通信基盤の大変革を狙う「IOWN」構想! 5G evolutionや6Gも視野に入れたその構想の野望と展望とは
●近未来の通信ネットワーク「IOWN」とは何か
みなさんは「IOWN」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。そもそもIOWNをどのように発音するのか分からないかも知れません。
IOWNは「アイオン」と読みます。
NTTドコモが推進する次世代の通信ネットワーク構想の中核となるもので、「Innovative Optical and Wireless Network」から、それぞれの単語の頭文字を取ったものです。
現在私たちは4G通信を主軸に5G通信も活用し始めていますが、NTTドコモはさらにその先の、5G evolutionや6Gといったモバイル通信技術の実用化に向けて動き出しています。
IOWNは、その5G evolutionや6Gといった通信技術の基盤となるネットワーク構想です。
Innovative Optical and Wireless Networkを直訳すると「革新的な光・無線ネットワーク」となりますが、IOWNはその名の通り、通信の大部分を光通信ネットワークのまま処理してしまおうという発想から始まっています。
例えば、現在も有線通信の基幹ネットワークは光ファイバーケーブルによる光通信(FTTH)が利用されています。
IOWNはではこれをさらに発展させ、通信ケーブルのみならず信号処理やCPU(プロセッサ)も光のまま処理する技術(シリコンフォトニクス)を研究しているのです。
IOWNとはフォトニクス技術を用いたネットワーク構想全般の総称と捉えても良い
●増大し続ける世界の通信量
なぜ情報を光のまま処理しなければならないのでしょうか。
それには、通信量の爆発的な増大が関係しています。
私たちが本格的にインターネットを利用し始めてから四半世紀が経とうとしていますが、当初はその通信量もあまり多くはありませんでした。
転機が訪れたのは2010年頃です。
一般人の間にスマートフォンが急速に普及しはじめ、さらにモバイル通信技術でも3G通信から4Gへと劇的な進化を遂げました。
その結果、通信量は個人単位でも社会全体でも指数関数的に増加し始めたのです。
世界における2010年の通信量の総量は2ZB(ゼタバイト)だったと言われていますが、これが2020年には25倍の50ZBへ増加しました。
それが、3年後の2025年には175ZBへと増加すると予想されています。
15年間で、実に90倍近くも増加する計算です。そして通信量増加の流れはますます加速していきます。
その加速に、現在の電気信号による処理技術では対応しきれなくなる未来が見えてきたのです。
通信処理を根本から変えなければならないときが来ている
●通信の大変革をもたらすIOWNの野望と展望
NTTドコモはIOWNによって、
・通信の電力効率を100倍に向上
・データ転送容量は125倍に向上
・End to Endでの通信遅延は200分の1に低減
このような目標を掲げています。
あまりにも高すぎる目標に感じられますが、IOWNにはそれだけのポテンシャルがあるということです。
仮にその目標に届かなかったとしても、その恩恵が多大なものとなることは容易に想像ができます。
前述のように、NTTドコモはIOWNを次世代通信技術のネットワーク基盤として活用することで、
5G evolutionや6Gを実現させようとしています。
5Gを超える大容量、低遅延、低消費電力の世界へ
現在の私たちは、「今以上に快適な通信環境など必要なのだろうか」と考えてしまうこともあります。
しかしながら、それは3Gや4Gが普及し始めたときも多くの人が同じように考えていました。
より快適な通信環境が整えば、それに合わせたサービスやコンテンツが誕生します。
3Gでは音楽のダウンロード配信や電子書籍が流行しました。
4Gでは音楽や動画のストリーミング配信が流行しました。
5Gでは大容量と低遅延を活かしたリアルタイムコミュニケーションに注目が集まり、メタバースが流行する兆しを見せ始めています。
世界のどこからでもシームレスなコミュニケーションが可能になりつつある
IOWNが見せるものは、単なる可能性ではありません。
光通信が私たちの生活や社会基盤を大変革させたように、IOWNは私たちの生活と社会基盤を再び大変革させようとしているのです。
次世代のモバイル通信技術である5G evolutionや6Gでさえ、IOWNを活用した通信技術の1つでしかないのかも知れません。
IOWN構想には、ソニーやIntel、NVIDIAといった錚々たるテクノロジー関連企業や通信関連企業が名前を連ねています。
業界や企業によってIOWNへ取り組む姿勢には若干の温度差があるものの、技術的な革新への流れでは一致しています。
「通信の次の10年」を創る基盤としてのIOWN。
