目の健康のために、どういった行動をすべきなのか。眼科医の栗原大智さんは「例えば、よく言われるブルーベリーには視力が改善する根拠はない。また、ブルーライトカットのメガネは子供が常用すると、近視リスクを高める恐れがある」という――。(第1回)

※本稿は、栗原大智『眼科専門医が教える最新知識 スマホ時代の「眼」のメンテナンス』(高橋書店)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/n-s-d
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/n-s-d

■Q.緑を見ると視力は改善する?

答えは…×
緑を見ると心が落ち着くかもしれないが、視力が改善することはまれ

「遠くの緑を見ると視力が上がる」

いつから言われるようになったかは分かりませんが、これを「緑色を見ると視力が上がる」と記憶している人がいます。たしかに、緑色は目に優しい色とされていて、目にかかる負担が少ないと考えられます。

そのため、目の疲れによって視力が一時的に下がっている方は、緑色を見ると疲れが取れて、見え方が良くなるかもしれません。しかし、緑を見ても視力が良くなるというわけではありません。大事なのは遠くの景色をぼーっと眺めることです。

昔は遠くの景色に緑色の木々が多かったので、そこに「緑」というフレーズが加わったのでしょう。ところで、患者さんから「どれくらい遠くを、どれくらいの頻度で見れば良いのか分からない」と言われることがよくあります。

僕の外来では、「20分に1回、20秒間、20フィート(約6m)離れたところを見るようにしましょう」と説明しています。これは20‐20‐20ルールと言って、アメリカ眼科学会も推奨している方法です。

『眼科専門医が教える最新知識 スマホ時代の「眼」のメンテナンス』より

連続して20分間デジタル端末の画面を見たり、文章を読んだりしたら、20フィート(約6m)離れたところを20秒間見るというものです。

日常生活で意識しないと20分はすぐに過ぎてしまいます。目の疲れを自覚している方はこの20‐20‐20ルールを取り入れて、定期的に目を休ませる時間を作りましょう。

■Q.ブルーベリーで視力は改善する?

答えは…△
視力が改善することはほとんどなく、効果があっても目の疲れが取れたり、暗いところで目が慣れやすくなったりする程度

「ブルーベリーが目に良い」という話を信じている方には残念なお知らせです。

栗原大智『眼科専門医が教える最新知識 スマホ時代の「眼」のメンテナンス』(高橋書店

実は「ブルーベリーに含まれるアントシアニンが視力を改善する」という科学的な根拠はあまりありません。目の疲れが軽減するか、暗いところで目が慣れるまでの時間(いわゆる「暗順応時間」)が多少短縮されるかもしれないというくらいが実際の効果です。

そもそも、ブルーベリーが目に良いと言われ始めたのは、第二次世界大戦中です。当時のイギリス空軍が敵軍をかく乱させるため、「毎日、アントシアニンという成分が豊富なブルーベリーを食べているから、私たちは夜も目がよく見える」というニセ情報を流した、と言われています。

この情報が正しいとしても、目の疲れが軽減したから、よく見えただけかもしれません。いずれにせよ、残念ながらブルーベリーで視力が改善するという根拠はありません。

■そもそも眼精疲労の原因がどこにあるか

もちろん、目の健康に意識が向くことは良いことだと思いますが、目の疲れの原因はスマホなどの近くの見すぎや、ドライアイ、老眼などさまざまです。

写真=iStock.com/Laikwunfai
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僕はブルーベリーをせっせと食べるより、まずはスマホの電源を切り、そして目を閉じてゆっくり休めたほうが良いと思います。

また、ブルーベリーが目に良いと信じて、ブルーベリージャムを食べている方がいます。しかし、ジャムの食べすぎは糖尿病リスクを高める恐れがあるため注意が必要です。

僕は「他のフルーツを食べたり、お菓子を食べたりするくらいならブルーベリーのほうが良い」と患者さんにお伝えしています。ちなみに、アントシアニンはブルーベリーの他に、カシスや黒ゴマ、ナス、紫イモなどにも含まれています。

そのため、それらの食品を食べている人は、そもそも無理にブルーベリーを食べる必要はありません。

〈眼科医のつぶやき〉
アントシアニンはポリフェノールの一種で、ロドプシンという網膜にある物質の再合成を促すことは事実です。なおイギリス軍のデマは「ビタミンAが豊富なニンジン」だったという説もあります。謎が多い情報ですね。

■目を守るためにはブルーライトカットメガネが有効?

答えは…△
効果は限定的で、場合によっては悪影響になる

そもそもブルーライトは、目で見える波長の電磁波(可視光線)の一部(波長380〜500ナノメートル前後の青系成分)で、太陽光や電球から出る光にも含まれます。

『眼科専門医が教える最新知識 スマホ時代の「眼」のメンテナンス』より

近年、パソコンやスマホなどの液晶画面から出るブルーライトが目に悪影響を及ぼすといわれ、ブルーライトカットメガネが普及してきました。

しかし、ブルーライトカットメガネの効果は思ったよりも限定的。むしろ、子供に関しては悪影響の恐れがあります。日本眼科学会をはじめとする各学会が共同でこの声明を出した際には、ネット上で大きく話題になりました。

これには大きく4つの理由があります。

■子供にはブルーライトが必要なタイミングも

1.スマホ画面からのブルーライトは網膜に障害を起こす危険性が低い

スマホから出るブルーライトは、実は曇りの日や窓からの自然光よりも少なく、網膜に障害を生じることはないレベルです。

2.子供はブルーライトカットメガネをかけて外で遊ばないほうが良い

必要な太陽光が不足すると子供の近視進行のリスクが高まる恐れがあります。ブルーライトだけでなく太陽光を遮断する点で危険性を否定できません。

3.ブルーライトカットメガネが眼精疲労を軽減する根拠はない

最新の米国一流科学誌「AJO」に掲載されたランダム化比較試験では、「眼精疲労を軽減する効果が全くない」と報告されています。

4.ブルーライトカットメガネは就寝前だけでOK

ブルーライトは体内時計を乱し睡眠の質を下げる恐れがあり、寝る前2〜3時間にはかけるメリットがありますが、日中に装用するメリットはなさそうです。

このように特に子供に関しては、ブルーライトカットメガネは悪影響の恐れがあるので、新たにメガネを作る際は通常のレンズのほうが安心です。

〈眼科医のつぶやき〉
ブルーライトカットメガネを寝る前に使うことにはメリットがあるので、僕は帰宅してお風呂に入ったらかけ替えています。仕事用のメガネは長持ちするし、ブルーライトカットの効果もあるので一石二鳥です。

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栗原 大智(くりはら・だいち)
眼科医
2017年、横浜市立大学医学部卒業。済生会横浜市南部病院にて初期研修修了。2019年、横浜市立大学眼科学教室に入局。日々の診察の傍らライターとしても活動しており、m3や日経メディカルなどでも連載中。「視界の質=Quality of vision(QOV)」を下げないため、診察はもちろん、SNSなどを通じて眼科関連の情報発信の重要性を感じ、日々情報発信にも努めている。資格:日本眼科学会専門医
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(眼科医 栗原 大智)