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「ドーン」を大事にしてください!

おはコロ!(※おはようコロナの意)。世界中であらゆるものが延期・中止となる春。日本ではせっかくの3連休だというのに、イベントのひとつもありません。大阪と兵庫では往来を禁止するとさえ言います。しかし、日本には大相撲がある。あらゆるスポーツが尻込みするなかでも大相撲は健在です。

だって相撲取りにはウイルスは見えません(※ていうか、誰も見える人いないですよね?)。見えないものはいないのも同然ですし、よしんば何かいたとしても四股さえ踏んでいれば大丈夫(※邪悪なものを地中に押し込めるから)。遠い国では呪術でコロナと戦っているそうですが、日本にそういう人がいたらダメでしょうか?江戸時代マインドで生きていてはダメでしょうか。ダメではないのですから、いいのです。

もちろん大相撲とて科学を利用する知恵はあります。何と、場所中に高熱を出した千代丸は、あの一般人は門前払いされると評判のPCR検査を受けたというではありませんか。僕は正直、大相撲がPCR検査を受けるとは思っていませんでした。「ひとりでも感染したら春場所中止」と宣言したとき、「なるほど全員隠ぺいするんですね!」「検査を受けなければ誰も陽性にはならない」「発病までに十五日間くらい過ぎるだろ」と受け止めたのです。いくら九分九厘「蜂窩織炎だろ」と思われる病状であったとしても、確定診断を受けるとは意外だったのです。

逆に言えば、「ここらで一回PCR検査を受けておいて、大相撲は検査拒否で隠ぺいしてる説を払拭しよう」という思惑があったのかもしれませんが、それならなおのこと驚きです。まさかそんな情報操作みたいな知恵までまわるだなんて、予想外オブ予想外ですからね。いやー、相撲も意外にやるもんですね!IQ100ぐらいのキレ者が裏側にいそうですね!

↓PCR検査でコロナ陰性と判明した千代丸は、蜂窩織炎との診断で何故かみんなから「よかった」と祝福されました!

千代丸が蜂窩織炎だったのは「よいこと」扱いです!

「コロナでさえなければいい」という日本そして大相撲の本音が出ました!

コロナ以外なら祝福です!

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千代丸の蜂窩織炎以外にも、今場所はたくさんのいいことが起きています。やらなければ何もいいことがなかった場所ですが、やったことでいいことが起きています。平幕・碧山の好調ぶりは場所を大いに盛り上げるものです。これはフロックではなく、体調万全なら三役クラスのチカラがある力士ですから、最後まで優勝争いを演じるでしょう。故郷にもいい報せを届けてほしいもの。「故郷から誰も来れない説」「錦を飾りに行けない説」「それどころじゃない説」とかもあるかもしれませんが…。

そして関脇・朝乃山は十二日目に勝ち星を2ケタに乗せ、大関に王手をかけました。杓子定規の内規なら「三場所33勝」まであと2勝必要というところですが、僕は今回に関しては三場所32勝…すなわち今場所11勝で文句なしと踏んでおります。大関不在で「横綱大関」まで復活させた試練の場所です。すでに優勝経験もある朝乃山に「杓子定規」は必要ありません。なんなら、ここから全部負けても大関にあげたっていいくらいです。

ただまぁ、そこは世間にたくさんいる「大相撲自体は嫌いなのに文句は言いたい人」対策として、あとひとつは勝って締めくくるのがよいでしょう。来場所もまだ5月ということで、完コロ鎮(※完全コロナ鎮圧)はしていないかもしれませんが、新大関という嬉しい話題で来場所を迎えたいものです。「貴」と「朝」、大相撲の忌み嫌われし一族が大関に並び立つとは、壮観じゃありませんか。楽しみです。

↓編成部から「また下のほうで大勝ちかよ…」と悲鳴が上がる碧山の快進撃!

誰と当てれば上位陣同士の対戦を崩さずに優勝を止められるのか、編成が悩んでいます!

そして、こういうときにまったく頼りにならない御嶽海!

連続平幕優勝、あると思います!



