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滋賀県大津市の条例案が波紋広げる…

 滋賀県大津市は、2年連続で全国最多となった待機児童解消のため、保育士と幼稚園の先生を一本化して人材確保する方針ですが、それに伴い幼稚園の先生の給与が“実質的に下がる”ことになるという条例案が波紋を広げています。

【画像で見る】「教育保育職」で給与水準が統一されると幼稚園教諭の給与は…

 揺れる就学前教育の現場を取材しました。

なぜ?幼稚園教諭の実質的な“賃下げ”

 【SNS上でのコメントより】
 「未来ある子どもにお金かけられないの、なんでなん」
 「働いている方を馬鹿にしている」

 2月下旬から、SNS上でこんなコメントが相次いでいます。物議を醸しているのが…

 (大津市 佐藤健司市長)「教育保育職の創設に伴う、幼稚園教諭の給与月額の見直しなど、それぞれ行うものであります」

 2月19日、滋賀県の大津市議会に提出された条例案。公立幼稚園教諭の給与を、水準の低い保育士の給与にあわせるという、実質的な“賃下げ案”です。

 (幼稚園児の保護者)「幼稚園の先生になる方が減ってしまうのは困る」
 (大津市民)「目指している方向がどこなのかわからない」

 いったいなぜ、幼稚園教諭の“賃下げ案”が浮上したのか。背景には、大津市の子育て政策をめぐる、ある事情がありました。

背景に「深刻な待機児童問題」

 大津市にある民間の保育園。0歳から6歳まで、140人以上の園児が通っています。

 (保護者)「保育園に預けないと仕事に行けないのですごく助かっています」

 一方で、こんな声も…

 (保護者)
 「待機児童が結構いると言われた」
 「3人目が0歳なんですけど、3人目をいれるのが待機児童でどうなるかという感じ」

 大津市で深刻な待機児童問題。

 全国の自治体の9割近くで、待機児童が「ゼロ」のなか、大津市は132人(2025年)で2年連続で最多。全国で唯一、100人を超えています。

子育て世代の流入で保育園のニーズが高い

 その要因とされるのが、「子育て世代の流入」です。

 大津市は、地価が比較的手ごろで、京都や大阪へのアクセスがよいことなどから、20代後半から30代前半の子育て世代が流入していて、0歳から預けられる保育園のニーズが高まっています。

 春の時点で、ほとんどのクラスに空きがないという保育園で話を聞くと…

 (保育園の園長)「預かりたくても預かれない状況がある。全体的に先生が足りないのが大きな原因です」

 保育の質を保つため、保育士一人あたりがみられる園児の数は、国の基準などで決まっています。

 今以上に子どもを預かるには保育士を増やす必要がありますが、確保が難しい状況が続いています。

幼稚園教諭と保育士を「教育保育職」として一本化 しかし…

 そこで、“保育士不足”を解消しようと市が打ち出したのが「教育保育職」の導入です。

 これまで別々に採用していた幼稚園教諭と保育士を「教育保育職」として一本化することで、比較的余裕のある幼稚園からひっ迫してる保育園へ、柔軟に職員を配置できるようにしようというのです。

 しかし…

 「教育保育職」の導入にあたり、幼稚園教諭の給与を保育士の水準にあわせることに、幼稚園教諭らが所属する労働組合からは見直しを求める声があがっています。

 (滋賀県教職員組合 松崎有純執行委員)「幼稚園の先生だけ(賃金が)下がることにかなり不安と不満もあります。大津の幼稚園はどうなっていくんだろうと不安がとても大きかったんです。強引な形で進めていくのに憤りがある」

 大津市の場合、保育士は「行政職」で、初任給は大卒・短大卒にかかわらず、一律で22万円。

 幼稚園教諭は、小学校の先生などと同じ「教育職」で、初任給は大卒の場合、約24万円でその差は最大2万円近くあります(※金額は2025年4月実績)。

 しかし、「教育保育職」の導入で給与水準が統一されると、幼稚園の教諭の初任給は大卒で1万円近く引き下げられるのです。

 労働組合の試算では、勤続12年で年収が最大40万円以上減るとしていて、人材確保のための方策が、逆に人材の流出をまねきかねないと懸念しています。

 (滋賀県教職員組合 松崎有純執行委員)「柔軟な人員配置というなら、安心して働ける環境があってこその人員配置。そこが揺らいでいるのが本当に残念です」

「仕事として認められていないと感じて、退職を考えなければいいのになと」

 今回の「給与改定」は、すでに働いている職員も対象になります。

 こちらの公立幼稚園では、14人の教諭の大半が、“賃下げ”になる可能性があるといいます。

 3月末で定年退職する園長は、後輩たちの今後を心配しています。

 (大津市立平野幼稚園 井上真矢子園長)「子どものためと思うから一生懸命頑張りたい人ばかり。ぎりぎりのところで一生懸命頑張って仕事をしている。仕事として認められていないと職員が感じることで、退職を考えなければいいのになと願っています」

 ほかの公立幼稚園で働く教諭は、実質的な“賃下げ”によりモチベーションが下がることはないとしつつも、複雑な思いを持っています。

 (現役・幼稚園教諭)「大津市として就学前の教育を大事に思っていないのかな。だから幼稚園の先生の給料を下げるのかな。不信感を抱きました」

 市は実質的に“賃下げ”となる現役幼稚園教諭について、今年3月時点の給与水準を保障し、減った分は補てんするとしています。

 早ければ、3月25日の市議会で採決されることになる“賃下げ案”。大津市の子育て政策はどこに向かうのでしょうか。

(2026年3月20日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)