この家にはいられない…年収560万円・実家暮らしで〈資産6,000万円〉を達成した43歳独身会社員。正月早々、行くあてもなく街をうろつくワケ
経済的な理由や合理的な判断から、実家暮らしを選ぶ人は決して少なくありません。固定費を抑えやすく、貯蓄や資産形成につなげやすいというメリットもあります。一方で、「独り立ちしてこそ一人前」という価値観はいまなお根強く残っているようで……。見ていきましょう。
43歳会社員、正月に実家から“逃げ出す”ワケ
なかなか休めない会社員にとって、長期連休のお正月は大きな楽しみです。けれど、会社員のAさん(43歳)にとっては、そうとも言い切れません。理由は単純。 毎年1月2日、親戚一同が実家に集まるからです。
Aさんは、生まれてから一度も実家を出たことがありません。朝食と夕食は何も言わずとも用意され、年金暮らしの70代両親との関係も良好です。
現在の年収は560万円。家には月5万円(ボーナス時10万円)を入れていますが、一人暮らしをして家賃・光熱費を払えば、その倍はかかるでしょう。この「固定費が圧倒的に少ない」環境を生かし、Aさんは早い段階から資産形成に取り組んできました。
派手な投資をしたわけではなく、毎月の貯蓄とインデックス型の積立投資を淡々と続けてきただけ。それでも、43歳にして資産は6,000万円を突破したのです。
「これも全部、実家にい続けたからだと思っています」
Aさんはそう言います。もし一人暮らしをしていたら、日々の生活に追われ、果たして投資をしようという心の余裕があっただろうか--答えはNOでした。
そんなAさんが、実家にいたくないと感じる瞬間があります。それが、親戚を前にしたときです。毎年お正月、家に集まってくるのは母方の親戚たち。Aさんにはいとこが3人いますが、全員が結婚して子どもを持っています。Aさんの弟もまた、妻子を連れて帰省してきます。
Aさん自身、甥っ子や姪っ子にお年玉を用意し、にこやかに対応していました。しかし、2年ほど前、ちょっとした事件が。それを機に、Aさんは「1月2日は家から逃げる」と心に決めたのです。
自分は“一人前じゃない”のか?
Aさんのいとこの一人は、長いあいだAさんと同じく独身でした。正月に顔を合わせるたび、「自分だけが特別じゃない」そんな安心感があったといいます。ところが、そのいとこも結婚。その年の正月、いとこが冗談めかして言いました。
「次はAくんの番だね」
すると、別の親戚が続けます。
「お母さんをあまり心配させちゃだめよ」
その直後、母が慌てるように口を挟みました。
「うちはね、下の息子がちゃんとしてるから。別にいいのよ」
フォローだったのだと思います。場の空気を和らげようとした、母なりの配慮だったのでしょう。
けれど、その言葉は、Aさんの胸に引っかかりました。
――自分も、“ちゃんとしている”つもりだけど。
仕事は真面目に続けている。家にお金を入れており、いざというときは親に渡す資産もある。親を買い物や病院に連れていくこともあるし、将来、介護が必要になれば自分が担うつもりでいる。それでも独身で実家暮らしというだけで、一人前とは見られないのか……。そう思うとどっと疲れてしまったのです。
それ以来、Aさんは1月2日には家を空けるようになりました。映画を観に行ったり、カフェで時間をつぶしたり。親戚が帰ったころになると母から「みんな帰ったよ」とLINE。それを合図に、そそくさと家に戻るのです。
実家暮らしは当たり前の選択肢だが……
実家暮らしは、いまや珍しい選択ではありません。物価上昇や賃金の伸び悩みを考えれば、合理的な判断でもあります。
実際、「LIFULL HOME'S「『実家暮らし』に関する調査(2025年)」によれば、実家暮らしの割合は20代では37.7%と一人暮らしを上回る結果に。30代・40代でも約3割を占めています。Aさんの場合も、実家暮らしが6,000万円という資産形成につながったのも事実です。
「このままいけば生涯1億円も見えると思います。でも、お正月が来るたびに憂鬱になるのも、ちょっとね。予定があるって言って外に出て、時間をつぶして。だからといって、この1日のために一人暮らしをするのもな……そう思いながら決断できないでいます」
実家にいることは間違いではない。けれど、“普通”という物差しで測られる場所に、居続けることのしんどさ。Aさんはその狭間で、いまも揺れています。
【参考】
LIFULL HOME'S「『実家暮らし』に関する調査」(2025年5月22日)
