選手層は着実に厚みを増している磐田。現在J2では3位につける。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 ジョン・ハッチンソン監督が率いるジュビロ磐田は、J2でここまで5勝1分け2敗で勝点16。首位のジェフユナイテッド千葉から勝点5差の3位につけている。

 J2に降格した今シーズン、エースだったジャーメイン良がサンフレッチェ広島に、センターバックの伊藤槙人が横浜FCに、そしてクラブの重鎮だったMF松本昌也が、シーズン開幕後にファジアーノ岡山へ移籍したが、恐れずに新しいアタッキングフットボールをトライしていくというハッチンソン監督の志は、新加入選手を含めたチーム全体に浸透しており、序盤戦の好成績にもつながっている。

「ジェットコースターのように結果も出たり出なかったりすると思うんですけど、いかに自分たちがチャレンジできるか」とハッチンソン監督が語るように、なかなか自分たちの思うような試合運びができないこともある。4月5日のモンテディオ山形戦はまさしくそれで、強風や相手の対策に影響を受けてか、相手コートでどんどん縦にさし込んでいくような攻撃ができなかった。

 指揮官も「ボールは落ち着いて回してはいたものの、相手に脅威を与えられなかった。チャレンジできなかったというところが残念です。攻撃に関しては平均的なパフォーマンスだった」と攻撃のマインドに問題があったことを指摘した一方で、ハイラインのコンパクトな守備が安定感を増し、第4節の1−3で敗れたアウェーのカターレ富山戦のような守備の崩れ方をしなくなっているのは、着実な進歩と言える。

“日々競争”をテーマに掲げる現在の磐田で、先述の共有という意味では徐々に選手層が厚くなってきており、ハッチンソン監督を良い意味で悩ませている。最大のホットゾーンは4−2−1−3のトップ下だ。アビスパ福岡から加入したFW佐藤凌我が、慣れないポジションでも強い意欲を見せて、開幕戦から4試合でスタメン起用された。

 しかし、アウェーでV・ファーレン長崎と富山に連敗を喫すると、ハッチンソン監督は三人のスタメン入れ替えを決断。キャプテンのGK川島永嗣から阿部航斗、守備の要だったリカルド・グラッサを上夷克典に変更し、トップ下は佐藤から大卒ルーキーの角昂志郎をスタメンに抜擢した。
 
 その期待に角も高い技術と判断能力で応えているが、佐藤は途中から試合の流れを引き寄せる“ゲームチェンジャー”として、全ての試合で投入されている。

 FWを本職とする佐藤が入ればシャドー、角なら中盤にも関われる攻撃的MFという明確な特長の違いもあるだけに、チームとしてのやり方は変えないなかでも、効果的なアクセントとなっている。

 もちろん「自分も負けないように、またスターティングイレブンに戻れるように頑張りたい」と語る佐藤としても、ベンチスタートに甘んじる気持ちは毛頭ないようだが、強いチームというのは各ポジションにレギュラークラスが二人以上はいるもので、その意味でも磐田の強みであることは間違いない。

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 左ウイングは名古屋グランパスから期限付き移籍で加入した倍井謙が、開幕戦から固定してスタメン起用されているが、ここに来て2年目の川粼一輝が台頭してきており、いつでもスタメンを奪いに行く気構えを見せながら、終盤の投入でチームの攻撃に迫力をもたらしている。

 その一方で、右ウイングは4アシストのジョルディ・クルークスが絶対的な“武器”として君臨しており、なかなか代え難い存在だ。1−0で勝利したホームの千葉戦では終盤に足をつりながら、すぐ立ち上がって全力疾走する熱い姿も見られたが、ハイプレスをベースとするチームで、31歳のクルークスを出ずっぱりにさせることは怪我のリスクを高めてしまうだろう。

 そんな状況で台頭してきたのが、アカデミーからトップ昇格した18歳のMF川合徳孟だ。富山戦や2−1で勝利した5節のヴァンフォーレ甲府戦でベンチ入りしながら出番はなかったが、ルヴァンカップ1回戦のFC大阪戦で右ウイングとして先発。厳しいアウェーの環境で奮闘すると、セカンドボールから鮮やかなシュートを突き刺して、プロ初ゴールが決勝点となった。そこから足をつりながらも90分に二種登録のMF石塚蓮歩と交代するまで走り抜き、ハッチンソン監督の評価を高めた。

