フジテレビ

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フジは泥沼の中

 フジテレビの視聴率が低迷を続けている。5つの民放在京キー局のうち、昨年度まで9年連続で4位。今年度の4位も決定的。テレビ東京が5位だが、会社規模が全く違う。しかも新年度が始まる4月以降のフジは視聴率がより落ち込んでしまう恐れがある。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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 フジは4月にかなり大きな改編を行う。それにより、さらに視聴率を落とす危険性があるという声が社内外にある。この改編は大きな賭けだ。

 まず民放5局の視聴率を見てみたい。2024年から今年までの2月最終週の週間個人視聴率である。世帯視聴率はもう各局、スポンサーともに気に留めていない。前の数字が民放のドル箱であるプライム帯(午後7時〜同11時)、後の数字が全日帯である。(ビデオリサーチ調べ、関東地区)

【2024年】
日本テレビ 5.6% 3.6%
テレビ朝日 4.8% 3.5%
TBS 4.3% 2.7%
テレビ東京 2.8% 1.2%
フジテレビ 3.1% 2.2%

【2025年】
日本テレビ 5.1% 3.5%
テレビ朝日 5.2% 3.5%
TBS 4.7% 2.9%
テレビ東京 2.4% 1.0%
フジテレビ 3.3% 2.1%

【2026年】
日本テレビ 4.7% 3.4%
テレビ朝日 5.5% 3.6%
TBS 4.8% 2.9%
テレビ東京 2.6% 1.1%
フジテレビ 3.1% 2.1%

 3強(日テレ、テレ朝、TBS)2弱(テレ東、フジ)の構図が定着しつつある。だが、フジには2弱の立場に甘んじてはいられない事情がある。

フジテレビ

 テレ東はコンパクト経営(社員数約800人、系列局数計6)だから、低視聴率でもやっていけるのだ。しかしフジの会社規模(同約1150人、同計28)はそれ以外の3局並み。現在の視聴率では極めて苦しい。

 社員数が多いと、人件費が嵩む。系列局が多ければネット料の負担が大きくなる。ネット料とは系列局に番組を流してもらう代わりに支払う補助金である。

 視聴率の高低はCM売上高に直結する。「もう視聴率は関係ない」という声があるが、悪質なデマである。試しにCM売上高を見てみたい。昨年度のフジは人権侵害問題の影響を受けたため、2023年度のものにした。

 日テレが1位で約2193億円、テレ朝が2位で約1666億円、TBSが3位で約1594億円、テレ東が5位で約695億円、フジは4位で約1473億円。

 ほぼ個人視聴率の順番どおりに並ぶ。日テレのCM売上高が突出しているのは40代以下の個人視聴率であるコア視聴率が高いから。コアはCMの単価が高い。尺度は違えど、やはり民放経営のカギを握るのは視聴率しかないのである。

 ちなみに人権侵害問題でCMが一時期激減した昨年度のフジのCM売上高は約1238億円で、やはり4位。3位のTBSは約1636億円だったから、差がかなり開いた。

 TVerの広告収入もあるものの、各局ともCM売上高の10〜20分の1以下に過ぎない。TVerはその制度や仕組みから、売上高がCMに迫ったり、並んだりすることは将来的にもあり得ないのだ。

危険な改編

 フジの賭けである4月改編での一番大きな変化は平日午前帯の情報番組「サン! シャイン」(平日午前8時14分〜9時50分)が終了すること。後続の新番組はなく、代わりに早朝帯の情報番組「めざましテレビ」(平日午前5時25分〜8時14分)を午前9時まで拡大する。同番組は実に約3時間半の長時間となる。午前9時以降は、現在午前9時50分から放送している生活情報番組「ノンストップ!」を前倒にして放送する。

 ここまで広げるほど「めざましテレビ」は強いのかというと、確かに2014年までは無敵だった。同番組のメインである第2部(午前6時10〜8時)は年間平均世帯視聴率が、6年連続で同時間帯のトップ。2018年度にも第2部がトップを獲った。フジの虎の子のような番組だった。

 もっとも最近は様相が異なる。早朝帯情報番組の2月27日の個人視聴率を見てみたい。各番組のメイン時間帯で比較すると、トップはテレビ朝日「グッド!モーニング」(午前7時台)の5.0%。2位は日本テレビ「ZIP!」(午前6時54分以降)の4.5%。フジテレビ「めざましテレビ」(第2部)は4.2%で3位だった。4位はTBS「THE TIME,」(午前7時台)の2.6%。この視聴率と順位は連日そう大きくは違わない。「めざましテレビ」はかつてほど強くないのだ。

 1994年に始まった「めざましテレビ」は、遊び心に満ちた「めざましじゃんけん」などを採り入れ、さらにエンタメ情報をふんだんに流した。それまでの早朝帯情報番組は出勤時のサラリーマン向けだったから、画期的だった。

