矮小銀河でスターバースト銀河で腕1本の渦巻銀河 ハッブル宇宙望遠鏡が観測した「NGC 178」
こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)が観測した矮小銀河「NGC 178」。くじら座の方向、約6700万光年先にあります。

ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によれば、直径約4万光年という小さなサイズであるにもかかわらず、内部では平均して約2年で太陽1個分の質量を消費するほどの星形成活動が起きています。このことから、NGC 178は「スターバースト銀河」(爆発的に星が形成されている銀河)に分類されています。
一方で、NGC 178は「マゼラン渦巻銀河」に分類されることもあります。マゼラン渦巻銀河とは、天の川銀河の衛星銀河(伴銀河)である「大マゼラン雲(LMC: Large Magellanic Cloud)」にちなんで名付けられた分類で、一般的に1本の渦巻腕を持つ矮小な銀河を指します。
矮小銀河であり、スターバースト銀河であり、マゼラン渦巻銀河でもあるNGC 178は、銀河の分類が単なる渦巻や楕円といった形態に収まらない、多様なものであることを教えてくれます。近年の研究では、NGC 178の中心部が二重になっているなどの特異な構造が報告されており、活発な星形成は過去に別の銀河と衝突・合体したことで引き起こされたのではないかとも考えられています。
誤りがもたらした“2回の発見”のエピソード
ESAはこの銀河の発見をめぐる興味深い歴史にも言及しています。NGC 178というカタログ名は、もともと1885年にこの銀河を発見したアメリカの天文学者Ormond Stoneの観測記録にもとづいて命名されたのですが、このときStoneは誤って天体の位置(具体的には赤経)を本来とは異なる座標で記録していました。
それから7年後の1892年、今度はフランスの天文学者Stéphane Javelleが同じ銀河を発見しました。ところが、当時のカタログにはその位置に該当する天体がなかったため、Javelleは未知の新しい銀河を発見したと考えて、「IC 39」という新たなカタログ名で記録することになったのです。
Stoneが誤って記録した座標は後にアメリカの天文学者Herbert Howeによって修正されましたが、「NGC 178」と「IC 39」が全く同じ天体であることに天文学者たちが気がつくのは、さらに後年のことでした。宇宙に無数に存在する銀河のひとつであるNGC 178には、かつての天文学者たちの試行錯誤の歴史が刻まれているのです。
冒頭の画像はHSTにかつて搭載されていた「WFPC2(広域惑星カメラ2)」のデータを使って作成されたもので、ESA/Hubbleから2017年8月21日付で公開されました。
本記事は2019年4月1日公開の記事を再構成したものです。
文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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