危険回避ができないことも! AT車ユーザーに多い遠目のドライビングポジションがもつ3つの問題
イザというときのペダルの踏み込みが甘くなる
皆さんはドライビングポジション、とくに座面の前後の位置をどのような基準で決めているのだろうか?
MT車なら、クラッチペダルを奥まで踏んだ状態で、膝が少し曲がったぐらいの位置がベストとされていて、それを実践しているユーザーも多いだろう。
ところが、クラッチペダルがないAT車の場合、ペダルを奥まで踏むことを前提にしていないポジションのドライバーの方が多いのではないだろうか。
とくに最近のAT車の場合、燃費のためにエンジンを高回転まで回さず、低回転でポンポンシフトアップするような設定になっているクルマが多いので、通常は加速時でもアクセルをあまり深く踏むようなシーンがない。
同様にブレーキも普段は浅い踏み込みでも制動力は十分足りているので、運転中に膝が伸び気味になる、ペダルからの距離が遠目のポジションになっている人が多いようだ。
筆者は仕事柄、他人のクルマに乗らせてもらう機会も多いが、そのオーナーが普段座っているポジションに座らせてもらうと、身長が同じぐらいの人、あるいは低い人でも、1ノッチから2ノッチは遠いと感じることがほとんどだ。
MT車の場合、そうしたことが気になるケースは少ないのだが、AT車の場合、大半が遠いポジションになっている……。
こうした遠目のポジションは、3つの点で問題がある。
1)フルブレーキができない!
ペダルを浅くしか踏めないようなポジションでは、いざというときブレーキを最大限使いきれない可能性がある。
クラッチペダルのないAT車であっても、ドライビングポジションの基本は変わらない。
まずはシートに深く腰掛けて、(エンジンをかけた状態で)ブレーキペダルを一番奥まで踏んで、そのときに膝が軽く曲がって、膝裏に少し余裕がある位置にシート位置を調整する。
タイヤのグリップ力やブレーキ自体に余力があっても、ブレーキペダルを踏みきらない限り、最大減速、最短距離停止はできないので、ブレーキペダルを余裕も持って踏み切れるポジションに座ることは、安全運転の上でも何より大切。
無意識に渋滞の要因となることも
2)加速が鈍い
ポジションが遠目で、普段からアクセルをちょこんとしか踏まない人は、必然的に加速が鈍い。高速道路の合流でも、工事などの車線規制が終わったところでも、渋滞が発生しやすい坂道に差しかかったときでも、サグ部でも、もう少しアクセルを踏み足すだけでスムースな流れをキープできるのに、なぜかダラダラとしか加速できない人がいる。
おそらく彼らはポジションが遠いために、アクセルを踏み足しづらくなっていて、それが加速の鈍さにも影響しているはずだ。
3)腰痛や疲労の原因にもなる
ポジションを遠くにとって、足の先っぽ、つま先部分だけでペダルを操作しようとすると、運転しているうちにお尻が少しずつ前にずれていき、姿勢が崩れてくる。
とくに腰背部と背もたれの間に隙間が空いてくると、腰にストレスがかかるので、腰痛や疲労の原因になりやすい。
腰は背もたれに密着させて、肘や膝が伸びきることなく、ハンドル操作、ペダル操作ができるポジションの方が、無駄な力も抜けて疲れにくくなる。
身近なAT車ユーザーにも遠間のポジションを好む人がいたので、「もう1ノッチか2ノッチ、座面を前に出さないといざというとき危ないよ」とアドバイスしたことも一度や二度ではないのだが、彼らは「いや〜、窮屈なポジションは嫌なんで……」と言い訳しながら頭を掻いていた。
ひょっとすると愛車の車内を、自宅のリビングと同一視しているのかもしれないが、手足を伸ばしてリラックスするのは、クルマを降りてからにしてもらって、運転席でハンドルを握っているときは、ハンドルやペダルを最大限、支障なく操作できるポジションを何より重視してもらいたい。
いまや乗用車の98%がAT車という時代なので、AT車ユーザーの人はもう一度ポジションを見直してもらって、(必要があれば)1ノッチでも2ノッチでも座面を前に出して、正しいポジションになるようにしよう。