Photo: 中川真知子

2026年1月21日〜23日にかけて行なわれた『ライブ・エンターテイメント EXPO』に足を運んできました。業界関係者のための商談展なので、普段見られないような面白いアイテムとの出会いがないか期待して。

そしたらありましたよ、見たこともないUFOみたいなスピーカーが。

こちらは、株式会社エヌエスイーの「WRAPSOUN(ラプソン)」というスピーカーです。

screenshot via WRAPSOUN
WRAPSOUN・スピーカはラウンドアレー方式を開発し低音のスピーカユニットを使わずにサークル状に並んだスピーカユニットの中心部の空気に疎密波を発生させ、ボックスの直径に匹敵する低音域が再生様に設計、豊かでキレが有る低音を試聴いただけます。この様なスピーカはWRAPSOUNしかありません。──オフィシャルサイト「技術紹介」より

なぜこの形なのかを尋ねると、返ってきたのは「こういう音を作ろうと考えたら、この形になった」という答えでした。

WRAPSOUNは、音を反射させて広げるのではなく、複数の音を空間で合成する発想から設計されています。そのため、向きや置き方を変えても音の印象がほとんど変わらない。「屋外で百メートル離れても、どこから鳴っているかわからない」そうで、これは少し誇張に聞こえるかもしれませんが、実際に体験すると納得する人が多いそうです。

screenshot via WRAPSOUN
WRAPSOUNスピーカは完全密閉型スピーカシステムです。筐体・(スピーカボックス)の振動・定在波・高調波を起こさないよう設計され、スピーカに入力した音を忠実に再現。低音のスピーカを使用していませんが、低音は中心に集めた音波を合成し低音を再生しています。これに過渡特性に優れ、インパルス応答もとても速い製品です。その性能でバレエなどテンポを正確に刻まなければいけない演目には最適なスピーカです。──オフィシャルサイト「メリット」より

私も会場でちょっとだけ体験させてもらったのですが、周囲がざわついていたし、音が反響できる要素が多すぎたのであまりよくわかりませんでした。

体育館のような場所だと、「どこで鳴っているかわからない」という不思議な体験ができたみたい。

見た目から連想して、Amazon Echoのような球体スピーカーと同じような仕組みなのかと思ったのですが、まったく別物なんですって。一般的なスピーカーは反射で音を拡散しますが、WRAPSOUNは音そのものを合成して放射します。

screenshot via WRAPSOUN
ラプソン・スピーカシステムは1台で3D立体音の再現を行う事ができます。ステレオ録音された音であれば、サラウンドシステムを凌ぐ3D立体音で再生でき、どの場所でも臨場感ある音を視聴することができます。 WRAPSOUN・スピーカは、ハウリングを起こしにくい性能があり、スピーカの前でも マイクの使用することができます。──オフィシャルサイト「音響性能」より

そして取材で最も印象的だったのが、「このスピーカー、楽器として使われているんです」という一言でした。ピアニストの角野隼人氏は、WRAPSOUNをグランドピアノの音を損なわずに拡声させるために、演奏システムの一部として使用したそうです。拡声装置ではなく、音楽を成立させるための要素として。「これじゃなきゃダメだ」と言われたという話は、この装置の立ち位置を端的に物語っています。

楽器として成立する理由は、スピーカー自身の音色を極力主張しない点にあります。一般的なスピーカーは、筐体の共鳴やユニット構成によって固有の“スピーカーの音”が乗りますが、WRAPSOUNはそれがなく、楽器なら楽器の、声なら声の響きが、そのまま空間に立ち上がる。音楽家ほど、その違いを敏感に感じ取るのだそうです。

Photo: 中川真知子
暗い背景の中にひっそりと置かれた「ラプソン」はSF映画に出てくる装置みたいな雰囲気を醸し出していました。

WRAPSOUNは、音を「再生する」装置というより、音が空間に生まれるプロセスを担う道具とカテゴライズされるのかも。私がこれまで出会ったことがなかったのも、一般的なスピーカーとしての使われ方をしていなかったからなのかもしれません。

Source: WRAPSOUN

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