 フジは早朝帯が長年の弱点だったが、「めざましテレビ」はジリジリと視聴率を上げ、トップグループに入った。特に早朝帯情報番組のターゲットから外されていた10代や女性の人気は絶大だった。この番組を開発したのは報道番組部の大エースだった鈴木克明氏(67)。現在はSTARTO ENTERTAINMENTの代表である。

 しかし、他局にヒット番組が生まれると、真似るのが民放の常。他局も早朝帯情報番組に遊び心やエンタメ情報の紹介を採り入れた。このため、「めざましテレビ」は王座を保てなくなった。今は再浮上を狙う時期である。

 そんな番組を拡大し、はたして他局に勝てるのだろうか。早朝帯情報番組と午前帯情報番組では特性が異なるのだ。第一、終了する「サン! シャイン」の成績はそう悪くはないのである。

 同番組の個人視聴率は2.5%前後であり、平日午前帯の番組で3位。トップのテレ朝「羽鳥慎一モーニングショー」(平日午前8時)は5%以上だが、2位の日テレ「DayDay.」(同午前9時)は3%程度なのでそう差はない。TBS「ラヴィット!」(同8時)は2%以下だから、かなり上回っている。「サン! シャイン」は始まってから、まだ1年。リニューアル程度で十分だったのではないか。

「サン! シャイン」終了と「めざましテレビ」拡大の背景にはおそらく制作費削減の意図がある。新番組をつくらず、既存番組の拡大なら、人件費や機材費、美術費などの大幅な節約になる。フジの昨年度の制作費は約710億円。TBSは973億円だから、200億円以上も差があるのだ。視聴率が振るわないので、新年度はもっと差が開くのは確実である。

 フジは平日午前帯をあまり重視していないように見えてしまうが、帯番組はオセロゲームの4角のようなもの。これを押さえないと他局には絶対に勝てない。なぜかというと、帯番組が各視聴者のホームポジションとなり、そのチャンネルを中心に番組選びをするからだ。

 たとえばフジの第1期黄金時代(1982年〜93年)には、昼の帯番組「笑っていいとも!」(1982〜2014年)や平日夕方の帯ニュース番組「FNNスーパータイム」(1984〜1997年)が滅法強かった。

 現在の2強のうち、テレ朝は「羽鳥慎一モーニングショー」と「大下容子ワイド!スクランブル」(平日午前10時25分)が他局を引き離してトップ。日テレは「news every.」(平日午後3時50分)がトップなのだ。

 一方、フジの午後の帯番組は全部弱い。「ぽかぽか」(平日午前11時50分)が4位、関西テレビ(大阪)制作の「旬感LIVE とれたてっ!」(同午後1時50分)は5位、「Live News イット!」(平日午後3時45分)は4位。これでは勝てない。

日枝色一掃がカギ

 そもそもフジは鈴木克明氏のような優秀な人材をどうして手放してしまったのか。それも低迷の理由だ。他局社員からも「社長間違いなし」と言われていた人だが、専務止まりで、系列局に出てしまった。フジ関係者に聞くと、昨年まで約30年も同局に君臨した日枝久元会長(88)に堂々と物を言い、嫌われたからだという。

 日枝氏の色、発想を社内から完全に払拭しないと、フジの再浮上はないだろう。その発想とは好き嫌いで決めているとしか思えない人事、組織批判を受け入れようとしないところなどである。凋落していったほかの昭和型企業の体質と通じる。

 批判記事も大嫌い。不振期なのだから誉められるほうが不自然なのだが、他局がやらない奇手を使ってでも評価されようとする。社内外からの批判に耳を塞ぐ組織が変われるはずがない。

 その一方で希望もある。「古畑任三郎」(2006年)や「HERO」(2001年)など数々のヒット作をつくった石原隆氏(65)が昨年、系列制作会社・共同テレビの社長に就任したことである。

 石原氏も日枝支配期にフジ本体から外された。ドラマとは無縁の系列会社に行かされた。日枝支配のままだったら、共テレの社長就任はなかっただろう。

 やはり昨年からフジの編成と制作を統括する鈴木吉弘執行役員(57)も「ガリレオ」(2007年)などを制作したヒットメーカー。石原氏とは師弟関係にある。鈴木氏は日枝氏直系の上司と衝突し、1度は退社した人。惜しいと思った石原氏が会社に掛け合い、復社させた。

 日枝支配下で1度はドロップアウトさせられた石原氏と鈴木氏。2人やほかの優秀な人材が存分に力を発揮できる組織に変身したら、フジは復活できるに違いない。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。前放送批評懇談会出版編集委員。

デイリー新潮編集部