自動車整備士不足が問題化! 重要な役割もなぜ志望者減? 低賃金も原因か
なぜ年々整備士が減っているのか。
クルマには車検や点検といった部分で整備士の存在が欠かせません。しかし、年々整備士の数が減少しているといいます。なぜ、自動車産業に重要な存在となる整備士が減っているのでしょうか。

自動車整備士は国家資格となり、タイヤ交換やオイル交換など基礎となる業務が可能な3級、さまざまな業務が可能な2級、高度な知識や技術を有する1級と分かれています。
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2020年1月に日本自動車整備振興会連合会が発表した「自動車分解整備業実態調査」の資料によると、整備士の数は2014年度が34万2486人、2015年度が33万9999人、2016年度が33万4655人、2017年度が33万6360人、2018年度が33万8438人、2019年度が33万6897人と、6年間で5589人も減少しています。
1年間でみると約1000人の整備士が減少している現状ということが分かります。また、整備要因の平均年齢は45.5歳と、高齢化が進んでいるようです。
一方で、整備工場の数は2014度が9万2135件、2015年度が9万2160件、2016年度が9万2061件、2017年度が9万2001件、2018年度が9万1883件、2019年度が9万1605件とほぼ横ばい状態となっています。
整備工場数は横ばいながら、整備士は減少かつ高齢化が進んでいるため、自動車整備業界の人手不足は年々深刻化しているといえます。
実際に、整備士を育成する自動車整備専門学校ではこの現状についてどのように感じているのでしょうか。
神奈川県の自動車整備専門学校の担当者は以下のように話します。
「年々整備士の数は減っており、実際勤務されている整備士の年齢層も高い傾向にあり事態はかなり深刻です。一方で整備士を志願する人は少ないと感じています。
当校では海外の留学生の受け入れもおこなっていて、定員100に対して日本人8割、留学生2割が現状となっています。
海外の留学生は、就職するときに国家資格が必要なことと就職率が高い点から選ぶケースが多いようです」
整備士の数の減少は、整備士の高齢化に加え、志願する若者が減ってきていることが関係しているようです。
最近では、「若者のクルマ離れ」といわれ久しいですが、クルマに携わる機会が少ないことから、クルマ業界で働きたいと希望する若者が少なくなっていると考えられます。
さらに、整備業界の企業で働く待遇も影響しているようです。前出の担当者は次のように説明しています。
「現状、給料や休みに関してこれでは人は応募するのを躊躇してしまうような企業は少なくありません。そういった企業では、技術や経験がないからと、サービス残業や給料が安いという考えを持っているところもあります。
こうした企業もあり、休みや給料面では場所によって大きくバラつきがあるため、待遇の改善は必要だと思っています。
ですが、年々整備士不足が話題となってから全体的な意識は変わりつつあるようにも感じています。
例えば、整備士でも給料を一般企業と同じくらいもらえる会社もあります。実際のところ、整備士業界では新卒で20万円ほどもらえる企業は、平均よりも少し高い企業といえるでしょう。
また、残業についても定時以降にはシステムを止めたり、セキュリティをかけて残業をさせない企業や、分単位で残業手当を支給する企業が増えています。
こうしたそれぞれの企業の意識の変化により、整備士の数はこれを機に増えてくるのではないかと思っています」
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実際にSNSでも整備士として働いている人が給料明細の写真をアップし、給料の低さについて投稿されている様子も見受けられます。
こうした待遇は、企業によっても異なるため、一概に整備士関係の企業が給料や休みが少ないというわけではありませんが、業界全体的に依然として待遇面で課題があることは否めません。
整備士を増やすための活動とは?
整備士不足が不足する昨今ですが、実際に整備士を増やすための取り組みとしてはどういったことが行われているのでしょうか。
前出の担当者は以下のように話します。
「整備士の志願者を少しでも増やすために、小中学校へのイベントの出展や職業体験をしてもらって少しでも認知してもらおうといった取り組みをおこなっています。
実際、整備士は、数万点から構成されるクルマという命に関わる機械を整備する仕事であるため、頭が良くないとできない仕事です。
そのため、こうした仕事や重要性を理解してほしいと思っています。
また、整備士のイメージとして、油にまみれて汚くてキツいといったマイナスな印象を持たれている人も多いかもしれません。
ですが、最近では、場所にもよりますがエアコンが完備され快適な空間での仕事ができる環境に変わりつつあります。
国家資格が必要な重要な仕事のひとつであるため、少しでも興味を持っていただければ嬉しいです」

また、最近ではハイブリッドカーやEV化が進んでいます。こういったクルマのさまざまな新しい技術にも対応していく必要があります。
こうした最新技術への学びの場について、前述の担当者は次のように話します。
「当校の場合は、新技術について教科書に掲載があれば授業内で解説をおこないますが、現在はハイブリッド以外細かい記載はされていないのが現状です。
ですが、新技術を学ぶ場所として、企業に出張セミナーを依頼しています。
企業セミナーでは、独自の最新メカニズムについて話をしてもらう場を設けています」
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クルマは年々最新技術が搭載され、みるみる進歩を続けていますが、そんな自動車業界を支える整備士を育成する学校でも、さまざまな工夫がなされているようです。
日本の基幹産業といえる自動車産業。2020年12月17日、日本自動車工業会の豊田会長は、新型コロナ禍で日本全体の就業者数が減少するなか、自動車業界は雇用を増やしている事実を訴えました。
そのなかで、自動車産業が生み出す雇用は550万人だといい、日本で働く10 人に1人が自動車産業に関わっていることになります。
国に納めている税金は15兆円かつ経済波及効果は2.5倍だとし、自動車生産が1増加すれば、全産業が2.5倍増加することになると説明しています。
そのなかで、整備士が属する部品を含め、その製造・販売・整備などに関わっているのは約237万人だといいます。
日本の自動車産業は加速する電動化により、さまざまな影響が予想されています。今後、整備士を含めて雇用問題がどのような展開を迎えるのか、注視すべき事案だといえます。
