この記事をまとめると

■一部のタイヤでは車体の左右どちらに装着するかが決まっているものがある

■点対称ではないトレッドパターンのタイヤは左右入れ替えて装着することができない

■タイヤは設計どおりに使ってこそ本来の性能を発揮する

装着する向きが決まっているタイヤがある

 春になると、スタッドレスタイヤからサマータイヤへ交換する作業が必須。タイヤがホイールに組み込んである状態であれば、DIYでタイヤ交換をしようというユーザーも少なくないだろう。その際に気を付けてほしいのは、一部のタイヤにおいては、車体の左右どちらに装着するかが決まっていることだ。

「何をいっているんだ、タイヤというのは前後左右を入れ替えるローテーションをすることで寿命が長くなると自動車学校で教わったぞ」と反発したくなるかもしれない。

 ここでポイントとなるのは、トレッドパターンと呼ばれるタイヤ表面の模様だ。レース用のスリックタイヤでもない限り、タイヤごとに独自デザインのトレッドパターンが与えられており、そのデザインによって排水性や静音効果などを実現している。

 しかしながら、多くのタイヤにおいて表面のトレッドパターンは点対称デザインが基本となっている。点対称というのは180度回転させると模様が同じになるという意味である。たとえば、右前のタイヤを左後ろにローテーションしたとしても車体側から見たときのトレッドパターンは変わらない。つまりトレッドパターンに由来する性能については自由にローテーションしても変わらない。

 一方、主に排水性を考慮すると、点対称ではなく回転方向が指定されたトレッドパターンを採用することがある。この場合、右前に装着されていたタイヤを左後ろにローテーションするとトレッドパターンが反対になってしまうため、想定どおりの排水性を発揮できない。せっかくの性能をスポイルしてしまう。

 こうした回転方向が指定されたタイヤの場合、前後を入れ替えるカタチでのローテーションは可能だが、左右を入れ替えるのはNGとなる。

設計通りに装着してこそタイヤはその機能を発揮する

 そうはいっても、「回転方向が指定されたタイヤの識別はどうすればいいのか?」と思う人もいるだろう。ご存じの方も多いだろうが、回転方向が指定されたタイヤの場合、サイドウォール部に「ROTATION」という文字と回転方向を示す矢印が刻印されている。矢印の向きが前進時に正しい方向になるよう装着すれば問題ない。回転方向に指定がなくとも、外側と内側の向きが決まっているタイヤも存在している。こうしたタイヤではサイドウォールに「OUTSIDE」、「INSIDE」という文字が刻印され、外側と内側を示している。

 これはタイヤをホイールに組み込む際に気を付けるべきものであって、そうした作業はプロショップなどに依頼しているだろうから、ユーザーはさほど気にしなくていいだろう。もちろん、新しくタイヤをセットしてもらったときには、それぞれのタイヤが正しくホイールに組み込まれているかは確認したいが……。

 なお、ホイールへ組み込む向きが決まっているタイヤにおいては、前後左右を入れ替えるようなローテーションをするのは問題ない。あくまでローテーションにおいて気にすべきは回転方向指定の有無といえる。

 昔話になるが、回転方向指定タイヤが登場したばかりの頃、後輪駆動のクルマにおいて「リヤタイヤは指定どおりに組み込み、フロントタイヤは回転方向と逆にすると性能が上がる」という都市伝説めいた話もあった。

 リヤタイヤは前に進むための駆動する力を受け止めることが重要なのに対して、フロントタイヤはブレーキングの負担が大きいので指定された回転方向と逆にすると性能が上がるといったロジックから生まれた話と記憶している。

 しかしながら、前述したように回転方向の指定がトレッドパターンに由来しているものであれば、とくに排水性において悪化する方向になってしまうし、パターンノイズも大きくなる可能性が高い。回転方向指定タイヤのを逆にセットするのは百害あって一利なし。本当に注意してほしい。

 また、季節の変わり目にタイヤを交換する際には、タイヤ空気圧もしっかりと指定値に調整することも忘れずに行いたい。タイヤのことを単なる「黒くて丸いゴムの塊」と認識しているかもしれないが、設計どおりに使ってこそ機能を発揮する重要な部品なのである。