関東勢対決の決勝を制し、優勝した前橋育英。会場の国立には約6万人が詰めかけた。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 1月13日に第103回全国高校サッカー選手権大会の決勝戦が国立競技場で開催され、前橋育英(群馬)と流経大柏(千葉)が激突。前橋育英が1−1で突入したPK戦の末に激戦を制し、同じくファイナルで流経大柏を破った2017年度以来、2度目の優勝を果たした。

 今大会を振り返った際に、トピックの1つとして挙げられるのが、関東勢の躍進だ。ファイナリストになった両校に加え、東海大相模(神奈川)、明秀日立(茨城)、堀越(東京A)も準々決勝まで勝ち進み、ベスト8のうち5校が関東勢となった。

 その理由の1つとして、地の利は大きいだろう。選手権は1976年度の第55回大会から首都圏で開催されており、地方から参戦する学校に比べ、資金面や身体的な負担が少ないことは明白である。
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 それに関するところで、個人的に非常に印象に残っているのが、第101回大会を取材した際に、日体大柏(千葉)の根引謙介監督が発した言葉だ。

 当時オウイエ・ウイリアム(現・FC岐阜)らを擁し、初出場校を率いていた根引監督は、柏の葉で戦うホームアドバンテージも活かし、勝利を収めた後、地元での戦いに関して「自分のベッドで寝られるし、お母さんのご飯を食べながらリラックスして過ごせる」とメリットを伝えていた。

 確かにそうだ。高校生にとって、大会期間中も日常生活を送れることが、どれほど大きなメリットか。妙に、心の中にすっと入ってきた記憶がある。

 そんなことを思い出しながら、今大会でも複数の指揮官に開催地について尋ねてみた。まず、初出場で快進撃を起こした東海大相模の有馬信二監督だ。等々力の大声援を味方につけ、4強入りを決めた際、選手時代は東海大五(現・東海大福岡)の一員として選手権を戦った有馬監督は、次のように明かしてくれた。

「(声援は)相当なパワーになってますよね。一戦一戦多くなっているので。本当にありがたいです。僕は福岡の田舎者なので、こっちに来て、選手権に出てもホテルで移動ばっかりで、全然時間もストレスも溜まるばっかりでした。だけど、(東海大相模の)選手たちはリラックスできる時間が相当あると思うので、いいんじゃないかなと思います。ありがたいです。

 うちの選手は1泊しかしてないので。30日だけ(町田に)泊まって、初戦に入って、あとはもう家に帰っているので。一番美味しいお母さんのご飯を食べて、お風呂に入って、ゆっくりリラックスしてというのもいいんじゃないかなと思いますよね」

 では、現在進行形で福岡を拠点としている東福岡はどうか。同じく準々決勝の後、平岡道浩監督に質問すると、地元を離れて戦う苦労が分かる、率直な答えが返ってきた。

「今回は(準決勝までの間隔が)長いから一回、明日帰ります。しっかり調整してからまた入ってきたいなと。やっぱ帰りたいですね。福岡の飯、食べたいです。我々も2週間こっちにいますから。選手たちも家で落ち着いて過ごすのは絶対大事だと思うので、残らない選択肢を取りました」
 
 やはり“アウェーチーム”には相当なストレスが溜まるのだろう。地元で戦えるに越したことはないはずだ。そんななか、長崎総大附の定方敏和監督からは、長崎に最先端のスタジアム「PEACE STADIUM Connected by SoftBank」が誕生したことを念頭に、こんな興味深い発言が飛び出した。

「できれば、あそこのスタジアムで高校サッカー選手権の決勝戦だけでもさせていただければ、選手たちも励みになるし、より長崎のサッカーも上がってくるんじゃないかなと。ぜひ、させてください(笑)」

 静岡学園の川口修監督が問題提起した試合数の不平等(1回戦から戦うチームと2回戦からのチームがある)と同様に、この自然発生している“ホーム・アウェー”も、話を聞けば聞くほど違和感を覚える。

 ただ一方で、東京のど真ん中にある“聖地”のブランド力は健在だ。流経大柏の榎本雅大監督が「国立は高校サッカーの終着点」と表現したように、選手や指揮官が揃って国立への想いを口にしていたのも、非常に印象的だった。

取材・文●有園僚真(サッカーダイジェストWeb編集部)