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トラックとして使われていたAタイプ

英国のヴォグゾール本社と連絡を重ね、ニュージーランドのウォルター・スコット氏は、本家のワークスマシンと同様の改良をYタイプへ加え続けた。1912年には南島のブライトンビーチで、時速68マイル(約109.4km/h)の最高速記録を残している。

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その年末に、彼は新しいヴォグゾールを購入し、Yタイプは翌年に売却される。だが丁寧に乗り継がれ、レースを競いつつ、100年以上が経った今も生き抜いているという。現在は、このブランドへ詳しいジャック・ニューウェル氏が維持している。


ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908〜1915年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

他方、今回の1910年式ヴォグゾール 20HP Aタイプの現オーナーは、アレックス・ヘイワード氏。初期の歴史は不明ながら、50年ほど前にニューウェルらによって発見されている。クライストチャーチの農場でトラックとして使われ、状態は酷かったらしい。

しばらくそのままの状態で保管されるが、1990年代に入ると、ヴォグゾールを得意とする英国のアリスデア・ロックハート氏の元へ。再起の道を進み始めた。

ワークス仕様のYタイプ・ボディを忠実に再現

14年前にヘイワードが購入した時点で、シャシーは概ねレストアされ、ドライブトレインは8割ほど残っていた。公道への復帰が目指されたが、課題は山積みだった。1910年に作られたボディは、完全に失われていた。

そこで、ワークス仕様のYタイプへ架装されたスポーツレーサー・ボディを忠実に再現したのが、英国のウェスタン・コーチワークス社。当時の詳細なスケッチを入手し、コンピュータを活用し設計され、アルミ板と木材のアッシュ材で仕上げられた。


ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908〜1915年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

作業にはオーナーの息子、オーランド・ヘイワード氏も協力。ホワイト&ポッペ社製キャブレターの調整システムまで、見事に作り込まれている。

ほぼオリジナルと呼べる、ウッドスポーク・ホイールのセンターキャップには、ヴォグゾールのロゴ。手掘りで丁寧に刻まれている。ウォルター・スコットのYタイプへ敬意を表すため、ラジエターには同じ「V」のペイントが施されている。

上下左右が逆さまのHパターン・ゲート

無駄のない端正なボディは、シャシーへ充分低くマウントされているが、ダッシュボードが載るスカットルは低い。走り出せば、上半身へ盛大に風が当たる。世界初のスポーツカーと呼べるヴォグゾールを運転することなど、滅多にない機会だろう。

サイドバルブの4気筒エンジンを始動するには、まず4本のシリンダーへ僅かにガソリンを注がなければならない。だがその後は、クランキングさせてマグネトーをオンにし、再びクランキングすれば勢い良く目覚める。アイドリングの回転数は、かなり高い。


ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908〜1915年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

エグゾーストから、低い唸りが放たれる。高度な潤滑システムにより、エンジンオイルの燃焼は少なく、排気ガスはほぼ透明。アクセルペダルは、左側のクラッチと、右側のブレーキの間にあるボタン状のもの。発進時は、深く踏む必要がある。

シフトレバーは、露出したHパターンのゲートから伸びる。現代のものとは上下左右が逆さまで、1速が右側の手前だ。コーンクラッチの割に、滑らかに繋がる。トルクが太く、ニュートラルで一息つくダブルクラッチを挟めば、意欲的に速度上昇していける。

1910年代には公道の王者 主力ブランドの原点

ステアリングホイールのリムは太く、遊びは驚くほど少ない。ショートレシオで、切り始めから反応は素早い。70km/hでの巡航は余裕。1日中運転できそうに思える。

サスペンションにダンパーはなく、アスファルトのうねりや大きな凹凸で、ボディは不規則に揺れる。オーナーのヘイワードは、オリジナルのリーフスプリングを調整すれば、落ち着きを高められると考えている。


ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908〜1915年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ブレーキペダルを踏み込んでも、減速は穏やか。交差点が見えたら、右腕でブレーキレバーへ力を込め続ける必要がある。それでも、ビンテージカーの運転は素晴らしい体験だと実感する。この20HPは、1910年代には公道の王者といって良かったはず。

技術者のローレンス・ポメロイ氏の才能が、いかんなく発揮されている。ヴォグゾールは、1925年にアメリカのゼネラル・モーターズへ買収されるが、すぐに主力ブランドへ登り詰めた。その基礎を築いたのは、この美しいAタイプに他ならない。

協力:アレックス・ヘイワード氏、オーランド・ヘイワード氏、ニック・ポートウェイ氏、ベテラン&ヴィンテージ・ヴォクスホール・レジスター、デイビッド・カーク氏

ヴォグゾール 20HP Aタイプ(1908〜1915年/英国仕様)のスペック

英国価格:420ポンド(新車時/シャシーのみ)/10万ポンド(約2100万円)以下(現在)
生産数:約1000台
全長:3990mm
全幅:1680mm
全高:−mm
最高速度:97km/h
0-97km/h加速:−秒
燃費:8.9km/L(予想)
CO2排出量:−g/km
車両重量:−kg
パワートレイン:直列4気筒3054cc 自然吸気 サイドバルブ
使用燃料:ガソリン
最高出力:40ps
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:4速マニュアル/後輪駆動


ヴォグゾール 20HP Aタイプ(Yタイプ・ワークスマシン・レプリカ/1908〜1915年)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)