデジタル化と、これに併せる形でのキャッシュレス化を実現したいというのが日遊協の考えのようだ。パチンコホールでユーザーの使ったお金をデジタルで管理して自己申告プログラムと上手く紐づけする、といったことを考えているのだろう。
ただ、使用上限と相成った時点ですごすごと帰れる人がパチンコをしますか? と言いたくはなる。
実際、業界団体の中にはキャッシュレス化に慎重なところもある。全日本遊技事業協同組合連合会、通称“全日遊連”は阿部恭久理事長は1月の会見で、次のように話していた。
「全日遊連としてキャッシュレスに反対ということでは決してない。キャッシュレスは進めるべきだが、クレジットカードによる貸し越しはやらせない、ということ。(中略)全日遊連のスタンスとしては、借金をしてまで遊技をさせない、と報告をしている。これは政府の方針とも合致しており、それに逆らってまでやることが良いかどうかは普通に判断すれば自ずと結論が出るだろうと考えている」(P-WORLDの記事「全日遊連が全国理事会、キャッシュレス化は賛成でも『クレジットカードによる貸し越しは容認できない』」より)
たしかに、キャッシュレス化がスタートしたとして、キャッシュレスで遊んでいる最中に使用上限が来たら現金遊技に切り替えるだけで、むしろ傷口が大きくなるだけではないか? という気がするし、現金遊技に切り替える段階で金がない場合、普通にキャッシングしてくる客も絶対いるだろう。
全日遊連は「デビットや引出上限付きのATMを店内に置く方が健全」といった主張もしていたが、結局上限が来たら外のコンビニでキャッシングしてくる依存症ユーザーは絶対いるだろう。
どう対策を講じても、これが依存症対策になるとは、やはり僕の小さな脳みそでは考えることは難しい……。
キャッシュレス対応していない娯楽は間違いなく淘汰されるが、対応するとしてまた費用はホール持ちなのか?
というか、個人的にはパチンコをやらない人の気持ちになって考えてみると、別にキャッシュレス対応したとしても「おお、それならパチンコに行くぞ!」と思える話ではないだろう。
ただ、所詮これは僕の想像でしかない。もしかしたら……これまでパチンコを打ってこなかった層の中にはキャッシュレス化が魅力に映る可能性もゼロではない。
パチンコはこれまで、現金を使って玉やメダルを借りて遊ぶものだったが、時代にそぐわないからホールはジジババしかいなくなった。娯楽として古臭い上に、遊ぶためのシステムも無駄に煩雑。その上キャッシュレスにも対応していないんじゃ、そりゃ若い世代が気の迷いで入店することなんかない。
そこへ行くと、日遊協の動きは何となく理解はできるところではある。1人でも多くユーザーを増やしたいから、キャッシュレス化を加速させたいというのが本心だろうし。
ちなみに日遊協としては2027年度中のキャッシュレス対応開始を目指すとしている。ちょっと性急過ぎる感はあるが、それだけ喫緊の課題として認識しているということか。恐らくスマスロが導入された頃に、スマスロだけを揃えたモデルケースのようなホールが誕生したように、今度もまずどこか適切な土地にキャッシュレス対応ホールを開店させ、ユーザーの反応を見るんじゃないかと予想している。
依存症対策という建前があるのなら、これに一定の説得力もある気がするが、キャッシュレス対応となると、これまたホールには大きな負担が行きそうな……。ホールの特定の場所に、昔みたいにキャッシュレス対応プリペイドカード販売機を設置し、そこでお客がスマホなんかを使ってカードを買って、それから遊技台に挿入して遊ぶ、みたいな前時代的なものなら負担も少ないかもしれないが、まさかそんなものを今更導入するはずがない。
となれば、ついこの前新紙幣に対応したサンドを導入したばかりの全国のホールが、今度はキャッシュレスにも対応したサンドを導入しなければならないような。その辺、上手くやれるのかどうか門外漢にはよく分からないところだが、どっちみち導入となるとホールに少なからず負担は掛かるわけで。
またふるいに掛けられるホールが出るような気もするし、そもそもキャッシュレス化したところで、パチンコに興味がない人たちが「やった!キャッシュレスになったからこれでパチンコが楽しめるぞ」とどれだけ考えてくれるかどうか……。
