「富士山コンビニみたい」「桜が台無し」…“目隠し幕”設置に揺れる目黒川桜まつりの現場を歩いてみた

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オーバーツーリズムの極致

例年230万人が目黒川沿いの桜を求めて訪れるという桜まつり。お花見シーズンの今年も盛況で、開催日の3月28日、29日両日ともに多くの人で賑わいを見せていた。

だが、今年から中目黒駅前を出てすぐ、日の出橋の両サイドに「滞留禁止」「一方通行」と表示された目隠し用の幕が設置されることとなり、波紋を呼んでいる。景観をあえて隠すような障害物が設置されたのは、今回が初めてだ。

桜のシーズンの目黒川沿いは、以前からオーバーツーリズムによる人の多さや、ゴミのポイ捨てが問題になっていた。また、川の両サイドに桜が並ぶ景色が見渡せる橋の上では写真を撮影する人が殺到して通行の妨げになっており、その対策として今回、目隠し用の幕が設置されることになったようだ。かつて“富士山コンビニ”に観光客が押し寄せて幕で隠した例を思い出させる。

現地では何が起きているのか。東京都心で22℃と、まさにお花見日和となった29日の日曜に現地を訪れた。

東急東横線中目黒駅に到着すると、構内ではさっそく「ホームからの撮影はご遠慮ください。運行の支障になります!」とのアナウンスが。駅員が叫びながら、動線案内をしていた。駅を出てからも、警察や警備員が信号前で交通整備を行っており、やはり多くの人が目黒川沿いの桜を見物しに来ているようだ。

「滞留禁止」、「一方通行」が掲げられている場所は、駅から信号を渡ってすぐの場所にある桜の名所・日の出橋に設置されている。また、立て看板で「ゴミは購入店で捨てる」、「大声で騒がない」、「一方通行を守る」といったルールの順守が呼びかけられていた。

路地裏ではポイ捨ても横行

大混雑のなかでも運営は順調に行われていた。問題の日の出橋周辺では人が滞留することなく、絶え間なく流れていた。一方通行に関しても、警備員の声を守って歩行している客が多数だ。ベンチにもロープが張られ、立ち入り禁止となっているため、露店で買った食べ物や飲み物は歩きながら食べるしかない。不便そうに感じるが、運営がそれ用のゴミ捨て場を用意しているため、飲食で出たゴミはすぐに捨てることができる。

実際に訪れている人は新しい取り組みをどのように思っているのか。スマホを片手に、写真撮影をしていた2人組の女性に話を聞くと、「残念ですけど、仕方がない」とのことだ。

「綺麗な桜の写真を撮りたくて、来てみたらこんなことになっていたので驚きました。毎年この時期になると、花見で有名な場所は、かなり人で混雑するので、こうした対応となるのも仕方がないですね。それに、道に立ち止まって写真を撮る人がいないのでぶつかる心配もなく、滞留禁止のような措置はいいと思います」

「仕方がない」「ルールは必要」といった好意的な意見もあるが、一部からは批判的な声もあった。

毎年目黒川付近で写真撮影をしているという男性は「景観が悪くなった」と憤慨していた。

「何年もこのあたりの桜を撮影しています。綺麗な桜並木なので、写真を撮るスポットとしては、絶好の場所なんです。ただ、『滞留禁止』や『一方通行』といった幕があると、治安が悪いように感じてしまいますし、せっかくの撮影スポットが台無しです。

こんな状態になるのであれば、警備員を増やして、幕は設置しないほうがいいと感じました。初めての試みなのでどれだけ効果があるのかわかりませんが、もっと景観に配慮した案があれば、そちらの検討も行ってほしいですね」

一方で、少数ではあるが立ち止まり写真撮影をする者や、路地裏に入るとゴミがポイ捨てされている現場も目撃した。

なぜ“目隠し幕”を?

どのような意図があって、幕を設置したのか。目黒区役所の担当者に話を聞くと、花見客の安全を目的として3月17日に幕を設置したとの回答だった。

「目黒川周辺の道路は道幅が狭く、人が留まってしまうと、事故につながる危険性もあります。歩行者の安全を守るために幕やロープの設置をすることになりました。実際の効果については、数値的な回答はできませんが、少なくともロープ柵の設置によって、立ち入りや、留まって写真撮影をする人は少なくなった印象は区としてはあります」(目黒区役所)

滞留を禁止しても、やはり道路脇で写真撮影を行っている人がいることについては、「行政以外の協力が必要になり、それが今後の課題」とのことだ。

「桜の開花期間になると、消防や警察を含め安全対策協議会が開かれ、対策などを決めていきます。しかし、イベントごとに出店する店の方は、目黒区の方ではなく、周知ができていないので、それができるように対策しなければと思います。彼らにも、滞留禁止の呼びかけや列の整理などをしていただくことで、より観光客の安全につながるのではと考えています」(同前)

毎年桜の季節になると賑わう目黒川周辺での花見。幕を設置したことで、今年は少しだけ違った様相を見せていた。こういった取り組みは概ね観光客からは受け入れられており、一定の効果もあるようだ。かつては近隣の住民だけが静かに桜を楽しめた目黒川だが、多くの人が押しかける事態になってしまった以上、みんなが桜を楽しむためには規制も仕方のないことなのだろう。

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取材・文・写真:白紙緑