かめはめ波を撃つを現実にした「HADO」は、テクノスポーツという新しい扉を開く - meleap CCO 本木卓磨氏インタビュー
Yahoo! JAPANニュースによれば、2019年7月には16歳の青年が「フォートナイト」というゲーム大会で優勝して賞金300万ドル(約3.3億円)を獲得してたちまち話題となった。
すでにesportsの競技人口は、全世界で1億人以上、市場規模は1,200億円を超えており、大会で生活費を稼ぐプロの選手もいる。
「HADO」は、そんなesportsとは異なるジャンルの新スポーツとして、今、注目を集めている。
今回、HADOの生みの親である株式会社meleap CCO 本木卓磨氏にインタビューした。
■「かめはめ波を実現したい」との思いから開発へ
HADOとは、テクノスポーツと呼ばれる新しいジャンルのスポーツだ。
HADOを簡単に言い表すと、ARを利用した「無限に球を打てるドッチボール」ともいえる。
プレイヤーはドラゴンボールのかめはめ波のようなエナジーボールを撃ったり、シールドでエナジーボールを防御したりできる。
ゲームは3対3の対戦型で行われる。
チーム内でオフェンスやディフェンスを分担して闘うなど、戦略的な要素と面白さもある。
昨年末には世界選手権「HADO WORLD CUP」も開催され、世界9カ国から選抜された16チームが賞金総額300万円を懸けて白熱したバトルを繰り広げている。
HADOの生みの親はmeleap CCO 本木卓磨氏(38歳)。
WEBデザイナーやソーシャルゲームのディレクターなどを経て、2014年10月より起業間もない株式会社meleapに取締役として参画した。
HADOシリーズのディレクターとして「HADO PvP」「HADO MONSTER BATTLE」「HADO SHOOT!」「HADO KART」、そのほか有名IPとのコラボ案件など、ほとんどすべてのコンテンツの企画とディレクション、一部のデザイン、開発を行ってきた。
現在はテクノスポーツ「HADO」でスポーツビジネスを成功させるべく、マーケティング部門の責任者として競技人口拡大のためのイベントや大会運営など様々な施策を実施している。

株式会社meleapのCCO 本木卓磨氏。
HADO誕生の経緯とは、どのようなことだったのか?
本木卓磨氏
「アニメやゲームなど、ファンタジーなものを現実で実現させたいと考えているなかで、かめはめ波ならば今のAR技術を使えば実現できるのではないかと思いスタートしました。
最初はARを使って現実世界でエネルギー弾を撃ちモンスターと戦うようなゲームを作ろうと考えて、『KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)』というアクセラレータープログラムに参加しました。『KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)』は、3カ月間でプロダクトを作って発表するというものです。
そのプログラムを通して、プロトタイプをつくり実際にプレイしてみたのですが、体感としてはゲームというよりはスポーツだなと気付き、その時からゲーム的なアプローチではなくスポーツとして発展させていくことを決めました。
『KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)』の発表会が2015年1月なので、そこでテクノスポーツHADOが初めて発表されたかたちになります。
なので、開発の序盤からスポーツとして発展させようという考えで動いていましたね。」
―HADOの開発では、どのようなところが大変だったのか?
本木卓磨氏
「プロジェクトの立ち上げ当初に大変だったことというと、あえて技術的に難易度の高い事にチャレンジしてしまった点です。
ARの表示のさせ方は色々とありますが、当時は画像解析という難易度が高く、まだ一般的ではない方法を選択して開発をしていました。
2015年当時は、AppleやGoogleのARフレームワークもなく、AR技術の知見が乏しい我々が、その技術の開発から始めるというのは非常に難易度が高い事でした。
最終的に技術の安定性や、実装のしやすさから、一番シンプルなマーカーを使ったAR技術を利用することになりました。」

ヘッドマウントディスプレイは、ディスプレイ部にiPhoneを内蔵し、頭部に固定する。
―かめはめ波を実現するなら、VRという選択肢もあったはずだが、
VRでなく、ARを採用した理由はどこにあるのだろうか?
本木卓磨氏
「ARにした理由はいくつかあります。
ひとつは、やはり自分が現実世界でかめはめ波を撃ちたいというのがあります。
VRの場合、プレイヤーはゲームの世界に行ってキャラクターになりきって、プレイします。
でも、ARはそうではなくて、現実世界で自分自身が主人公となってプレイすることができます。それがARにした一番の理由です。
もうひとつの理由ですが、VRを使ったゲームはすでにたくさん出ていました。
当時3人しかいない小さな会社でしたので、VRで戦っても勝ち目はないと思い、ARにしたというのもあります。
VRは世界の全部を作り上げる必要があります。背景やキャラクターをすべて自分で作りあげなければいけないので、かなり大変です。
ARだと、VRほど制作するものは多くはないんです。現実世界が舞台なので背景をつくる必要はありません。弾を撃つだけならかめはめ波の弾と撃つ仕組みさえあれば作れます。
金銭面や工数面でみてもARのほうが僕らのフェーズには合っていました。」

