コロナを押し出せ!8ヶ月前の「四股で封じる」から大きな進歩を見せた大相撲の、安心・安全を「楽しく追求する」工夫の巻。
一周遅れて大相撲が本気を出してきました!
振り返ること8ヶ月前。大相撲は「四股は邪悪なものを大地に封じる」と言い張っていました。その力強い姿勢と、恐れるものなど何もない角力に7割の感謝と2割の敬意を持ちつつ、残る1割では「は?」となっていました。四股を踏んでどうにかなるものならこんな話にはなっておらんわ…という正論を、ハッキリ言わないよう我慢することに懸命に努めたものです。誰にも封じることができないものなら、「今は無理」と言うのも「四股でなんとか」と言うのも、大した違いではないのですから。
しかし、大相撲は前へ前へと進んでいます。迎えた十一月場所、今場所も東京・両国国技館での開催となった大相撲は完全に仕上がっていました。じょじょに他競技・他イベントが緩み始めているなかで、大相撲は逆に締めてきた(まぁ締めて標準並みという話ではあるが…)。安心と安全のために、徹底した対策をとってきたのです。しかも要所要所を楽しく締めてくるという遊び心を込めて。実際に場所を観覧するなかで「もう、四股で封じるとか言い張ることはなさそうだな」「わかってくれて僕も嬉しい」「免許皆伝だ」と、その成長には目を細めるばかり。非常に安心して観戦することができました。
↓スローガンは「みんなでコロナを押し出そう」です!
アレですね、東京から他地域に押し出せってことですね!
了解です!電車道で行ってきます!
横綱2名が初日から在宅勤務を決め込み、大関陣も続々とリモートワークに切り替えていくという先進的職場・大相撲。「どうせ休むやつがいるだろうから、ちょっと早めに見に行こう」と千秋楽ではなく中日を選択したのに、5人いる横綱・大関がすでに1人になっていたのには、そろそろ大相撲ZOOM場所の開催も近いなと一本取られた気分です。たぶん白鵬と鶴竜なら、ZOOMでも華麗に押したり引いたりして、最後に鶴竜が力尽きて寄り切られるような相撲を演じることができるでしょう。横綱とはそれぐらいレベルが高い存在なのです。
上位陣がそんな出社状況ではあっても、お客様は活況です。今場所は入場制限も約50%まで緩和されたとあって、国技館前のにぎわいも心なしか上昇気配。もちろん相撲のお客様にはリスクが高めの方も多いですから、それぞれにソーシャルディスタンスの確保や手指消毒、マスク着用などにはまったく油断がありません。入場時にも整然と列を作り、無言の行進をつづけます。マナーという意味では満点級のものがあります。さすが、コロナ禍にあってもどうしても裸のデブがゴロンゴロンするところを見たいというお客さんたち。覚悟をもって徹底しています!
↓館内は50%まで入場制限が緩和され、かなりにぎわってきました!
↓マス席は通常4人座るところを、今場所からは2人で使う体制です!
たぶんもうこれでいいと思います!
あそこに4人いれるほうが無理がある!
人数が増えたと同時にお楽しみ要素も少しずつ戻ってきました。今回一番気持ちが明るくなったのは公式グッズの販売です。グッズというのは単なる日銭稼ぎではなく「思い出」です。そのときの楽しい気持ちを形として遺し、記憶を甦らせる鍵とするのです。この数場所は「1人で来いって言ってるくせに、なんで焼鳥の本数は増やすんだよ」と矛盾対応が評判の自家製焼鳥10本入り(多いよ…)や、ペラッペラのパンフレットくらいしか売り物がありませんでした。
しかし、今回はどうでしょう。くっだらないものからしょうもないものまで国技館にグッズがあふれています。出てないヤツのタオル、引退したヤツのアクリルスマホスタンド、出てないヤツの昇進記念グッズ、出てないヤツのハガキ、出てないヤツのウチワ(※夏用)、出てないヤツも大絶賛のカレーなど、さまざまなグッズが売店をにぎわせています。あぁ、いいなと思います。買うか買わないかはともかく、こういう光景が必要だなと思います。
↓なお、国技館でのお買いものには地域共通クーポンが使えますので観光にもピッタリ!
GoToのぶんでお土産が買えます!
そうした楽しい部分を守るためには、同時に安心と安全も守っていくことが必要です。そのために大相撲は断腸の思いで大きな決断をくだしました。何と、九月場所までは「これが大相撲のアイデンティティである」と断固として譲らなかった自席での飲食を、この十一月場所では不可としたのです。10本も入っている焼鳥を買わされたあとで「え?これ席には持ち込めないんすか?」と呆然とするお客様が出たとしても、断固としてやる。デブだけど飲食を禁ずる。そういう強い意志での決断です。
ここには大相撲が正しく現状を理解し、学んでいる様子がしっかりと示されています。感染を拡大させているのはやはり大人数での会食であろうという経験則は、大相撲にとっては不都合でしかありません。マス席でみんなで食事をしながら見るあの楽しさは、大相撲の楽しさの8割くらいを占めるものです(※土俵も見よう!)。しかし、より多くのお客様を迎えるにあたっては、そこを放置しては前に進めません。お客様をお迎えするのか、ご飯を食べたいのか、究極の二択で大相撲が選んだのはお客様だった。手にしたオニギリを泣きながら皿に戻す力士の姿が僕には見えます。よく我慢してくれました。
↓ご飲食は専用の飲食スペースもしくは、屋外テラスにてお願いします!