 FC大阪戦の4日後に行なわれた千葉戦こそ、ベンチのまま出番はなかったが、アウェーの山形戦でFWマテウス・ペイショットに代わり、リーグ戦で初めてピッチに立つと、トップ下のポジションから、この試合でチームに足りなかったゴール前に潜っていく動きで山形ゴールを脅かした。
 
「出たポジションで、しっかり役割を果たしてチームに貢献できれば」と語る川合は、中盤から前であれば、どのポジションでも守備のハードワークと攻撃での違いを約束できる選手だ。もしリーグ戦でもウイングで投入されることがあれば、生粋のウインガーであるクルークスと同じ仕事はできないが、川合なりの関わり方で貢献できるだろう。

 前線は4得点のペイショットがクロスのフィニッシャーとしても、困った時のロングボールのターゲットマンという意味でも欠かせない存在だが、山形戦の終盤で見せたような佐藤と川合が縦に並ぶ形も有効なオプションになっていくかもしれない。

 渡邉りょうというFWのスペシャリストもいるが、裏抜けを得意とするストライカーの特長を現在のチームにうまく組み込めているとは言い難い。もちろんチームの戦術に合わせていくことも大事だが、FWというのは1つ結果を出せば周りが合わせてくれる役職でもある。「監督の信頼を勝ち取って、そこの時間を徐々に増やしてアピールしていくしかない」と語る渡邉の奮起に期待していきたいところだ。

 ボランチは中村駿と上原力也がリーグ戦のファーストセットになっているが、ルヴァン杯のFC大阪戦でスタメンだった新加入の金子大毅とブラジル人MFのレオ・ゴメスもハッチンソン監督の求めるタスクをこなせるようになってきている。中盤でボールを奪うだけでなく、ビルドアップや機を見た飛び出しでも存在感を見せるなど、今後の過密日程を乗り切る陣容が整いつつある。

 右サイドバックは長崎戦で負傷した川口尚紀に代わり、植村洋斗がスタメンに定着している。サイドバックのスペシャリストである川口の良さもあるが、インサイドでのロールも多いスタイルにあって、中盤とのポリバレントである植村の良さが試合を重ねるごとに出てきているのも確かだ。

 川口はすでにチーム練習に復帰しており、植村とのハイレベルな競争が予想される。もう一人の候補である西久保駿介はハッチンソン監督のフットボールを習得中だが、川口や植村にもない対人の強さがあるだけに、ビルドアップなどがある程度の水準に達してくれば、また指揮官の良い悩みを生む存在になりそうだ。

 左サイドバックはリーダーシップ・グループの一人でもある松原后が第一人者で、“松原ロール”とも言えるインサイドハーフのような立ち位置から、ウイングの内側を抜ける動きが磐田の攻撃の鍵になっている。

 その一方で、ウイングを本職とする為田大貴も徐々にフィットしてきており、FC大阪戦では同ポジションでスタメン出場、終盤にはセンターバックに回った西久保に代わり、右サイドで奮闘した。左サイドバックにおける自分の立ち位置を“見習い中”と自覚するが、豊富な経験があり、31歳という年齢でも貪欲に学ぶ姿勢は目を見張る。
 
 磐田にとって大一番となるのが、4月9日のルヴァン杯2回戦、ヤマハスタジアムに清水エスパルスを迎える静岡ダービーだ。植村も「誰が出るかまだ全然分からないですけど、ダービーというところで全員のモチベーションは高いと思いますし、ホームなので絶対に負けられない」と語るが、山形戦から中3日というタフな日程で、ハッチンソン監督はどういったメンバーで臨むのか。

 ルヴァン杯であろうと“ダービーはダービー”という声も多くあるはずで、両者の立場に関係なく意地とプライドをかけた戦いになるが、負けたら終わりのカップ戦で先に繋げるという意味でも勝利は大きい。

 FC大阪戦でキャプテンマークを巻いたGK三浦龍輝をはじめ、チャンスを得た選手が奮起して、ここで評価を高めた選手が今後のリーグ戦に絡んでいく。そうした好循環を先に続けていく意味でも大事なゲームになる。

取材・文●河治良幸