2018年5月24日、爆破に先立ち外国記者団に公開された北朝鮮核実験場の3番坑道(韓国写真共同取材団)

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北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)吉州(キルチュ)郡豊渓里(プンゲリ)の核実験場では、2018年5月に廃棄されるまで、6回の核実験が繰り返されてきた。

周辺地域では、核実験の後に奇形を持った赤ちゃんが生まれたり、「おばけ病」と呼ばれる原因不明の病気が流行したりしているとの話があり、この地域出身の脱北者は、頭痛、視力低下などの体調不良を訴えてきた。

(参考記事:「肛門のない赤ちゃんが生まれた」北朝鮮核開発、被ばく労働の恐怖

韓国統一省は、豊渓里周辺出身の脱北者を対象に累積被ばく線量の調査を行っていたが、その結果を発表していなかったと、朝鮮日報が2日付で報じた。

野党・正しい未来党のチョン・ビョングク議員の事務所は、統一省から提出された資料に基づいて、昨年10人を対象に行なった検査の結果、5人から7個から59個の遺伝子が変異していることを発見し、279ミリシーベルトから1386ミリシーベルトの放射線に被ばくした痕跡が発見されたと明らかにした。

中でも、豊渓里から23キロ離れた吉州邑に住んでいた48歳の女性の累積被曝ばく量は1386ミリシーベルトに達していた。この女性が脱北するまでに3回の核実験が行われている。統一省はこれらの結果を1年以上に渡って発表していなかった。また、国会に提出した資料にも非公開としていた。

統一省関係者は、前々回の2017年に検査を行ったときに、「放射線被ばくと核実験との因果関係はない」との結論に達し、今回も同様の結果に達したので、発表しなかったと説明している。

日本と韓国の年間線量の限度は、一般人が1ミリシーベルト以下、放射線を扱う仕事に従事している人で50ミリシーベルト以下と定められている。

専門家は、繰り返された核実験により土壌と地下水が汚染されたことによる被爆と見ている。

朝鮮日報は、こうした事実を公表してこなかった韓国政府の姿勢について、「日本と過去史・経済対立を繰り広げている韓国政府が、11年に原発事故が起きた福島県地方の放射能汚染問題を繰り返し提起する態度とは全く違う」と指摘。また、「こんな深刻な結果を、韓国政府があえて過小評価しているかのような印象を拭い難い」「北朝鮮をかばっているのではないか」とする野党関係者のコメントを伝えた。