↓飲食スペースは窓を開け放して十分に外気を取り入れた空間です!
存分にお食事をお楽しみください!
コンコースは窓を全解放して外気と同じ状態として、そこでは飲食やグッズ購入を楽しめるようにする。そして、競技場内に入るときには改めて手指消毒を徹底し、場内での飲食などは不可とする。メリハリが効いた対策だなと思います。食べない前提であれば場内でマスクを外す必要性もありませんし、手指をクチに突っ込む機会もないでしょう。
特に手指消毒の徹底ぶりというのは立派なものでした。野球などでも消毒はさせられますが、入場ゲートでやったら終わりというパターンが基本線。しかし、大相撲では入場ゲート前の待機列を係員が巡回して消毒を徹底させたうえに、コンコースから競技場内に入るときにも改めて消毒、さらに携帯用の消毒液を配って必要に応じていつでもやれと要求してくるのです。「20メートルほど向こうで消毒したばかりですが…」と思いつつも、安心感はグッと高まるというもの。
しかもちょっと楽しいのが、消毒液のボトルには力士の写真が添えられており、入口によって写真が違っていたりするのです。電動の非接触型ボトルからピュッと出てくる消毒液と、ボトルの上に添えられた力士の写真。「なんだかオシッコかけられてるみたいだな…」と楽しくなってきます。いっそ写真ではなくボトルにカバーでもかぶせて、小便小僧みたいなデザインに仕上げてもいいかなと思ったほど。「わー、出た出た」「次、朝乃山行きましょう!」「すみませーん、炎鵬の小便小僧はどこですか?」とか言いながら消毒ツアーを楽しめるのではないかなと思いました。
ただ対策をするだけでなく、ちょっと楽しくする工夫が相撲らしいなと思います。どこか緩やかな心根というものが伝わってきます。消毒液にちょっと写真を添えるだけでも、話のタネに一回くらいやろうかという気持ちになるでしょう。特に対策なんていうのは、とどのつまりは「注意」や「制限」なわけですから、どうしてもギクシャクした気持ちになりがちです。そこをちょっと楽しくすることができたら、こうした暮らしを長くつづけることの苦労も和らぐでしょう。
たとえば、座席に貼りつける「この席は使用不可」という張り紙も、ちょっと工夫したら楽しくなるかもしれないじゃないですか。たまたまですが、僕が観覧した中日から大相撲はそのあたりでステップアップしておりまして、最初のほうは事件現場みたいなテープで「使用禁止」と書いていたものを、コワモテのキャラを起用して楽しい雰囲気にアップデートしたのです。
↓腕組みでにらみつける赤鷲さんが使用禁止の座席を守っています!
これは座れないし、何か映えてる!
思わず写真を撮ってしまうくらいに!
↓場内への注意喚起も呼出しが「NO!3密」などの懸賞旗を持ってまわってくれました!
これは思わず見てしまうし、聴いてしまう!
このひと手間があることで、楽しみながら気を付けられる!
こうした対策のもとで安心・安全な相撲観戦がしっかりと実現されていました。現在来日中のIOCバッハ会長にも、ぜひ東京五輪会場で行なわれている日本の国技を見てから帰途についてもらいたいものだなと思います。この国には今もスポーツがありますよと。お客様とともにスポーツがありますよと。もしかしたら欧州の人には「これがトンネルの向こうの光だ」と思えるかもしれないくらいに、安心・安全を追求しながら楽しんでいますよと。
ワクチンの登場など希望が持てるニュースもありますが、まだまだこうした日常はつづきます。もしかしたら「永遠」かもしれません。ただ、長くつづくのであればなおのこと楽しまないとやってられないというもの。対策そのものはだんだん洗練されてきましたが、それを楽しむことについてはまだまだ工夫の余地があります。誰かが思いついた工夫はみんなで積極的に取り入れて、どんどん楽しい工夫を積み上げていきたいものです。「この日常を楽しむ姿を世界の人に見せる」ことが、東京五輪開催都市の住民の課題なのかなとも思います。ぜひ相撲が考えた工夫も参考にしてみてください!
↓結び後の退場時には「場内プレゼント企画」を実施することで、楽しい規制退場もやってくれましたよ!
これはぜひほかの競技でもやっていただきたい!
↓大相撲の新たなアップデートについては、動画でまとめてありますのでご参照ください!
第2波、第3波で慣れていくんじゃなくアップデートしていく姿勢、いいじゃない!
頑張ってコロナを押し出していきましょう!
そろそろちゃんこも食べたいので、屋外で炊き出しを始めてください!
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