ブルーの背景が巨大なマーカーになっている。
―HADOでは、プレイヤーが素早く動けるのはなぜなのか?
本木卓磨氏
「一番の理由は、頭に装着しているヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)の違いです。
VR用のHMDはゲーム世界に集中させるために画面以外の部分は真っ暗です。
この状態だと、プレイヤーは周辺視野が見えないので、怖くて動き回ることができません。
一方、HADOのHMDは、両サイドと下部がくり抜かれていて周辺視野を取り入れる事ができるようになっています。
そのため、他のプレイヤーの場所がわかったり、障害物が近づいているのかがわかるので、VRゲームより大きく、素早く動く事が可能になります。
HADO – AR×Sports
■HADOは人の本能を刺激する
HADOが最初に導入された当時のことを聞いてみた。
本木卓磨氏
「最初に開発したのは、「HADO MONSTER BATTLE」というモンスターと闘うコンテンツでした。
ムゲンラボのときからスポーツとして対人戦のコンテンツをやっていこうと決めていたんですけど、日本人にとっていきなり知らない人と対戦するというのは抵抗があると思っていました。
最初の納入先として対人戦は受け入れられにくいかなと思ったので、モンスターがいて、味方がマルチプレイヤーで協力して倒すというコンテンツを開発しました。
初のクライアントがハウステンボスさんでした。
施設内の目玉アトラクションの一つとして作らせてもらいました。」
ハウステンボスでの納品時は、
現地で、2カ月の間、寮の一室を借りて泊まり込みで設営を行ったという。
かなり大変な経験ではあったが、今ではよい思い出になったそうだ。
当時のシステムは、現在でも使用されている。
HADO MONSTER BATTLE 「HYPER GOLEM」
―HADOが現在のように3対3の対戦型になった理由とは?
本木卓磨氏
「最初はお互いの陣地にクリスタルを置いて、それを先に壊したほうが勝ちというルールで考えていました。
相手のクリスタルを壊すか、自分のクリスタルを守るか、その攻防を楽しむようなタワーディフェンス型の競技にしようとしたのです。
ところが、プロトタイプをいろんな人に試してもらったところ、誰もクリスタルを狙おうとしないとしないで、人ばかりを狙っていたんです。
目の前のクリスタルを狙うんだよといくら言っても、人同士で撃ち合ってキャッキャッキャッしていたんです。
その様子を見て、動物としての狩猟本能のようなものを見た気がしました。
そこで人が本能的にやってしまうことをゴールにしようと思って、人に当てて点数をとるというルールに変更しました。」
HADOの世界は、ARの世界。
いくら相手にエナジーボールを当てても、相手の痛みや苦痛にならない。
それをプレイヤーは、瞬時に理解し、安心し、本能的に娯楽性の高いエナジーボールを相手に向かって放つという行動を取るようだ。
そういう意味では、HADOは人間の本能を刺激するゲームといえるのかもしれない。
―HADOには、バージョンアップはあるのだろうか。
本木卓磨氏
「すぐには実現が難しいところでありますが、もっと人間の身体をインプットとして利用したいと考えています。
今は手を振ったかどうかの判定しかしていないのですが、本当にやりたいのは、
・手をはやく動かせば、弾がはやく飛ぶ
・手の握りを変えれば、カーブの弾を投げられる
のように、もっと人間の身体の動きをゲーム内で反映できるようにしていきたいですね。
もっと先の未来だと、新しい世界の物理法則のルールを作りたいというのがあります。
たとえば、ARの世界だけなら重力を変えることができますし、摩擦係数も変えられます。新しい物理法則の世界でスポーツをやると、全然違う発見があると思うんです。」
HADOでは、開発者が用意した世界の中で、開発者が用意した空間で体験することで、プレイヤーが新しい遊び方を発見していく可能性がありそうだ。
―HADOの今後の展開について聞いてみた。
本木卓磨氏
「まずはしっかりと競技人口を増やしていきたいです。
現在は年に2回日本選手権、年末に世界大会を開催していますが、規模をより大きくしていき、いずれはプロリーグを展開していきたいと考えています。
いきなり野球やサッカーのような規模にはならないですが、まずは競技者を作って、その中からスター選手を排出し、そのスター選手を応援するサポーターを増やしていきます。
しっかりと観客を集められるようになれば、多くのスポンサーや放映権もついてくるので、スポーツビジネスの好循環をまわせるようになっていきます。
まずは小さいサイクルからですが、しっかりと成長させていき、大きなビジネスにしていきたいです。
HADOをはじめとしたテクノスポーツというのは今後の未来で絶対に出てくるものだと考えています。
普及するのは間違いないですけれども、その普及が100年後なのか50年後なのか10年後なのか、どれくらい短くできるかに挑戦していきます。」
本木卓磨氏によれば、スポーツの歴史においてHADOのようなテクノスポーツは生まれるべくして生まれたという。
歴史をたどってみると、野球やサッカー、テニスはアナログの道具を使ったスポーツだ。
その後、モーターが生み出されてモータースポーツという新しいスポーツが登場した。
それと同じように今は、インターネット、センサーなどの新たなテクノロジーが生まれたことで、新しい技術で実現されるスポーツは必ず誕生する。
HADOも、その一つということなのだろう。
我々はHADOというARゲームで、テクノスポーツという新しいスポーツの幕開けを目のあたりにしているのかもしれない。
・16歳が優勝賞金3.3億円獲得するeスポーツ、「プロになりたい」子に保護者は何を言うべきか
・HADO体験会
・HADOアカデミー
ITライフハック 関口哲司
