年金が…節税オタクの個人事業主が直面した「恐ろしい現実」

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本連載は、2017年2月24日刊行の書籍『どんどん貯まる個人事業主のカンタンお金管理』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋・再編集したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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「自己流でだましだまし申告をしていたツケが回ってきたのでしょう。税務調査でチェックされ、追徴金を取られまして…」

Bさんが、私の元に初めていらした際に明かしてくれたことです。

味の良さと、リーズナブルな価格、好印象な接客が人気のケーキ店を営むBさん。忙しくなると、お金の出入りが多くなる一方で、その管理や処理が後回しになりがちなのも多忙な個人事業主ならでは。Bさんに限らず、誰にでもつきまとうリスクでしょう。

ちなみに、「個人事業主なら、税務調査は入らない」と勘違いしている方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。

当時のBさんは個人事業主。とくに現金商売だと、突如、連絡もなく、調査の対象とされることもあります。

また、Bさんの場合は、単なるミスだったため、追加で払った税金はさほど多くなかったとはいえ、もしや「これぞ自営業の特権!」とばかりに、経費をどんどん水増ししていたとしたら…。

税金にまつわる知識がないと…(※写真はイメージです/PIXTA)

あまりに度が過ぎたことをやっていると、調査官は個人事業主とて容赦しません。ケースによっては、重加算税などのペナルティが課されることもあります。さらに、違法性はなくとも、節税に走り過ぎると、長期スパンで見ると思わぬ損失を被るリスクもありえます。

今回は、間違った狎畧妊タク瓩亡戮襪海箸覆、個人事業主が最低限、押さえておきたい税金の基本や考え方を解説していきます。

売上ゼロなのに…重くのしかかる「住民税」の負担

納税といえば、まずは「確定申告」が頭に思い浮かぶ方が多いのではないでしょうか。

その内容、ノウハウについては、おいおい解説していきますが、実は個人事業主が払う税金は所得税だけじゃないんです。

[図表]をご覧ください。

[図表]個人事業主の年間納税スケジュール※今後変更になる場合もあります。※地方税については、地域によって納付期限が異なります。

これは個人事業主に関わる税金納付のスケジュールを示したものです。日程は平成27年度分ですが、例年、大体同じ日程が期限となります。さらに、所得税と消費税について一定の基準に該当すると、表に挙げた納付期限前に、一部をあらかじめ前払いしなければなりません。

そう、事業を始めると、年中、なんらかの税金支払いに追いかけられかねないのです。

と、冒頭からウンザリするような話ばかりで恐縮ですが、とくに会社員を辞めたばかりの方にご注意いただきたいポイントがあります。

一つが、住民税の支払いです。

住民税については、前年の所得に対して課税され(所得割額と均等割額の合計で算出)、納付することになります。よって、辞める前年、いいお給料をもらっていた方は「こんなに払うの?」と、予想以上の出費に頭がクラクラしてしまうようなことも…。

さらに事業を始めたばかりで売上ゼロの状態でも、容赦なく支払い義務が生じ、年度内4回(6月末、8月末、10月末、翌年1月末)も納付期限がやってきます。

「開業時にコストをかけすぎない」ことをシツコく申し上げるのには、こうしたお金の準備も必要になるからです。

会社との折半だったのに…「社会保険料」という壁

二つ目が社会保険料(国民健康保険料)の支払いです。住民税同様、会社員時代は給与から天引きで、かつ会社との折半だったのが、独立したら全部自前で支払わねばなりません。

支払い方法は、毎月末の口座振替(手続きが必要)、納付書での支払いのほか、電子マネーのnanacoなどを利用する手もあります。納付書での支払いの場合、1年分を一括して支払うと、割引が受けられます。

ちなみに、住民税や社会保険料は、自治体によって額が異なります。詳しくは自治体のHPなどを参照しましょう。

「年金なんて払いたくない!」気持ちは理解するけど…

三つ目が、国民年金の支払いです。

「年金なんて、もらえるかわからないんだから…払いたくない!」という方に老婆心ながら助言申し上げます。

万一、障害を負って働けなくなった時のことを考えてみてください。実はその際に受けられる公的保障の障害年金も、国民年金の給付の一つとなるのです。そうでなくとも、サラリーマン時代ならもらえた傷病手当金(病気やケガによって働けなくなった際の生活保障)は、国民健康保険では受給できません。

後ろ盾のない個人事業主だからこそ、払うべきものはしっかり払っておくべし。ちなみに国民健康保険も国民年金も確定申告の際に「社会保険料控除」として、所得から差し引くことができます。

予測不能の売上に対し、狎廼癲椄銑瓩漏亮造砲かってきます。いざ納税時期になって、慌てることのないよう、先のスケジュールも頭に入れた上で、資金管理をするようにしましょう。

