小学校の卒業式での袴着用がブームになっている。和装業界に詳しい神戸大学大学院の吉田満梨教授によると、着物の着用機会が減り続ける中、袴着用ブームは和装業界から働きかけたわけではなく自然発生的に広がった慣習だという。

【映像】小学校の卒業式で袴着用(実際の様子)

 小さい子どもが着るとなると様々な問題も出てくるが、吉田教授は「これをいい機会として業界側も工夫をしたらいいのではないか」と語る。一方で業界側としてはビジネス構造上の壁もあるそうだ。

 ニュース番組『わたしとニュース』では、卒業袴ブームにおける和装業界のジレンマや今後の展開について、お笑いコンビ・たんぽぽの白鳥久美子とともに深掘りした。

■業者は消極的?価格や学校側の懸念は「改善の手掛かり」に

 「着物の着用機会自体は、1970年代くらいから減り続けている。(小学校卒業式での袴の着用は)文化的な体験の機会としてもすごく貴重な機会だと思うし、すごく良いこと」(吉田教授、以下同)

一方で、価格や、着付けの大変さ、転倒・締め付けによる体調不良等の学校側の懸念など、着用に伴う課題はいくつか挙げられている。しかし、こうした課題はむしろ改善の手掛かりになるという。

「着物は素材によって価格が全然違うので、手軽なものを選ぶことはできる。小さいお子さんが着付けがしにくいのであれば、きれいな着付けができて、かつ着やすくて直しやすいみたいなものづくりの工夫はあり得る。いかに業界側の方が(懸念や批判を)うまく活かす形で、より良い提案をしていくのかに繋がっていくと本当はすごくいい」

 毎年必ず行われる卒業式は大きなビジネスチャンスにも思えるが、子ども向けの着やすい着物の分野には、和装の大手チェーンが積極的に参入していない実情がある。その理由とは何か。

「着付け自体はサービス提供の一つなので、ヘアセットなども必要。きれいに着せてあげるというところがパッケージになっているので、そもそも簡単に着ることに対する事業者側のインセンティブが少ない」

 着付けやヘアセットまで含めてビジネスとなるため、簡単に着られる着物は利益を生みづらいというジレンマがあるようだ。しかし、今後、消費者のニーズに応える事業者が増えてくれば、市場も盛り上がり、状況も変わるのではないかという。

「今、小学校の袴の和装需要に対応されているのは割と新しいレンタル会社。提供されるところが増えてきて適度な競争関係が生まれると、差別化をして、さらにお客さんに対してより良い価値を提供しようというところが出てくる。かわいいけども気軽に着られるものなどは実現可能だと思う」

■簡易な着物はダメ?「着物警察」とは

 簡易な袴に大手の参入が少ない背景には「着付けまでがセットのビジネス」という構造に加え、「伝統」も影響しているのではないか。

 昔からの伝統や決まりごとがある和装について、白鳥は周囲の話を交えて次のように明かした。

「私くらいの年齢になると、着物を着たいという女性が増えてくる。でもやり始めると、いろいろなお作法というか、この柄はこの季節におかしいとか、そういうのをわからないまま着ると、街に溢れている“着物警察”と呼ばれる方に目をつけられてしまう。『あなたのその着方違うわよ』と。そうなるとハードルが高くて着られないと、40、50代の周りの女性たちとよく喋っている」(白鳥、以下同)

「ただ楽しく着たいと思っていたのに、着物警察にチクっと注意されてやめてしまうという方が結構いる。昔の人は普段着として着ていたんだし、その感覚で着たいなとは思うんですけど」

 様々な課題がある中で、TPOに応じて格式高い礼装から簡略化された装いまで柔軟に選択するなど、互いの歩み寄りが必要になりそうだ。

「まずは簡単なところから始めていって、いろいろなことを学んで、ちゃんとした着付けが自分でできるようになる、そのぐらいの入り口でもいいと思う」

(『わたしとニュース』より)