剥かれても涙は出なかった?(写真/YONHAPNEWS/AFLO)

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 日本の台風一過直後、韓国政界に突風が吹いた。

「検察改革を本格化させる役割はここまで。家族のことで大統領や政府に負担をかけてはならない。辞任してこそ、検察改革の完成が可能となる時が来た」

 10月14日、韓国の曹国(チョ・グク)・法相はこう声明を発表し、わずか就任35日で辞任した。文在寅政権の公約である「検察改革」を担う中心人物の辞任は、政権に大きなダメージを与えた。

 剥いても剥いても醜聞が出てくることから“タマネギ男”と呼ばれた曹氏はまさに疑惑のデパートだった。娘の大学不正入学や、私募ファンドをめぐる疑惑等が検察に捜査されたばかりか、そのキャリアを巡っても年齢詐称疑惑や論文盗用疑惑などが噴出した。

 それでも文大統領は「疑惑だけで任命しなければ悪い先例となる」と法相任命を強行。しかし、検察改革を担う法相が、検察の捜査対象となっている矛盾には強い反発があった。

 追い込まれた“タマネギ男”にとって起死回生の一手となるはずだったのが、曹氏疑惑の捜査を指揮した尹錫悦(ユン・ソクヨル)検事総長のスキャンダル。10月11日、週刊誌「ハンギョレ21」が、尹氏が建設会社から接待を受けていたと大々的に報じたのだ。

「あまりにもタイミングのいい報道で、政権サイドのリークではないかと囁かれました。ところが尹氏、建設会社ともに疑惑を否定、世間からも“フェイクニュース”の烙印を押され早々に収束してしまった」(ソウル特派員)

 スキャンダル合戦に持ち込むことに失敗した文政権には、曹氏辞任しか選択肢が残されていなかった。韓国の政治評論家・崔秉黙(チェ・ブンムク)氏が語る。

「曹氏はいずれ検察に起訴されることは確実。そうなれば“公正と正義”を標榜していた文政権にとっては大きな痛手です。来年の総選挙で与党が敗北することも十分にあり得ます」

 辞任の20分後には古巣・ソウル大へ復職を申請したことも判明し、さらなる顰蹙を買った曹氏。タマネギ男騒動は文政権の終わりの始まりとなりそうだ。

●取材・文/赤石晋一郎(ジャーナリスト)

※週刊ポスト2019年11月1日号