「またあの季節か〜」ブルーな気持ちになる時期は…

新しい年を迎え、お正月気分が落ち着いたころになると、「そろそろ、またあの季節か〜」と、ブルーな気持ちになる個人事業主の方は多いかもしれません。

そう、確定申告の季節到来です。毎年、早め早めに着手しようと思いつつ、「2月は逃げる」というように、あっという間に3月が到来。

「三日三晩、領収書の整理に追われ、締切の3月15日に税務署に駆け込んで、やっと間に合いました…」といったボヤキが聞かれるのも、3月の風物詩、犲営業あるある瓩任靴腓Δ。

徹夜状態となるのは自業自得としても、なぜこんなに大変なことになるのか。それは、日本の納税の仕組みが「申告納税制度」を基本とするゆえです。

つまり、自分自身で稼ぎを申告し、納税を決める。サラリーマン時代は会社がやってくれていたことを、自己責任のもと、やらねばならなくなるわけです。

何かと「ムズカシイ」イメージがつきまとう所得税

所得税のもう一つの特徴が「累進課税制度」といって、所得が高いほど税率が高くなることです。しかも、所得税の税率は年々、増税傾向にある。これも心しておきたい時代の流れです。

税率は以下の図表の通りですが、平成27年度には最高税率が45%にアップ。住民税を合計すると、所得の半分以上を持っていかれる計算です。

所得によって細かく税率が設定され、増税傾向にある所得税に対し、法人税は逆。減税傾向にあります。

とくに資本金1億円以下の中小法人の税率については、年間所得800万円以下の金額に対する税率が、平成24年4月以降、措置法により19%から15%に引き下げられています。

「個人事業主で所得が一定以上高くなってきたら、法人化したほうがトク」と言われているのは、こうした事情が背景にあります。また、所得と一口にいっても、10種類の区分があり、一定の所得については、税額の計算方法が異なります。

何かと「ムズカシイ」イメージがつきまとうかもしれませんが、これから長〜いお付き合いとなる所得税。まずは基本的な仕組みを知り、少しずつ仲良くしていきましょう。

所得税はどうやって計算するのか

まずは、所得税はどうやって計算するのか見ていきましょう。大きくは次のような4ステップになります。

ステップ1 収入(売上)を出す

ステップ2 必要経費を引いて、所得金額を計算する

ステップ3 所得から差し引くことができる金額(所得控除)を出し、課税所得を算出

ステップ4 税率をかけ、納付税額を出す

これを計算式にすると、

●収入(売上) −経費=所得

●所得−各種控除=課税所得

●課税所得×所得税率=納付税額

の3つ。改めて見ると、意外にシンプルだと思いませんか。

そして、頭に叩き込むべきは、適切かつ賢く納税額を減らすには、必要経費や控除額をいかに漏れなく差し引くかがポイントということ。これが、サラリーマン時代との大きな違い。つまり、自助努力で税金を減らすことも可能ということです。

節税のため所得を低く見積もっていると…まさか事態に

「では、できるだけ経費を入れて、所得を減らせばOKということ?」

もちろん、適切かつ賢く節税をするのは結構なことですが、あくまでも”適切”ということが重要です。脱税に重いペナルティが待っているのはもちろん、”行き過ぎた節税”は、トクになるどころか、結果的に大きな損失を招きかねないのです。

たとえば、あなたが交通事故に遭って、入院しなければならなくなったとします。当然、その間、仕事はできません。傷病手当ももらえない個人事業主にとっては死活問題ですが、相手に完全過失があるならば、相手側の自動車保険で休業補償の請求が可能です。

「お金がもらえるなら、せっかくだからたまには休もう!」

となれば理想的ですが、注意したいのは、その支給額の基準となるのが、前年の所得ということです。つまり、”節税ありき”で、あまりに所得を低く見積もっていると、こうした万一の補償も十分に得られないリスクがつきまとうのです。

節税という”良薬”も度が過ぎれば”劇薬”になりかねない

また、事業年度末の12月になって、

「予想以上に利益が多く出て、税金の負担が重くなりそう…」

といった際に、「少額減価償却資産(30万円未満)の一括償却」を活用する手があります。減価償却といって、通常、10万円以上のパソコン、家電などの備品については、その耐用年数に応じ、一定額ずつ経費化していくことになります。

しかし、個人事業主や中小企業が青色申告を選択した場合、特典として、「少額減価償却資産(30万円未満)の一括償却」が可能となります。つまり、30万円未満の備品であれば、一括で経費にできる(年度内の合計額300万円まで)。年末になってからでも、節税対策を打つことができるというわけです。

とはいえ、”節税”という響きだけにつられるべからず。

「いずれパソコンを新調しようと思っていたから、この際、買い換えよう」

ということならいいと思います。

しかし、”節税ありき”でいらないモノを買うのは本末転倒。ムダなモノを買い、事業の運転資金を減らすことのほうが問題です。

加えて、ローンを組んだりする際にも、「所得をしっかりと得て、納税しているか」が問われます。後ろ盾のない個人事業主にとって、所得はいわば信用力の証でもあるわけです。

税金というと、「なるべく払いたくない」と考える人が多いようですが、”節税ありき”はリスク大。”良薬”も過ぎれば”劇薬”になりかねないのと同様、行き過ぎた節税は、事業にもマイナスに働きかねないのです。