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 平穏な日常を送っていたはずなのに、半年前に向かいへ引っ越してきた「非常識な若夫婦」によって日々の生活を変えられてしまった自営業の樋口さん(仮名・39歳)。
 今回は、樋口さんが明かしてくれた、斬新な”対抗措置”についてレポートします。

◆お向かいの非常識な車のとめかた

 樋口さんの自宅前の道路は、道幅わずか4メートルの一方通行です。本来なら、お互いの譲り合いがあってこそ円滑な通行が保たれるはずの場所でした。ところが、向かいの若い夫は、広々としたガレージがあるにもかかわらず、平然と路上に車を放置し始めたそうです。

「確信犯なんですよ。タイヤの端っこだけ自分の敷地に引っ掛けて、『公道を塞いでいるわけじゃない』というポーズだけはとっている。

 でも、4メートルしかない道に1.8メートル近い車幅のミニバンが停まれば、実質的な有効幅員は2メートルちょっと。他の車は、サイドミラーをこすらないよう死ぬ思いで徐行して通り抜けていました」

 樋口さんにとって最も深刻だったのは、自身のガレージからの出庫です。

「私の車を出す際、向かいの車が邪魔で、何度も何度も切り返しを強いられるんです。朝の忙しい時間帯にこれをやられると、本当に腹が立ちますよ。一度、耐えかねて本人に『邪魔なので移動してもらえませんか』と言いに行ったことがありました。

 でも、『あー、はいはい』と、何ら悪びれた様子も見せず、面倒くさそうに数メートルだけ前後にずらすだけ。あの時の何食わぬ顔が、どうしても許せなかったんです」

◆目には目を、歯には歯を

 それ以来、樋口さんの胸の中では怒りの炎がくすぶり続けました。

 自治体や警察への相談も考えましたが、決定的な証拠や法的拘束力の弱さを考えると、解決には時間がかかると判断したのです。そんなある日、いつものように堂々と居座る迷惑駐車を見下ろしていた樋口さんの脳裏に、一つの「作戦」が浮かびました。

「ちょうどいい具合に、向かいの車が私の家の正面ギリギリに停まっていたんです。私は自分の家の敷地境界線ギリギリの路上に、家族の自転車2台を縦列に並べて置いてやりました。これで、道路の有効幅員はさらに数十センチ削られました」

 その光景は、まさに「すり抜け不可能な関門」でした。大型の普通乗用車が通るには、数センチ単位の精密な操縦を要求される極限状態。樋口さんは2階の自室のカーテンの隙間から、階下で起きるであろう「ドラマ」をじっと観察し始めました。

「性格が悪いと思われるかもしれませんが、それまでの半年間のストレスを考えれば、これくらい当然だと思っていました。あえて『通れるか通れないか』の絶妙なラインを攻めたんです。罠を張った狩人のような気分で、じっと獲物を待っていました」

◆響き渡る破壊音、そして夜逃げの暴走

 仕掛けをしてから数時間後、その瞬間が訪れました。一台の普通乗用車が徐行せずに通り抜けようとしたのです。運転手は直前で違和感に気づいたのか、停車してサイドミラーを電動でたたみ込みました。

「いける、と思ったんでしょうね。ミラーを畳んだ状態で、ゆっくりと向かいの車と私の自転車の間に鼻先を突っ込みました。ところが、運転手は見落としていたんです。向かいの男の車が、ミラーを畳んでいないことに」

「ガリッ、メキメキッ!」

 静かな住宅街に、乾いた破壊音が響き渡りました。すり抜けようとした車が、迷惑駐車車両の右サイドミラーを正面から捉えたのです。

「スローモーションのように見えました。向かいの車のドアミラーは、根元から無残にバキッと折れ、配線だけでぶら下がって揺れていました。ガラスも粉々に散らばって……。驚いたのはその直後です。当てた方の車は、一瞬止まったかと思うと、パニックになったのか猛スピードでアクセルを踏み込んで、そのまま一方通行の出口へと逃走してしまったんです。まさに当て逃げの瞬間を目撃しました」