自社流通や直接海外へ輸出できる場合は査定額が上がりやすい

 同一車種で、グレードやボディカラーなどの条件も等しいのに、売却する業者によって金額が変わることがある。また売却する時期、売却する地域によっても、金額が変わることも多い。

 そこで業者によって違いが生じる理由を買取店に尋ねると、「買い取ったあとの流通の仕方によって買取額が違ってくる。買い取ったあとに、そのまま自社の中古車販売店に並べて短期間で売れれば、コストを安く抑えられるから高額で買い取れる。しかし買い取ったあとにオークションに出品するシステムだと、そのコストを差し引かねばならない。在庫の期間が長い場合もコストを高める。また買い取る業者と車両の相性もある。たとえば国産の新車を売る販売会社の場合、輸入車の下取りには不慣れだ。そうなると好条件で買い取るのが難しくなる場合もある」という。

 車種によっては海外市場で人気が高く、活発に輸出される中古車もある。このような車種はオークションでも高値で取り引きされるが、海外の販路を持っている業者なら、さらに有利な条件で買い取れる。

 前述の買取店によると「トヨタ・ランドクルーザープラドなどは、海外の需要が高まっている時期なら、3年落ちの車両を新車価格の70〜75%で買い取れる(通常は40〜50%)。プラドなどは海外で人気が高いのに、新車の販売台数はあまり多くない。そのために国内の中古車価格と、買取価格が高騰しやすい。トヨタのディーラーでも高く買い取るが、輸出に慣れた買取業者のほうが良い条件を提示しやすい」という。

 ランドクルーザー、三菱パジェロ、スズキ・エスクードのようなSUVは、大幅な違いではないが、季節による価格変動もある。スキーやスノボに出かける前に購入するユーザーが少なくないからだ。

市場が欲しがるタイミングを見図るのも手

 たとえばパジェロの場合、1年を通じた中古車小売価格の推移を見ると、春から夏にかけて少し下がり、夏から秋は上下動を繰り返し、秋から冬にかけて値上がりする傾向が見られる。スキーシーズンの秋から冬は需要が高まり、価格も上昇するわけだ。買取店では「SUVの需要が増える前には、在庫を揃えたいから、積極的に買い取る」という。従って季節変動のある車種は、タイミングを見計らって売却する手もある。

 以上のように同じクルマでも、買い取る業者によってニーズが異なり、売却額にも差が生じる。新車の購入と一緒に売却するときは、一般的には新車ディーラーに下取りさせるのがトクだが(下取り車があると、値引きを増やす代わりに買取額を高めるなど融通を利かせやすい)、それでも複数の買取店に査定させると良いだろう。予想外の好条件が提示される可能性もあるからだ。

「ええっ! そんなに高い金額で買ってくれるの? 俺のクルマって、意外に価値が高かったんだ。ならば車検を取って、もっと乗り続けようかなぁ」。愛車への愛情が深まり、さらに楽しいカーライフが待っているに違いない。

 逆に「ええっ! 買取額がそんなに安いの!? 俺の愛車を軽く見るんじゃねぇっ。可衰想だから、車検を取ってもっと乗り続けてやるぜ」。これもまた愛車への愛情が深まり、さらに楽しいカーライフが待っている。売っても、売らなくても、クルマには楽しいドラマがありますね。