「ボケてる、飯がまずい」ツマの悪口を聞かされた部下の「私だったら別れます」発言に夫がした言い訳

写真拡大 (全5枚)

誰にも何も言わず、ツマはどこへ行ったのか

夜遅くに「醤油を買ってくる」と言い残し、忽然と姿を消した妻・ヨシ子。スーツケースも貴重品もそのままに、誰にも何も言わずに、ヨシ子はどこへ行ってしまったのか。

最初のうちは、ボケているからだの、あんなおばさん、誰も誘拐などしないなどと言っていた夫の康も、さすがに心配になって探し始めるのだが……

これは、2021年に『消えたママ友』(KADOKAWA)『妻が口をきいてくれません』(集英社)で第25回手筭治虫文化賞短編賞を受賞した漫画家・野原広子さんの最新作『うちのツマ知りませんか』(オーバーラップ)の中の話だ。

ヨシ子を探してパート先を訪ねた康は、自分が知らない間に退職していた事実を告げられる。次に警察に相談しに行くと、世情に明るい警官から夫婦仲を訊かれ、家出の可能性を示唆される。

納得のいかない康は、今度は結婚して離れて暮らす息子に連絡を取るが、過去の「女」が原因ではないかと指摘され、怒り出す。

だが、パートを辞めた原因、同僚たちの間でささやかれていた不穏な噂、そしてゴミ箱に捨てられていた謎の電話番号と、自分がよく知っていたはずのヨシ子の知らなかった事実に、康は戸惑いを隠せない。

そして第6話、舞台は康の職場へ。若い部下との何気ない昼休みの会話が、彼の無自覚な言動を容赦なくあぶり出していく。

「あんなに奥さんの悪口言ってたのに」

昼休みに康が屋上でくつろいでいると、部下の女性が声をかけてくる。

「このごろ元気ないし、具合でも悪いんですか?」

康が「妻がもう1週間も帰ってこない」と答えると、部下は「あんなに奥さんの悪口言ってたのに、心配なんですね」などと言う。

康が不審そうに「悪口なんて言ってたか?」と聞き返すと、部下は「ボケてるとか、飯がまずいとか、頭が悪いとか、ババアだとか、無職だとか――」と平然と答える。

康は慌てて、「宇野君〜、それはないよ〜」と取り繕うが、逆に「それはないよ〜はないですよ〜」と切り返されてしまう。さらにダメ押しの「あんなこと言われてたら、私だったら別れますね」にしどろもどろ。

覚えていないのか、ばつが悪いのか、自分に言い聞かせるように「大丈夫だ、妻にはそんなこと、言ったことない」とは口にするものの、部下はさらに追い詰める。

「じゃ…、あの話も?」

良き夫として振る舞っていたつもりが、部下から「私なら別れる」などと言われ、動揺を隠しきれない。ほころびを指摘されても、康はそれでもなお「いい夫婦だった」と言い切れるのか。

◇出版元オーバーラップの担当編集者によれば、読者は、漫画の登場人物の誰かに感情移入しながら読んでおり、とくに40代女性から「ヨシ子は、自分の母親を見ているようでつらい」と言われることが多かったという。

「つらい」と感じるのは、つねに家族を優先し、自分のことは二の次にしてきたヨシ子の生き方が、報われないものだと感じたからだろう。

だがそうした「つらい母親」は、過去のものになりつつあるかもしれない。

実は離婚件数は2000年半ばごろをピークに減少傾向にあるというのに、50代、60代の離婚の割合だけは増えているという。かつての「家族優先」「耐える」母親を見てきた娘たちは、もはや我慢はせずに、自ら選択するようになってきたのだろうか。

【前話を読む】優等生ヅマが「男性客とのよからぬ噂?」スーツケースも貴重品も持たずに消えたツマの残した意外なモノ