私たちがその恩恵を実感するのは、ほんの少しだけ先の話になりそうです。
執筆 秋吉 健
みなさんは「IOWN」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。そもそもIOWNをどのように発音するのか分からないかも知れません。
IOWNは「アイオン」と読みます。
NTTドコモが推進する次世代の通信ネットワーク構想の中核となるもので、「Innovative Optical and Wireless Network」から、それぞれの単語の頭文字を取ったものです。
現在私たちは4G通信を主軸に5G通信も活用し始めていますが、NTTドコモはさらにその先の、5G evolutionや6Gといったモバイル通信技術の実用化に向けて動き出しています。
IOWNは、その5G evolutionや6Gといった通信技術の基盤となるネットワーク構想です。
Innovative Optical and Wireless Networkを直訳すると「革新的な光・無線ネットワーク」となりますが、IOWNはその名の通り、通信の大部分を光通信ネットワークのまま処理してしまおうという発想から始まっています。
例えば、現在も有線通信の基幹ネットワークは光ファイバーケーブルによる光通信(FTTH)が利用されています。
IOWNはではこれをさらに発展させ、通信ケーブルのみならず信号処理やCPU(プロセッサ)も光のまま処理する技術(シリコンフォトニクス)を研究しているのです。
IOWNとはフォトニクス技術を用いたネットワーク構想全般の総称と捉えても良い
●増大し続ける世界の通信量
なぜ情報を光のまま処理しなければならないのでしょうか。
それには、通信量の爆発的な増大が関係しています。
私たちが本格的にインターネットを利用し始めてから四半世紀が経とうとしていますが、当初はその通信量もあまり多くはありませんでした。
転機が訪れたのは2010年頃です。
一般人の間にスマートフォンが急速に普及しはじめ、さらにモバイル通信技術でも3G通信から4Gへと劇的な進化を遂げました。
その結果、通信量は個人単位でも社会全体でも指数関数的に増加し始めたのです。
世界における2010年の通信量の総量は2ZB(ゼタバイト)だったと言われていますが、これが2020年には25倍の50ZBへ増加しました。
それが、3年後の2025年には175ZBへと増加すると予想されています。
15年間で、実に90倍近くも増加する計算です。そして通信量増加の流れはますます加速していきます。
その加速に、現在の電気信号による処理技術では対応しきれなくなる未来が見えてきたのです。
通信処理を根本から変えなければならないときが来ている
●通信の大変革をもたらすIOWNの野望と展望
NTTドコモはIOWNによって、
・通信の電力効率を100倍に向上
・データ転送容量は125倍に向上
・End to Endでの通信遅延は200分の1に低減
このような目標を掲げています。
あまりにも高すぎる目標に感じられますが、IOWNにはそれだけのポテンシャルがあるということです。
仮にその目標に届かなかったとしても、その恩恵が多大なものとなることは容易に想像ができます。
前述のように、NTTドコモはIOWNを次世代通信技術のネットワーク基盤として活用することで、
5G evolutionや6Gを実現させようとしています。
5Gを超える大容量、低遅延、低消費電力の世界へ
現在の私たちは、「今以上に快適な通信環境など必要なのだろうか」と考えてしまうこともあります。
しかしながら、それは3Gや4Gが普及し始めたときも多くの人が同じように考えていました。
より快適な通信環境が整えば、それに合わせたサービスやコンテンツが誕生します。
3Gでは音楽のダウンロード配信や電子書籍が流行しました。
4Gでは音楽や動画のストリーミング配信が流行しました。
5Gでは大容量と低遅延を活かしたリアルタイムコミュニケーションに注目が集まり、メタバースが流行する兆しを見せ始めています。
世界のどこからでもシームレスなコミュニケーションが可能になりつつある
IOWNが見せるものは、単なる可能性ではありません。
光通信が私たちの生活や社会基盤を大変革させたように、IOWNは私たちの生活と社会基盤を再び大変革させようとしているのです。
次世代のモバイル通信技術である5G evolutionや6Gでさえ、IOWNを活用した通信技術の1つでしかないのかも知れません。
IOWN構想には、ソニーやIntel、NVIDIAといった錚々たるテクノロジー関連企業や通信関連企業が名前を連ねています。
業界や企業によってIOWNへ取り組む姿勢には若干の温度差があるものの、技術的な革新への流れでは一致しています。
「通信の次の10年」を創る基盤としてのIOWN。
私たちがその恩恵を実感するのは、ほんの少しだけ先の話になりそうです。
執筆 秋吉 健