『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』©2024 PARAMOUNT PICTURES.

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 トム・クルーズ、パンツ一丁で怒りの説教! 「インターネットやめろ!」 ……簡単に言うと本作『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(2025年)はそういう話である。

参考:ポム・クレメンティエフ、『ミッション:インポッシブル』とトム・クルーズから学んだこと

 『ミッション:インポッシブル』は、凄腕スパイのイーサン・ハント(トム・クルーズ)が、不可能な任務に挑む人気シリーズだ。今回はシリーズ完結編とも言われる集大成であり、前作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング』(2023年)の直接の続編でもある。しかし前作は、間違いなくシリーズで最も風呂敷を広げまくった映画であり、最も混乱した映画であった。

 まず敵が悪のAIだ。これまでもいろんな敵と戦ってきたイーサンだが、相手があまりにもサイバーすぎる。そのうえ、極悪AI“エンティティ”は自我を持ち、世界中のインターネットを支配できるという。出てくる映画を間違えているというか、ほとんど『攻殻機動隊』とか『マトリックス』(1999年)の敵である。普通の人間が頑張ってどうにかなる相手ではない。

 そしてトムクルさんの映画作りの姿勢もエスカレートしすぎていた。トムクルさんは最初にアクションシーンを作り、そのあとで物語を補完していくという。いわば“アクションありきの映画作り”をやっているわけで、つぎはぎ気味の話になってしまうのは当然なのだ。6作目の『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018年)でも、細部に思いを馳せると「?」となる箇所があり、予告のシーンがまるっと消えるなど、不可解な部分はあった。『デッドレコニング』はそのあたりのバランスが大きく崩壊。過去作で最も謎の多い映画になってしまった。そして本作『ファイナル・レコニング』も、なんとジャパンプレミアの3日前に完成したことが明らかにされている。

 デカすぎる風呂敷に、無茶すぎる制作方法。いろいろと限界が見えていた。しかし、トムクルさんはやり切った。もちろん『ファイナルレコニング』には短所もある。単純に上映時間が長いことや、例によって話が相変わらず混乱気味などなど……。一方で、これらを補うだけの長所もある。それこそがトムクルさん、御年62歳の肉体言語だ。身ひとつの頑張りにある。

 もはやシリーズ名物と化した超絶スタントだが、今回も大変な無茶をしている。中盤の大規模な水中撮影も迫力が伝わるものになっているが、やはり白眉はクライマックスの飛行機チェイスだろう。命綱をつけているとはいえ、「死ぬって」と思わざるを得ない。高所恐怖症の人なら直視できないシーンが連発する。

 だが、個人的にこれらの強烈なスタント以上に注目したいのが、トムクルさんの脱ぎっぷりの良さだ。本作のトムクルさんは、とにかく脱ぐ。往年の井出らっきょ、もしくは原田泰造くらい脱ぐ。オープニングでもシャツが脱げ気味だが、中盤は物語の都合上、北極圏なのにパンツ一丁になっている時間が非常に長い。「62歳でこんなにパンツ一丁になれるだろうか?」そう胸に手を当てて考えたくなることだろう。そんな飾らない姿のトムクルさんに、悪のAIを崇拝する悪漢が襲い掛かる。するとトムクルさんはパンツ一丁で悪漢を蹴りながら叫ぶのだ。「お前はSNSのやりすぎだ!」。劇場では笑いが起き、同時に、このたったひと言のツッコミで、AIによる人類の破滅という巨大すぎる話の風呂敷が急速に縮んだ。結局のところ「インターネットのやりすぎには注意しましょう!」が本作のテーマなのである。ひと笑いをとり、風呂敷を畳み、なおかつメッセージを叩きつける。3つの動作を同時にやっているこのシーンこそ、本作の裏のクライマックスと言っていいかもしれない。

 ハリウッドスターになっても、62歳になっても、ひと笑いのためにパンイチになれる男。それこそがトム・クルーズなのだ。とはいえ、本作は大変な苦労のすえに完成したことは想像に難くない。劇中、イーサンが仲間たちに「とにかく前進するしかない!」とガンギマリの目で吠えるシーンは、演技の領域を超え、映画人トム・クルーズの本音としか思えなかった。大きな仕事は、ひとまず片付いた。良い形に落ち着いた。さすがのトムクルさんとて、お疲れモードだと思う。しばらくはゆっくり休んでほしい。そう思っていたら、『トップガン』のシリーズ第3弾をやるという噂が流れてきた。……トムっ!?

(文=加藤よしき)