しかし、その一方でよくない傾向も見られます。

無観客相撲で「音」が注目を集めている場所だと言うのに、最大の魅力である「ドーン」が薄れているのです。ボクシングともレスリングとも柔道とも違う、大相撲最大の魅力とは、規格外のデブとデブがぶつかり合う「ドーン」にほかなりません。ほかの競技なら若干のポイントが入るかどうかという「場外」がイコール「勝利」になるという特殊ルールが助長した「太れば太るほど有利だから太ろう」という異端の人体改造。その無差別激突。デブデブドーンは世界に誇る大相撲の文化です。

ところが、ちょいちょいそれをないがしろにしようとする輩がいます。特に今場所は無観客だけにそれが目立ちます。その渦中にあるのが炎鵬と白鵬、このふたりの相撲です。炎鵬はまだいいです。炎鵬は小兵力士であり、相手とまともに組んだら勝負にならないわけですから、つかまらないように工夫もするでしょう。むしろ対戦相手こそがデブの誇りを持って、「チョコマカできるものならやってみろ!ドーン!」と行くべきなのですが、これがだんだん対戦相手のほうも行かなくなってきています。

思ったより強い炎鵬への対策なのでしょうが、炎鵬がつかまらないようにするのと同時に、対戦相手も「つかまえない」ようにし始めているのです。自分のチカラを利用されたり、ヘンなところに取りつかれないように、立ち合いでドーンと行かずすっと距離を取る「遠距離相撲」。そして、来いよ来いよと誘って、まともに組んだところから潰しにかかる。これも勝負の一部ですが、いかがなものかと思います。デブがドーンとくるのをヒラリとかわすからこそ炎鵬の相撲も活きるのです。牛と闘牛士がゆっくりと距離を取って睨み合うのは感心しません。

↓三日目の豊山は「立ち合いドーンと行かず」「手四つで距離を取り」「疲れるまで待つ」という体力勝負!

↓十二日目の北勝富士は「立ち合いドーンと行かず」「炎鵬を起こして」「決め倒す」という完璧な攻略!

いやー、これを全員に狙われると炎鵬は厳しい!

ドーンと行きなさいよ、ドーンと!

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そして白鵬。コチラは長年の自業自得ではありますが、だんだんと対戦相手も「横綱への敬意」から生まれるドーンをやらなくなってきました。横綱という最強の存在への敬意があればこそ、自分の全力をぶつけてみるという価値も生まれ、「変化などをしない」という不文律もあるというもの。横綱は強いから「胸を出し」、横綱が強いから「胸を借りる」のです。

しかし、白鵬は長年「胸を出し」てはきませんでした。一方的に自分が有利に組むことを好み、張り差し・かち上げで「胸を借りにドーンときた」相手に打撃を加えてきました。それはもちろん戦術ではありますが、横綱の品格としては物足りない部分です。柔道で言えば「組み手争い」に終始するような戦い方であり、「相手の全力を受け止めて、なお上回る」横綱相撲とは遠い内容でした。

その結果、「まともにいかなくてエエんちゃう?」というムードが広まっているのではなかろうかと僕は睨んでいます。それが如実に現れたのが十二日目の正代との一番。正代は取組後に「今日できる一番の立ち合いをしたいと思った」と語りましたが、それはドーンと胸を借りるのではなく、白鵬の張り差し・かち上げを理解して、まともに付き合わない立ち合いでした。

一発は張らせてやる。

ただ、まわしはとらせない。

本来なら自身も右を差していきたいところを、しっかりと脇を締め、白鵬の張り差しを単発の張り手にさせました。何故か白鵬は張り手にこだわり、つづけざまにパンパンと平手打ちを繰り出す雑な相撲に。張り手連発でも押し切れず、はたいて勝とうとすれば逆に正代にもぐられ、最後は一方的に寄り切られました。一発目、バチーンと気持ちよく張ろうと思ったのに、間合いは遠くて手応えがないわ、正代は顔を逸らして威力を殺しているわで、カチーンときたのかなという一番でした。

↓横綱がドーンとくる格下の力士を受け止めてやる器量を見せないから、相手もドーンと行かなくなる…!

「ドーン」が見たいのです!

「パーン」じゃないです!

↓前日の阿武咲には「白鵬のかち上げを持ち上げる」というパターンでやられる一幕も!

白鵬がかち上げにくると読んで、その腕をさらに持ち上げて完全に上体を起こしてみせた阿武咲!

そして、慌ただしい展開になると白鵬の身体がついてきません!

とにかく、世の中がこんな状況であるからこそドーンと力勝負を見せてほしいもの。相手のチカラを引き出し、自分のチカラを高めてそれを上回る。そういう勝負を演じてこそ、重苦しい世の中にも頑張る気持ちや勇気がわいてくるのではないかと僕は思います。相撲の魅力はデブデブドーン。いっぱい食べて、いっぱい寝て、ぶくぶく太って、ドーンといっちゃってくださいね!

「パーン」好きならボクシングを見ます!パーンは王道ではありません!